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PPT1 講義PPTの表紙 昨年までは、主にインドネシアからの研修生向けの講義と清掃工場などの施設見学を行っていましたが、今年2015年度は4月16日の午前中一時間ほど、バングラディシュの政府高官の皆さん10名にお話しをすることとなりました。 正式なグループ名は“Officials from the National Academy for Planning & Development(NAPD), Government of Bangladesh”といいます。 オフィシャルというだけあって、年齢も40代から上、女性は一人だけでした。 役職名は以下の通りです。 1Additional Director General (Joint Secretary), NAPD 2 Joint Chief, Socio- Economic Infrastructure Division 3 Deputy Secretary, Planning Division 4 Senior Assistant Secretary, IMED 5 Chief Instructor-1, NAPD 6 Director (Research and Publication), NAPD 7 Chief Instructor, NAPD 8 Deputy Director, NAPD 9 Instructor, NAPD 10 Training Officer,NAPD 一週間ほどの短い滞在期間ということで、今回の講義プログラムは1日2小間、3日に亘って行われいることとなりました。午後はいろいろな場所の見学や視察に当てられ、週末には広島の原爆ドームなどにも行かれる予定とのことです。 1日目 講義1“Japanese Government and Public Policy” 講義2“Environmental Issues in Japan” (by Komichi Ikeda) 2日目 講義3“Education in Japan” 講義4“Women in Japan” 3日目 講義5“Lessons from the Japanese Economy” 講義6“Japanese Approaches to CSR” 日本の環境問題の講義といえば、日本がいかに公害を克服したか、いかにごみを「高度な技術で」処理しているか、といった自慢話に終始するのが落ちなのですが、私の講義では、日本が今なお直面している様々な環境問題について、ダイジェスト的にお話しし、日本のやってきたことは、決して先進国として見習うべきすばらしい所ばかりではなくいかに多くの問題を抱えているか、についてお話しすることにしました。 ※以下は当日使いました62枚のパワーポイントの1/4程度を使っています。 PPT2: 環境問題と時代の流れ 出典:池田こみち講義パワーポイント 1.原発問題 地震大国日本に現在どれほどの原発が存在しているか、また、さらに何基の新規建設の提案がなされているかについて説明しました。また、歴史の都である京都の北には最も原発が集中し、万一の事故があれば、関西エリアが大きなダメージを受けること、それにもかかわらず、政府は国民に対して避難に必要な最低限の情報すら提供できていないことをわかりやすく解説。 これにはみなさんびっくりしていました。それほど原発に依存していることをご存じなかったようです。今は全部止まっていて電気は足りてるのかと心配していましたが、重油、天然ガスなど化石燃料に依存しているため温暖化を加速していることも付け加えておきました。一方で代替エネルギーの開発利用は進んでいません。 PPT3: 原発の影響範囲 出典:池田こみち講義パワーポイント 2.環境汚染問題(主として大気汚染) 東京都の環境監視の実態について説明し、全体としては改善されているものの、道路開発や都市開発により沿道の大気は依然として悪く、一部では訴訟も起こっていることを説明。子供たちの喘息の被患率は増加傾向が止まっていません。また、個々の道路開発だけでなく、広域的面的に累積的な道路交通に伴う環境影響を解析する必要があることも説明しました。東京都心部では焼却炉が最大の固定発生源となっていることも、もちろん付け加えておきました。 PPT4: 喘息被患率の増加 出典:池田こみち講義パワーポイント 3.自然保護問題 貴重な自然は法律によって守られることが多いのですが、身近な自然は都市開発や公共事業によって失われつつあることを説明しました。都市河川、里山、水田等の生態系は失われています。特に海辺や河口の干潟は脆弱であることを付け加えました。 自然保護関連の事例として、八ッ場ダムの建設で失われる吾妻渓谷の景観や自然、沖縄の辺野古への基地移転で失われる海洋生物や生態系についても説明。 加えて、八ッ場ダムについては、計画から建設まで半世紀以上が経過し、事業の必要性の議論が問われ、公共事業の意志決定とコストの問題にも触れました。沖縄については、米軍基地の跡地が汚染されている問題についてすべての費用負担が日本側であることの問題点ももちろん指摘しておきました。 これについてもみなさんがびっくりしていました。なぜダムは止められなかったのか、アセスメントは行っていないのか、必要性の検討は行われてたのか、。。。。。当然の疑問です。地元住民が永年の反対運動に疲れ果てていること、住民の意向を無視した開発事業の進め方、建設利権の問題点を強調しておきました。 PPT5: 米軍基地の辺野古移転 出典:池田こみち講義パワーポイント 4.地球規模の環境問題 ここでは、個別の問題については時間がないので話せませんでしたが、ひとつだけ強調したのは、「戦争による環境影響」です。戦争に環境配慮がないからです。湾岸戦争の時の激しい油井の炎上について、みなさんもよく覚えていらっしゃいました。私が提示した図に「砂漠化:Desertification」がない、との指摘がありました。 PPT6: 地球環境問題の種類の図 出典:池田こみち講義パワーポイント 5.廃棄物処理問題 ごみの排出量の推移を示して、ごみは年々減少しているものの、その処理は過度な焼却依存となっており、そのために灰を埋め立てる処分場にも汚染が広がっていることを説明。実際、東京都の日の出では長い間裁判が続いています。また焼却依存により膨大なイニシャルコスト、ランニングコストがかかっていることも説明しました。 焼却炉への技術過信は代替技術の検討を阻むばかりか、技術開発も遅れを来します。 PPT7: ごみ処理コストグラフ 出典:池田こみち講義パワーポイント さらに日本では焼却炉への規制があまく、市民参加で環境監視を行っており、その結果廃プラ焼却開始後には大気中のダイオキシンや水銀の濃度が悪化していることを示しました。規制が効果を持たないことについてみなさん疑問を持っていました。 PPT8: 松葉によるダイオキシン汚染結果 出典:池田こみち講義パワーポイント 焼却依存からゼロ・ウェイスト(ZW)型に移行することの重要性を強調しておきました。 PPT9: 日本型からゼロ・ウェイスト型へ 出典:池田こみち講義パワーポイント 6.魚類の汚染 そうしないと、日本の内湾の魚介類の汚染はさらに進むことをグラフで示しました。過去も現在も日本は農薬の大量使用国です。一位は中国に譲りましたが、韓国、日本は常に上位です。過去の農薬使用、現在のごみ処理によって内湾の汚染は進んでいます。加えて放射能汚染もあるのです。 米国にあるような魚の食事回数(月に何回食べられる)ガイドラインは日本にはありません。 PPT10: 日本の魚類の汚染(ダイオキシン類) 出典:池田こみち講義パワーポイント 7.環境資源の適正管理による問題解決と市民の意思決定プロセスへの参加 環境問題を解決し、将来の世代に引き継いでいくためには、環境を資源ととらえて、その質、量、機能を適切に管理していくことが問われています。こうした長期的な環境政策、環境計画の目標、方針、施策を決定し実行していくためには市民参加が不可欠です。 しかし、日本では多くの政策が市民参加を軽視して行われています。形式的に行われることがあっても、ほとんど聞き置かれたり無視されて、市民の声によって何も変わりません。 利益配分のトライアングルから現状追認のペンタゴンへと状況は悪化しています。どのように市民を意志決定の過程に関与させていけばいいのでしょうか。市民を支援するアドボケイトはどのように日本で行われるのでしょうか。お粗末な現状です。市民がどこに居るのがいいのか、真ん中か、外か、六角形がいいのかで大いに議論となりました。 PPT11: 環境資源の適正管理の図と 出典:池田こみち講義パワーポイント PPT12: ペンタゴンの図 出典:池田こみち講義パワーポイント 8.OECDの中での日本の位置と幸福度 かくして、日本人のBetter Life Index は毎年20位前後と低く、日本人の幸福度は低いことをまとめとしました。経済的にはバングラディシュに比べて豊かかもしれませんが、多くの日本人は疲れていること、ワークライフバランスや市民の政治参加などの面で何をいっても聞き入れられないストレスは大変大きいことも伝えました。 日本は途上国のお手本となるような良いところばかりでなく、多くの課題を抱えていることをよく知って頂きたいと伝えておきました。 PPT13: OECEのインデックス 出典:池田こみち講義パワーポイント 終わり PPT14:Ending 出典:池田こみち講義パワーポイント |