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東京23区清掃一部事務組合への公開質問

〜「東京モデル」と一組の国際協力

に関する基本方針について〜

池田こみち Komichi Ikeda
掲載月日:2019年2月20日
独立系メディア E−wave Tokyo
 
無断転載禁
関連スレッド: 地域地球ゴミ有害松葉ゼロウェイスト地方沖縄首都圏外郭団体国際ロシアEU東南ア日中韓朝談合公共事業


 「東京モデル」と聞いて23区民は何を思い出すだろうか。それは決して、ファッションモデルのエージェントやマンション販売のためのモデルハウスなどではない。

 東京23区の家庭や事業所から出されるごみを焼却処理している「東京二十三区清掃一部事務組合」(以後、「清掃一組」と略称)が平成25年6月に、東京23区の清掃事業を海外アピールするためにつくったものが「東京モデル」なのである。

 清掃一組のWebサイトにも紹介されているのでご存じない方はご覧戴きたい。ただし、詳細は資料請求しないとWeb上ではきわめて見づらい資料を示しているだけなのでその点も今回は問題として指摘した。

「東京モデル」について
 http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/seiso/tokyomodel.html

 その前提として、平成24年に清掃一組は「東京23区清掃事業の国際協力に関する基本方針」というものを策定しており、その後その方針に沿って「東京モデル」を国際的に普及させるための活動を積極的に展開している。

 そもそも同組合の規約から組合の仕事(組合の共同処理する事務)についての記載を見ると、次の通りとなっている。

(組合の共同処理する事務)

 以下は組合規約第三条の抜粋

第三条 組合は、次に掲げる事務を共同処理する。

一 可燃ごみの焼却施設(当該施設と一体の溶融固化施設及びごみ運搬用パイプライン施設を含む。)の整備及び管理運営

二 前号に掲げる施設以外のごみ処理施設の整備及び管理運営

三 し尿を公共下水道に投入するための施設の整備及び管理運営

 抜粋終わり

 まさに、可燃ごみの焼却施設やし尿処理施設の整備と管理運営をすることが役割の組織(一部事務組合=複数の普通地方公共団体や特別区が、行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する組織であり、特別地方公共団体である地方公共団体の組合の一つ)が清掃一組なのである。

 その公共団体が、主権者である区民や議会への情報提供や合意形成手続きもなく、一方的に現在の23区型のごみ処理を「モデル」として海外に売り込むというのは明らかに職務権限を逸脱したものであると言えないだろうか。

 今回、以前から気になっていた「東京モデル」の具体的な内容とその作成プロセスとともに、清掃一組がこの10年近く進めている「国際協力」の名の下での焼却炉の海外(主として東南アジア諸国)への普及活動について、公開質問を行い、問題を明らかにしていくこととする。

 公開質問状は以下の通りである。


東京二十三区清掃一部事務組合
清掃事業国際協力室 御中

         東京モデル」についての公開質問状
          

                   
2018年2月19日
                          池田こみち (Komichi IKEDA)
                          自宅住所、電話番号、メルアドなどは略

 先般、「東京モデル」について、貴組合が作成した日本語版及び英語版のパンフレットをご送付頂きました。また、「東京モデル」について貴組合Web サイトに掲載の各種情報、記事、職員によるジャーナル等への論考などについても拝見いたしました。その上で、以下について質問させて頂きますので、公開を前提にご回答を頂きますようお願い申し上げます。回答の期日は、本質問状が到着後1ヶ月以内(3月末)までにはお願い申し上げます。

1 .「東京モデル」作成・使用の目的について

 作成の目的は、東京のごみ処理システムについて海外に普及するためと思われますが、具体的に教えて下さい。

 貴組合Web 上で、全面的に公開しない理由をご説明ください。現状ではPDF が縮小版となっていて見づらい上に利用もできません。

 また、Web 上には、<「東京モデル」は、清掃一組以外の行政機関、民間企業を問わず自由に活用していただく方針です。活用をご希望される方は、下記お問い合わせ先へご連絡ください。>と記載してありますが、一方で、<利用される際は依頼文と団体の事業内容がわかる資料を提出>する必要があるというのは矛盾していませんか。このような記載をされた理由をご説明ください。

2 .「東京モデル」の作成経費について

「東京モデル」の検討及び作成(パンフレットを含め)の経費はどれほどでしょうか。

 また、パンフレットの作成部数はそれぞれ何部でしょうか。年度別にお示し下さい。

3 .「東京モデル」の作成プロセスについて

 「東京モデル」は誰/どこ(組織)が作成したものなのか、貴組合内における決定プロセスとともに、作成プロセスに各区、区民はどのように関与したか、時系列的にわかるようにお示し下さい。作成に係わった区の意見などを纏めたものがあればお示し下さい。また、貴組合の議会にはどのような説明がなされたのでしょうか。具体的にお示し下さい。

4 .「東京モデル」の貴組合における活用方法/活用実績について

 これまでに、どのような場面、機会にどのように使用されたか、具体的にお示し下さい。
パンフレットの配布先(団体名、企業名、地域など)と配布部数など。

5 .「東京モデル」パンフレットの記載内容について

 ごみ焼却処理について、プラスの側面にしか触れられていませんが、以下のような課題について「東京モデル」ではどのように考えられ、海外に情報発信されているのでしょうか。焼却炉の運営・維持管理を行う組織である貴組合が一方的にメリットを強調したり、そのための情報を部分的に示したり、デメリットに触れないことは問題であると思いますが。

5−1 廃棄物焼却施設の建設には膨大なイニシャルコストとともに、長期にわたる維持管理コストが必要となること。

5−2 焼却炉を建設する際には、環境アセスメントなどの事前の環境配慮手続きが必要となり、そのためのコストも発生すること。

5−3 焼却炉稼働後は、排ガス、環境大気はもとより排水、焼却灰、その他のモニタリングが不可欠となり、そのためのコストも膨大となること。またそれらの測定結果を評価、管理(記録・公表・保管等)のために専門職員も必要となること。

5−4 焼却炉設予定地周辺住民との合意形成には時間とエネルギーが必要となること。

5−5 東京23 区においても、廃プラスチックの混合焼却を開始してから、水銀によるトラブルが多発し、その対応に多額のコストが必要となっていること。

5−6 高度な焼却炉の建設はプラントメーカーにとって長期の維持管理契約など大きなメリットがある一方で、地元の雇用には結びつきにくく、地元の経済発展に寄与しないこと。

5−7 東京23区内においても、焼却炉周辺住民の間で反対や苦情などが多く寄せられている実態があること。

5−8 各地域、都市における廃棄物政策(3R はもとより、収集運搬から処理までの各プロセスを含め)をどのようなものとするかは、各国の環境政策との整合性はもとより、地方自治体の環境政策、地域住民や事業者の理解と合意形成が不可欠となります。一方的に東京のやり方を「モデル」として売り込むことは、現地の社会経済や地域社会に混乱をもたらすことにもなりかねず、課題が大きいことについて。

 何よりも、一度、焼却炉を導入してしまったら、その後は半永久的に焼却炉にごみを供給しプラントを稼動し続けることとなり、ゼロ・ウェイストや本来の循環型社会の形成のための政策が後退し、停滞しかねません。次世代に負担を残すことになります。

6 .「東京モデル」の今後について

 今後、「東京モデル」をどうしていくのか、見直し、普及、活用等の展望についてご見解をお示し下さい。

7 .「東京モデル」と循環型社会形成推進との整合性と公共団体としての役割について

「東京モデル」では、ごみの排出・分別・収集・運搬・中間処理・最終処分の流れが一方的であり、「出るごみを集めて燃やして埋める」という処理処分を中心としたモデルが先進的であるとして推奨されています。

 しかし、本来の循環型社会の姿であるごみの発生抑制、排出抑制や減量化・資源化、そのための各種法制度・仕組み作りなどそれぞれの地域にあった政策を市民参加で議論し立案していくことが本来の進め方であり、東京23 三区の方式をモデルとしてアジア諸国、中国、ロシアなどに焼却炉を売り込むようなやり方はいかがなものでしょうか。

 多様な技術、多様な政策について十分議論をしながら、時間をかけて、地域の現状と課題を踏まえて解決しながら進める方法が望ましいと考えます。循環型社会の形成とはごみを集めて焼却処理することがメインではなく、如何に地域の資源を活用して、環境負荷・経済負担を少なく、ごみを減らし、資源化し循環させていくかが問われなければなりません。

 焼却処理に伴う環境負荷を過少評価しているとしか思えません。まして、区民がほとんど知らないところで、合意形成もなされないままプラントメーカーの売り込みを助けるようなアプローチは公共団体である清掃一組が行うべきことではありません。

 民間のプラントメーカーは、民間企業の営業活動として売り込みを行うべきであり、既に多数のプラントを諸外国(民間、公共を問わず)から受注しています。そのために、地方公共団体(貴組合や国・都道府県・市区町村)が公金を使って動くことは適切とは思えません。反論があればご回答ください。海外への焼却炉の普及=「東京モデル」の普及について、貴組合の立場を明確にお示し下さい。

(1)国際貢献としての事業展開のために

@海外へのPR 活動とありますが、何をPR しているのですか。

A国際貢献のために「東京モデル」を開発されたのですか。

B海外からの視察受入が年間3000 人規模に及んでいるようですが、国内での視察
先をお示し下さい。海外からの視察団への研修、学習会、セミナーなどを行う
場合の講師はどのように選定されるのかお示し下さい。過去に海外視察団や研修生等のために貴組合が依頼された講師名・所属をお教え下さい。

C貴組合から講師を派遣する場合の要件についてお示し下さい。過去の講師派遣実績をお示し下さい。また、講師派遣の費用はどこがどのように負担しているのかお示し下さい。

D住民交流(相互訪問など)を行う際の区民の選び方についてお示し下さい。

 過去の実績をお示し下さい。海外視察や交流に参加する区民の費用負担(旅費、
宿泊費その他)は誰がどのように負担しているのかお示し下さい。

(2)コンサル型事業展開のために

@「東京モデル」を活用した例があればお示し下さい。

AFS 事業に関与した過去の実績をお示し下さい。国名、団体名、日本側企業名など具体的に。

 貴組合がこのような国際的事業の一環として廃棄物焼却プラントの導入を積極的に推進することは組合の規約上問題はないのか、議会への説明などは行われているのかご説明下さい。

 最後に、貴組合では、平成24年5月に「東京二三区清掃事業の国際協力に関する基本方針」なるものを策定し、国際協力について;@国際貢献型、Aコンサル型、Bオペレーション&メンテナンス型の4つのパターンに分類し、@とAから始め、B、Cへと進めて行くとの方針があるようですが、これについては、どのような意思決定機関がどのようなプロセスを経て決定したのかをお示し下さい。

以上

 我が国の廃棄物処理は戦後一貫して、集めて焼却して灰を埋め立てるという処理処分を是とした方式で進められてきた。平成20年度からはそれまで分別・埋め立てしていたプラスチックごみも混合焼却されることとなり、焼却炉への負荷が高まっている。

 焼却処理(中間処理)施設の整備、管理運営を業務とする清掃一組は、バブル崩壊後、右肩下がりに区民の排出するごみが減少しているにもかかわらず、焼却炉の更新、延命化を続け、焼却炉の数や規模は維持されたままとなってきた。

 職員数1000名余、予算規模700億円超の規模をもつ清掃一組は、清掃を続けることが組織の存続を図る上で重要なものとなっていることは明らかである。


 図1 23区のごみ量推移(明治34年度〜平成28年度)
 注)平成28年度のごみ量は平成元年度のピーク時と比べて44%減

 一方で、平成20年度に廃プラ焼却を開始して以降、23区内の清掃工場では水銀トラブルが頻発し、周辺住民に不安を与えるとともに多額費用負担も発生している。

 

 国内での焼却炉市場が飽和状態となっていることから、各プラントメーカーは海外展開を積極的に行っており、これまでに多くの実績を上げているが、そうした民間企業の営業行為に公共団体としての清掃一組が、住民を無視したかたちで、自らのごみ処理方式を「モデル」としてPRし、売り込みを手助けしたり、つゆ払いするような行為は明らかに問題と言わざるを得ない。

 以下に、大手プラントメーカーの海外での主な受注実績を示している。

池田こみち:日本の焼却・溶融炉等、官民一体の海外売り込み実態
  http://eritokyo.jp/independent/ikeeda-shoukyakuroexp1.html

 質問を出すのがやや遅きに失した感は否めないがこのあたりで、襟を正してもらう機会としたい。