東京湾魚類ダイオキシン汚染の現状 池田こみち 環境総合研究所顧問 掲載日:2019年8月20日 独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載禁 |
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来年の東京オリンピックまで一年を切り、日々、期間中の猛暑を心配する声が大きくなっている。同時に、トライアスロンなどのようにお台場の海を泳ぐ競技については、大腸菌汚染や臭気も大きな問題となっている。 そこで、久しぶりに東京湾の魚介類の化学物質汚染レベルについて見てみることとする。東京湾、大阪湾、三河湾、瀬戸内海などの閉鎖性海域に生息する魚介類、とくに海底に生息する魚類のダイオキシン類濃度が高いことは知られている。 折しも、2019年8月1日、東京都が東京湾の魚介類のダイオキシン類等の汚染状況について調査結果を発表した。それによると、以下の通り魚類32検体、貝類6検体を分析した結果、魚類のダイオキシン類濃度が高いことがわかった。 以下、東京都の発表資料より概要を抜粋する。
上記発表資料によると、ダイオキシン類以外に、いわゆる環境ホルモン物質(内分泌かく乱作用が疑われる化学物質)として、PCB、DDT 及びその代謝物、TBT、TPT、アルキルフェノール類、ベンゾフェノン、アジピン酸ジ−2−エチルへキシル、ペンタクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノールの各項目について測定が行われているが、いずれも濃度は低いとされており、ここでは、魚類のダイオキシン類に注目して詳細を見てみることとする。 ダイオキシン類とは法律にPCDD、PCDF、Co-PCBの3種類と定められており、その毒性等量濃度の合計値で評価を行うこととなっているので、担当部署に連絡を入れたところ、平成30年度の調査結果についてはまだ公表していない、また、ダイオキシン類の内訳については示す積もりがない、との回答だったため、過去のデータをとりまとめた『東京都食品衛生関係事業報告 平成29年版』から魚類のダイオキシン類濃度のグラフを作成してみた。調査は平成28年度のものである。 当該部署は、魚介類のダイオキシン類濃度について、ダイオキシン類の一日耐容摂取量(TDI)として日本が定めている 4pg TEQ/kg体重/日に照らして評価しているため、ダイオキシンの種類毎に濃度を見る必要がないと考えているとのことだった。 しかし、ダイオキシン類の内訳を知ることは、魚介類のダイオキシン類の由来を知る上で非常に重要な情報となることから、東京都の回答は納得できないものだった。 注)米国における魚介類中のダイオキシン類濃度の指針値 1.2pg-TEQ/g 調査対象魚類の数は28検体と先に示した平成30年度の調査より少なく、魚類の平均濃度は若干高めであるが、魚類の種類毎にどのような濃度範囲となっているか、またPCDD/PCDFとCo-PCBの濃度が別々にの割合で示されているので、わかりやすい。 図より、東京湾の魚類で特にアナゴのように脂肪分の多い魚で海底近くに生息しているものは濃度が高いことがわかる。アメリカが定めている魚類のダイオキシン類の摂取のための指針値は1.2pg-TEQ/gであるので、それを遙かに超えている実態がわかる。妊産婦や子供はせいぜい月に1回程度にした方がよさそうだ。 ダイオキシン類の由来は、これまで使用してきた農薬類から生成されたPCDD/PCDFに加えて、製品由来(トランス等の工業製品に使用されているPCB類を起源とする)のCo-PCBが中心であるとしているが、加えて、東京湾岸には大規模焼却炉が林立しており、また焼却灰を埋め立てている中央防波堤沖最終処分場もあることから、廃棄物焼却炉による影響も少なからずあるものと思われる。 いずれにしても東京湾の水質は決してトライアスロンのスイム競技などに適したものではないことは間違いない。特に夏場は湾奥のDO(酸素要求量)が低くなり、貧酸素状態となることからますます水質は悪化すること間違いなしなのだ。 グラフの元データの出典:東京都福祉保健局食品衛生関係事業報告 平成29年版 第2章 食品安全関係事業 |