川内原発 再稼動に向けた動き 展示館訪問 池田こみち 掲載日:2014年6月1日 独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載禁 |
真夏日が続く5月末の5日間、鹿児島県薩摩川内市に出かけた。 2012年6月に災害瓦礫広域処理の問題で鹿児島市内での講演を行うために立ち寄って以来2年目の帰郷となる。 鹿児島県 薩摩川内市 出典:グーグルマップ 5月28日の南日本新聞の一面トップに事故時シミュレーションが掲載された翌日、川内原発展示館を訪問した。展示館は道路を挟んで発電所本体と並んで配置されている。場所は、川内川の河口に位置する久見崎町にあり、川内川を挟んで左岸の海岸に川内原発、右岸の川内港側には川内火力の煙突がそびえている。 <川内原発施設の概要:1号機及び2号機> ・位 置 鹿児島県薩摩川内市久見崎町字片平山1765番地3 ・用地面積 約145万平方メートル(埋立面積約10万平方メートルを含む) ・電気出力 それぞれ89万キロワット 合計178万キロワット ・炉 型 式 軽水減速・軽水冷却加圧水型(PWR) ・燃 料 種別 低濃縮(約4〜5%)二酸化ウラン ・装 荷 量 それぞれ約74トン ・運転開始 1号機:昭和59年7月4日 2号機:昭和60年11月28日 発電所の開発経緯・歴史については、九電の以下のサイトを参照されたい。地元、川内市議会が原発誘致を議決したのは昭和39年のことであり、既に50年が経過している。 ★川内原発 発電所のあゆみ http://www.kyuden.co.jp/sendai_history_index.html 写真: 川内原発の位置図 出典:グーグルマップ 原発案内看板 genpatu1.jpg 写真 川内原発展示館外観 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 説明付き見学に予約の必要はなく、入口の受付で六ヶ所村の動燃PR館と同様に、制服姿の女性職員の方にお願いし、すぐに対応して頂けた。その時点で来訪者は叔母と私の二人だけのようだった。 写真: エントランスで記念撮影 撮影: Nikon Coolpix S6400 まず、川内原発の概要と3.11以降進めている安全対策についてのビデオを見た。その後、階段を上って二階へ昇ると、川内原発を一望できるガラス張りの円形の部屋には、真ん中に発電所全景模型を配置し、そのまわりに説明パネルが設置されている。模型の撮影は防犯上禁止されていたので残念だったが、そこで施設の配置などについて説明を受ける。 施設全体の配置は、福島第一の場合と同様に、海側にタービン建屋、中心部に二つの原子炉建屋(筒型)、そして背後に、燃料貯蔵施設(使用済みも含む)、低レベル廃棄物処理施設が配置され、両サイドの高台に新たに設置した発電機などの安全対策設備が3カ所に配備されている。そして、さらに背後では、現在、免震重要棟という事故時に司令塔となる施設を建設中だった。 その後、新たに行った安全対策のための工事の状況などについて説明を受け、次に自慢の実物大原子炉模型の展示エリアへと進む。 原子力発電所の写真 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 工事中の写真 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 写真: 原子炉建屋模型 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 写真: 原子炉模型 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 川内原発の特徴は、福島第一とは異なる原子炉の型、すなわち加圧水型(PWR)であることである。原子炉建屋の半径は原子炉の中心部から22mもあり、原子炉を守る5重の壁の構造も実物サイズの広々とした円筒状の建屋となっている。高さ12m,幅4.5mの実物大原子炉模型の中央には燃料棒も実物大で設置されておりその巨大さに圧倒される。制御棒が上下する様子も操作ボタンで体験できる。緊急時にはボタン操作によりわずか1−2秒の早さで制御棒が挿入されるとのことだ。 写真: PWRの図 出典:九州電力 川内原子力発電所 Webサイトより 原子炉の模型を中心に据え、廻りの壁には、原子力発電所の安全性、環境モニタリング、温排水、廃棄物処理などについての説明パネルを配置し、原子燃料サイクルや高レベル放射性廃棄物の地層処理などについての解説も行われていた。六ヶ所村の動燃PRセンター同様、原子力発電所で使われる燃料はわずか4%であり96%はリサイクルが可能と強調していた。日本はエネルギーの95%を輸入に依存しており、核燃料のサイクルは重要だと。 ここでも判で押したように、安全性と経済性ばかりが強調され、原発の課題(コスト、廃棄物処理、安全性など)については触れていなかった。 説明の中では、川内原発が福島第一と違っていかに安全かが強調されていた。原子炉建屋は福島第一などの沸騰水型に比べて直径44mと広く、設備がゆったり配置されており、また冷却水は別系統の水を使用するために安全性が高いことなどが繰り返し説明された。 低レベル廃棄物(固形物)はドラム缶に詰められ、敷地内の保管場所に貯蔵されている。現在21000本のドラム缶が保管されているが、まだ余力があり問題はないとのことだった。これまでに六ヶ所村に320個のドラム缶を運んでいる。 また、使用済み燃料は、福島第一と異なり、地下プールに貯蔵しており、管理もしやすく、火山爆発や地質・断層などに対する安全性が高いと強調していた。こちらもまだ敷地内のプールに貯蔵できる余力があるとのことだった。 3.11以降の安全対策として以下対応が進められており、現在再稼働審査に向けて準備を進めているとして以下の説明があった。 1.電源の確保 ・中央制御室等に電気を送るため、高圧発電機車及びケーブルを各原子炉に1台配備した。 ・外部電源復旧対策として、移動用変圧器や仮鉄柱などを活用し、発電所の外部から早期に電気を送電するための対策を実施。 2.冷却水を送るポンプの確保 ・原子炉や使用済み燃料貯蔵プールの長期冷却を行えるように、冷却水を補給する仮設ポンプ、仮設ホースを配備。また、原子炉をより冷やすために大容量の仮設ポンプも追加配備。 ・タービン原子炉を冷やす水を供給するポンプや非常用発電機と言った機器類のあるエリアの扉等に浸水防止対策を実施。 3.冷却水の確保 ・原子炉や使用済み燃料貯蔵プールの冷却を長期間行えるよう,水源としてろ過水貯蔵タンク、隣接する淡水池等を活用することとした。(敷地内のみやま池は自然の池で、34万トンの保水量があるという) 4.現在、重要免震棟を海抜30mの位置に建設中(これまではなかった)。 説明員の女性職員にいろいろ質問をしたところ、「女性でこんなに詳しい方お客様は初めてです。後ほど調べてお応えします。専門の者がおりますので後ほどご説明します。」などと戸惑った様子も見られたが、結局私の質問には答えられなかった。 川内原発には明示的な防潮堤というものがない。それは、地盤そのものが高台にあるからである。 以下はNHK化学文化部のブログの一部である。 「佐賀県にある九州電力の玄海原発と鹿児島県にある九州電力の川内原発では、敷地の高さに余裕があるとして新たに防潮堤を設けずに、施設の防水対策中心の津波対策を進めることにしています。」 また、新たな規制基準への対応について、九州電力が川内原発の津波に対する安全性評価を次のようにまとめている。 「基準津波による取水口地点における最高水位は、朔望平均満潮位を考慮するとEL.3.7mである。重要な安全機能を有する屋外設備である海水ポンプを設置している取水ピットは、高さEL.5.0mの敷地に設置されており、津波高さEL.3.7mを上回ることから、地上部から到達、流入しない。 重要な安全機能を有する設備を内包する建屋はEL.13.0mの敷地に設置されており、基準津波による津波高さより十分に高く、地震による地盤の沈降を考慮しても地上部からの到達、流入しない。このため、防潮堤等の津波防護施設設置は不要である。」 出典:川内原子力発電所1,2号炉の津波に対する施設評価について なお、写真は、グーグルストリートビューによるもので、海側から原子炉建屋を見たもので、確かに敷地が高いことがわかる。 海側から原子炉建屋を見た写真 出典:グーグルストリートビュー 私からの質問は以下のような内容である。 ・六ヶ所村に輸送する低レベル廃棄物や使用済み燃料の処理費用はいくらぐらいかかるのか。 ・六ヶ所村が本格稼働する前はどこに処理を委託していたのか。(これはどうもフランスの処理施設に委託していたような話しぶりだった)、地元対策として支払った漁業補償はいくらかかったのか。 ・対象となった漁協はどことどこなのか。 ・地域防災計画の策定が進んでいるが、どのような協力をおこなっているのか。 こうした施設はどこも同じだが、一方的に安全を強調した情報ばかりが提示され肝心な市民の疑問や不安に応える情報を提供していない点が大きな課題である。3.11以降、こうした施設でいくら説明をきいてもなかなか納得する市民は少ないと思われる。 なぜなら、ひとたび原発の事故がおこれば、問題は放射能汚染にとどまらないからである。このことを福島原発の事故から学ばなければ、部分的な技術面の安全性ばかり強調してもかえって反発を招くことにもなる。 こうした広報施設の費用もしっかりと電力料金に上乗せされていると思うとますます複雑な気持ちになる。 つづく |