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■はじめに 出典:池田こみち講演パワーポイントより 2月の第一日曜日、好天に恵まれた節分の午後、寄居町中央公民館に50名が参加して、市民参加による松葉ダイオキシン調査結果の報告会が開催された。 主催団体である生活クラブ生協熊谷支部の組合員とともに、彩の国資源循環工場の地元である寄居町や小川町の一般市民の方々も参加された。今回の報告会は、今までになく高い濃度が検出されていたことから関心が高かったと思われる。 市民参加による松葉ダイオキシン調査結果の報告会 2013.2.3 左が主催者の加藤さん、右は池田こみち 報告会では、最初に主催者からこれまでの活動の経過が報告され、その後約1時間半にわたって、筆者より調査結果についての報告を行った。
以下は参考 出典:マピオン 埼玉県環境整備センターの全体図 出典:埼玉県資料
■環境の悪化が顕著 同施設が本格稼働する前の2004年度から松葉をもちいた市民参加による環境監視活動が始まっており、今回の調査は8年目となる。これまでの調査結果より、各施設における受入廃棄物の量が年々増加していることが分かった。 講演する池田こみち 2013.2.3 また、施設ごとに受け入れている廃棄物の中でも廃プラスチックや汚泥などの量が増加していること、一般廃棄物焼却施設からの焼却灰の受入も大きく増加していることなどを背景に、本格稼働前と比べると著しく環境が変化し、ダイオキシン類の濃度が上昇していることが明らかとなった。 また、重金属類も敷地外と比べると高濃度となっている項目が多数見られた。特に松葉に含まれる水銀の濃度は高く、廃プラスチック類や汚泥のサーマルリサイクルや焼却処理、蛍光管リサイクル水銀回収プラントからの影響が危惧された。 敷地内と敷地外周辺地域と比べると敷地内は地形が窪地となっていることや煙突高が低いことなどから汚染が滞留し、環境基準の二倍を超える濃度となっていることが判明した。また、地形が複雑なことも影響し、周辺地域にもその影響が及んでいることも示唆された。 報告の詳細については、報告会の動画を参照していただきたい。 ◆池田こみち:埼玉県環境整備センター関連環境監視調査報告 http://www.ustream.tv/recorded/29001913 また、施設の概要と現状については、以下の動画及び報告を参照されたい。 ◆青山貞一・池田こみち:彩の国・資源循環工場現地視察 You Tube http://www.youtube.com/watch?v=eUb2ClQdUDk 彩の国 資源循環工場現地視察の動画を上映 ◆青山貞一:松葉ダイオキシン調査で環境基準超過:彩の国資源循環工場 http://www.eritokyo.jp/independent/aoyama-pine12004.html ■質疑応答と情報交換 報告会終了後に40分ほどの質疑応答の時間を設けたが、20名以上が参加し、熱心な質疑と議論が行われた。所沢市から参加された方も加わり、所沢での市民活動についての紹介や情報交流も行われた。 市民参加による松葉ダイオキシン調査結果の報告会 2013.2.3 全国でも有数の規模を誇る「彩の国資源循環工場」は秩父の玄関口でもある埼玉県寄居町に立地している。寄居町は埼玉県の北西部、都心から70km圏に位置し、荒川が秩父の山間から関東平野に流れ出す扇状地に発達した町であり、山地、丘陵、台地、低地と多様な地形に恵まれている。 ちょうど寄居町の中心(寄居駅や町役場)から彩の国資源循環工場までは、直線距離で4kmに満たない。しかし、多くの町民はその存在に気がつかないばかりか、ましてや高濃度の有害物質に汚染されていることなど知るよしもない。施設全体が寄居町と小川町との境に広がる里山に囲まれ外からはまったくプラントや煙突も見えないからである。 熱心に質疑に聞き入る参加者 しかし、埋立容量 184万立米、民間企業8社による廃棄物のリサイクル及び中間処理の受入可能量は約2000トン/日に及ぶことから、埼玉県内ばかりではなく、東京都や周辺地域からも頻繁に大型トラックが出入りし、周辺道路ではかなり大型車の混入率が高くなっている。県外からの受入量が概ね50%にも達している。 そればかりか、隣接する敷地に第二期工事が既に着工しておりさらに廃棄物処理施設が拡大することとなっている。 この地に廃棄物処理施設が集中したのは昭和48年埼玉県廃棄物処理基本計画で最終処分場の確保を決定し、同50年年10月に寄居町に用地を選定したことに端を発している。 彩の国資源循環工場はPFIの手法を活用し平成17年に竣工、翌平成18年度に本格稼働となっている。それから6年が経過し、施設内の焼却系廃棄物中間処理処理施設三社の受入廃棄物量は順調に増加している。 事業実施前に行われた埼玉県環境影響評価条例に基づくアセスメントでは特に環境影響が指摘されることはなかったようだが、実際、本格稼動から6年が経過した現在、廃棄物の最終処分場と中間処理施設の焼却処理施設や水銀回収施設などから排出される有害化学物質は累積的な影響を及ぼし始めている。 周辺には住宅や農地、歴史的遺産を含む公園なども多いことから、こうした大規模廃棄物処理施設からの累積的影響についてどのように監視し規制していくことが可能なのか、埼玉県の真摯な対応が望まれる。一度こうした施設が作られてしまうと膨張の一途をたどり、周辺住民の不安や危惧はかき消されたまま放置されているのが実態である。 市民参加による科学的な調査によって明らかになったことをどこまで事業者や埼玉県が受け止めることができるのかにかかっている。 ※ 本報告内容は、2012年度の環境行政改革フォーラム論文集に投稿予定 |