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容器包装リサイクル法(以後、容リ法と略す)は平成7年に成立・交付され、段階を追って施行されて、平成12年4月に完全施行となった。その後、さらに改正され、平成18年6月に改正容リ法が交付されて今年で5年目の改正の時期を迎えている。 <容リ法施行状況> 平成 7年 6月 :成立・公布 平成 7年12月 :第1段階施行(基本方針、再商品化計画、指定法人関係) 平成 8年 6月 :第2段階施行(分別収集計画関係) 平成 9年 4月 :本格施行(再商品化事業開始) 対象品目:ガラスびん(無色、茶色、その他色)及びペットボトル リサイクル義務を負う企業:大企業 平成12年 4月 :完全施行 対象品目:上記に加え紙製容器包装及びプラスチック製容器包装 リサイクル義務を負う企業:上記に加え中小企業 (ただし、小規模企業は対象から除外) 平成16年 7月〜平成18年 1月:審議会等における見直し議論 平成18年 6月 :改正容リ法成立・公布 改正容リ法施行(3段階) 平成18年12月 :施行(定義の変更、排出の抑制等) 平成19年 4月 :施行(指定容器包装利用事業者、容器包装多量事業者等) 平成20年 4月 :施行(市町村への資金拠出金、PET区分の変更等) 出典:公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会 Webサイトより 生協をはじめ消費者団体では、平成18年の容リ法改正があまりにも内容の乏しいものであったことを踏まえ、より抜本的な制度の改正を求めるため、学習会などを開催している。今回は関東を守備エリアとする生活協同組合パルシステム東京による組合員向け学習会が開催され、講師を務めた。2012年11月には東京都消費者月間の学習会として同様の講義を行っている。しかし、消費者や一般市民の関心は低く、署名活動や学習会への参加も盛り上がりを欠いているのが実態である。 図1 パワーポイント表紙 生協パルシステム東京で講演中の池田こみち 2013-2-12 撮影:生協パルシステム東京 ■容リ法の成果と課題−埋立は減ったが焼却は増加 そもそもの容リ法制定の最大の目的は逼迫する最終処分場の延命である。プラスチック容器包装類の分別回収を推進したことによりそれについては、一定の成果をもたらしたことは間違いない。平成7年当時、廃棄物全体の中で容器包装廃棄物は容積比で6割を占めており、その多くがプラスチック容器包装廃棄物であったからである。 しかし、施行から15年余が経過した現在でも、容器包装廃棄物は容積比で10%、重量比で7%程度しか減量しておらず、埋立は減ったものの、一方でその多くは焼却処理に移行しただけであることが明らかとなっている。まさに、大量生産・大量消費・大量廃棄が大量リサイクルに変わっただけで本質的な問題解決に至っていない。 実際、資源化量や資源化率の推移を見てもその伸びは極めて小さいどころか、資源化量は逆に減少傾向にある。 図2 容リ法施行後のごみ質の変化 図3 資源化量、資源化率の推移 ■法制度上の問題点 −費用負担の増大と正直者が馬鹿を見る不公平な制度 容リ法が施行された結果、資源化される容器包装類は増えたが、一方で自治体の収集・分別・保管のための費用負担は増大の一途をたどっている。また、法律上、すべての市町村に分別収集義務が課されているわけではなく、分別収集を実施するかどうかは、市町村の意思次第となっている。 実際、都内では焼却炉を持たない文京区はプラ容器類の分別を行わず、焼却処理としているが、文京区のごみを引き受けている江東区では細かく分別回収を行っており、区民の不公平感が募っている。文京区は分別すれば回収、保管の費用がかさみ導入はできないと明言している。 また、容リ法の制度をすり抜けてペットボトルが中国に大量輸出されるという事態も発生している。 容リ法の改正を求める市民グループは次のように課題を整理している。生協などリターナブル容器を導入している事業者の負担は大きく、そこでも不公平感は募っている。 @大きすぎる自治体の負担−費用がかかるのは収集・分別・保管費用 Aごみの発生抑制につながらず、大量生産・大量消費・大量リサイクルになっているだけ。 B使い捨て製品の回収はごみとして税金で負担される Cリターナブル容器が普及しにくい(リサイクル容器なら自治体が回収するが、 リターナブルは事業者負担) D分別の仕方がむずかしく理解しにくい(素材が同じでも容器包装の指定がない とだめ) E小型ペットボトルの自主規制が解除され、小型ペットボトルが急増はごみの急増につながった F国は、再商品化価格を製品価格に反映させるための広報を行っていないため、事業者の不満が募っている。 G再商品化義務の不履行(フリーライダー)問題 などなど 出典:容器包装リサイクル法の改正を求めるごみ研究会 Webサイトより ■容リ法は循環型社会構築のための制度だが−環境負荷を減らしているか 容リ法は循環型社会を形成するために必要な制度としていち早く制定され、その後、様々なリサイクル関連法制度(家電、食品、自動車など)が整備された。しかし、これらリサイクル法制度の最も重要な目的のひとつは、環境への負荷を減らすことであるはずなのにそれがないがしろにされている。リサイクルは進んでも結局焼却されるごみが増えたり質が変わることによって、焼却炉周辺はもとより、地域全体の大気の状態を悪化させていることを忘れてはならない。 東京23区の場合、溶融スラグを資源としているが、それを除くと資源化量は増えるどころか減少傾向を示している。 図4 東京23区の場合 発生源の構成 講演中の筆者 2013-2-12 撮影:生協パルシステム東京 ■焼却を減らすための政策としての位置づけを明確に 容リ法やその他のリサイクル関連法制度は資源の無駄をなくすとともに、その処理の過程で大気や水を汚染することがあってはならない。容リ法の大きな目的のひとつに焼却量の削減、処分場の負荷の低減を明確に加えることが必要である。 東京23区では、固定発生源に占めるごみ焼却施設の割合は非常に大きく、ダイオキシン特措法の指定事業所で言えば9割以上を占めている。それらの規制や監視は従来通りのまま、廃プラや容器包装類の焼却を進めることは環境への負荷を高めることに直結する。 ■制度の抜本的な改正を 法制度のビジョンとして焼却炉の削減を上げることが不可欠である。その上で、税金による悪しき公平性を払拭し、徹底した事業者負担(EPR)、使用者負担を制度に組み入れることが必要である。 容器包装類へのデポジット制度の導入、自治体負担による回収・分別・保管の義務の見直しにより民間参入の道を開き雇用を確保するなど、従来から指摘されてきた課題の見直しが行われなければ、日本はいつまでたっても焼却処理に依存した@中央集権的、Aハイテク依存型、Bハイコスト型、Cハイリスク型(経済的リスクと環境的リスク)のごみ処理を余儀なくされ、正直者が馬鹿を見ることになるだろう。 そのためには、本来のリデュース(ごみの発生抑制、排出抑制による減量化)の成果がきちんと評価され、その成果に基づいて補助金が支払われるような制度に改正する必要があるだろう。いつまでも焼却炉(高効率発電施設と呼んでいる)やガス化溶融炉などのハードに補助金を出すのは止めるべきである。 同時に、ごみ処理費用、リサイクル費用の内訳を明らかにし公費の無駄をなくしていくことが大切である。東京23区のごみ処理費用は首都圏でもダントツに高くトン当たり6万円を超えていることが明らかになっている。収集運搬から中間処理、最終処分まで自治体の自治事務として首長が市民参加のもとで、徹底的に議論し、現状の焼却依存体質を改めていくことが求められている。 |