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東京二十三区清掃一部事務組合
による海外技術協力の実態


環境総合研究所
顧問 池田こみち
掲載月日:2015年6月19日
 独立系メディア E−wave


 環境総合研究所(ERI)では、これまで、JICAの研修やテンプル大学等の主催するアジア諸国の行政職員や大学研究者等を対象とした研修プロジェクトに関連し、日本の廃棄物政策や焼却処理の実態を環境リスク、経済リスク、市民参加の実態等の観点から講義し、焼却工場の視察などにも同行して情報交流を行ってきました。昨年もマレーシアからの視察団やバングラディッシュからの研修生との交流を行い、公式な視察では得られない日本が直面する廃棄物政策・廃棄物処理の課題などについて議論を行っています。

 そうしたなか、2015年2月マレーシアからの視察団(焼却炉建設に反対する市民グループ代表や野党系国会議員等)のメンバーからメールがあり、マレーシア政府と廃棄物政策や焼却処理について意見交換をする中で、環境総合研究所が関係している市民参加の松葉によるダイオキシン類調査のパンフレットを示して、焼却炉が集中する東京でのダイオキシン汚染の実態を示したところ、マレーシア政府の担当大臣が「東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)に確認したところ、『それは、信頼できない情報源のものである』と言われた。」として切り捨てたがどうしたものか、との連絡がありました。

 清掃一組は、平成23年度から国際協力事業団(JICA)の海外支援プロジェクトの委託を受け、マレーシアやインドネシアを頻繁に訪問し、行政レベル、市民レベルの交流事業を展開しています。

 ※JICAマレーシアの動き 2014年8月号
 http://www.jica.go.jp/malaysia/office/others/ku57pq00000th1yg-att/newsletter1408.pdf

 市民参加による松葉ダイオキシン類調査は、1999年から15年間にわたり継続し、その間に得られた学術的成果を国際ダイオキシン会議で報告し、また、市民運動としても大きな成果を上げてきた監視活動です。したがって「信頼できない情報源」というような表現は、ERIや参加している市民グループの名誉を大きく傷つけるものであるため、さっそく、マレーシア政府高官に対してそのような発言を行った根拠及び経緯についての情報開示を清掃一組に求めました。

 2015年3月12日に、問題の経緯を説明する文書とともに、関連する情報の開示を求めました。その後、4月に入り、新たに世田谷区役所から清掃一組の国際協力課清掃事業国際協力係長に着任された青山恵子氏から連絡があり、マレーシア関連のプロジェクトは平成23年度から始まっており膨大な情報量になるので、その中のどれを開示するかについて文書の一覧を作成するのでその中から必要な情報を選んで欲しい、との申し出がありました。

 そこで、4月10日、平成23年度〜26年度までの該当資料全145件のタイトル、内容を一覧にしたリストの確認のため、清掃一組に出向きました。そこで約2時間ほどかけて、開示を求める文書を選び出し、改めて、開示を要求しました。

 私が指定した文書の量は全部で29件、頁数は1174頁に及びました。これまでになく膨大な量の開示請求であるため、非開示部分の処理(黒塗り)に時間を要するとのことで、5月末まで開示を延期して欲しいとのことで、それを了承し、ようやく5月末に開示通知(準備が出来たので閲覧と開示のために来庁できる日程を調整したいという文書)が届きました。

 そして、昨日6月19日午後1時半に飯田橋にある清掃一組を訪問し、要求した29件約1200頁に及ぶ文書をひとつひとつチェックしました。通された20階の会議室には担当の青山係長以外に男性職員が4名同席していました。作業開始前に、非開示とした理由をまとめた文書を一枚渡され、簡単な説明を受けました。(「開示しない部分並びに開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する理由」(清掃一組文書のPDF)参照)

 手順は、まず、私が文書をチェックし、開示を求める部分を指摘し、その部分のコピーをとって、全開示文書頁数(コピー枚数)が固まったら閲覧費用、複写費用を支払ってコピーをもらって帰るというもので、全部を一括して開示してもらい、着払いなどの宅急便で送付してもらうことは出来ないシステムでした。

 そこで仕方なく、ひとつひとつクリップでとめられた文書を見ていくことにしましたが、びっくりしたことに、開示を求めた文書全体の約95%が黒塗りとなっていました。

 例1:講師依頼について(PDF)
 冒頭の5ページ
  
  
 

 例2:派遣に伴う実施について(PDF)
 冒頭の5ページ
  
  
 

 それでも、ひとつひとつ、この部分は何故黒塗りとなっているのか、どのような文書なのかを確認しながら作業を進め、1時半から3時までかかりました。結果として、開示を求めたのは当初指定した29件1200頁のうち、29件400頁ほどとなりました。ほとんどが黒塗りなので、意味も無いのですが、どのような部分がどのように黒塗りとなっているかについても貴重な情報であるという観点から敢えて開示を求めました。

 疑問なのは、すべてが税金で行われている事業であるにもかかわらず、清掃一組がJICAの調査委託を受けている立場であることから委託契約書の約款に記載のある第27条(秘密の保持)に抵触することと、同時に、清掃一組の独自の判断により非開示としたというのです。

 マレーシアのどこに調査に行ったのか、どこを訪問したのか、誰が行ったのかに始まり、調査終了の報告書などもすべて非開示。マレーシアからの研修生受入の際の講師を誰に依頼したかも非開示など、ほとんどすべてが非開示となっていました。非開示の指定には期限はなく、プロジェクトが終了しても担当者が変わっても非開示とのことでした。

 そもそも、清掃一組は特別区から排出される一般廃棄物の中間処理を行うことが主な仕事であって、廃棄物政策や焼却処理技術などを海外に普及するためのプロジェクトを委託業務として行うことは職務として適切なのかどうかという疑問もあります。

 草の根交流と称して、23区の一部の区民を恣意的に選んでマレーシアを訪問し地元の市民などとの交流を行っているようですが、参加する区民の選び方についても課題があります。また、関連事業の成果報告などはすべてJICAに対して行われており、区民や都民への報告はとても十分とは言えません。

 今後、開示を受けた情報を精査し、問題点をさらに明らかにしていきたいと思っています。また、当初の目的である「信頼できない情報源」という発言がなぜ出てきたのかについても解明を進めたいと思います。