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オンズブズマンが問う
公共事業


その1 港湾事業(4)


川田賢司

全国市民オンブズマン連絡会議 幹事
市民オンブズ・なら 代表委員

掲載日:2006.6.26


 7兆4千9百億円が投じられ、平成14年に計画が終了した第9次港湾整備事業では、国際海運ネットワーク拠点形成の掛け声の下、国際海上コンテナターミナル18港、多目的国際ターミナル93港、複合一貫輸送ターミナル24港そして国内物流ターミナル24港などの整備事業が行われました。

 政府の説明によると国際海上ターミナルとは次のようになっています。「物流コストを削減するため、コンテナ貨物量の増加、コンテナ船の大型化に対応し、国際海上コンテナターミナルの拠点的配置を推進する。

 このため、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び北部九州の4地域の中枢国際港湾(いわゆる国際ハブ港湾)において、世界に巡らされた航路網と高頻度の寄港サービスが提供されるとともに、国内各地と世界とを結ぶハブとしての機能を強化するため、大水深で高規格な国際海上コンテナターミナルの整備を推進し、相対的に地位の低下しつつある我が国港湾の国際競争力を強化する。

 また、北海道、日本海中部、東東北、北関東、駿河湾沿岸、中国、南九州及び沖縄の全国8地域の中核国際港湾において、地域のコンテナ輸送に対応し、中枢国際港湾を補完しつつ、成長著しい東アジア等との海運ネットワークの形成等を図るため、国際海上コンテナターミナルの整備を推進する。

 上記の整備を東京港、常陸那珂港等18港において推進する。

 これに要する事業費は、約6,020億円である。」

(第40回港湾審議会答申)
 この整備事業に謳われた4地域の中枢港湾の1つ大阪湾の事業(主に大阪港)を見ていきましょう。大阪市港湾局のホームページには1994年以降の主な出来事として以下の項目が上げられています。

1994年(平成 6年) アジア太平トレードセンター(ATC)開業関西
     国際空港開港、サイゴン港と姉妹港提携
1995年(平成 7年) 阪神淡路大震災発生大阪ワールド・トレード
     センター・ビルディング(WTC)開業
1996年(平成 8年) 大阪港国際フェリーターミナル共用開始
1997年(平成 9年) 大阪港咲州トンネル開通
2000年(平成12年) セイル・トレーニング帆船「あこがれ」世界一周
     航海達成なにわの海の時空館開業
2001年(平成13年) ユニバーサル・スタジオ・ジャパン開業
2002年(平成14年) 夢洲C−10岸壁、大阪港コンテナ埠頭第11号
     岸壁供用開始
2004年(平成16年) 大阪港が神戸港とともに阪神港として
     「スーパー中枢港湾」に指定
2005年(平成17年) 「サファイア・プリンセス」
     (日本に寄港した最大の外国旅客)天保山岸壁に初入港
     大阪港及び神戸港が「指定特定重要港湾」に指定
平成8年の国際フェリーターミナル供用開始、平成14年C−10、
     C−11のコンテナ埠頭供用開始と計画は着々

と実現しています。

 阪神大震災によって神戸港が壊滅的打撃を受け港湾として利用不可能な状況に一時的に対応して、大阪港が振り替え港としてしての役割を果たし、それまで神戸港で取り扱われていた貨物の多くが大阪港の取り扱いに振り替えられた結果、平成7年から急激に大阪港での国際貨物の取扱量が増加しました。

 大阪港港湾計画によると大阪市は,平成9年3月,平成17年を目標年度とする大阪港港湾計画を策定しました。

 同計画は,平成元年における大阪港のコンテナ貨物取扱量が輸出366万トン,輸入501万トンの合計867万トンであり,平成6年においては,輸出504万トン,輸入815万トンの合計1千319万トンであったところ,目標年度である平成17年には,コンテナ専用岸壁で取扱うコンテナ貨物量を2千465万トンと予測し、これに対応して,南港地区(咲洲),北港南地区(夢洲)のコンテナ埠頭計画に変更を加え,新島地区に新たなコンテナ埠頭を計画している。

 各地区のコンテナ埠頭における平成17年度の予測取扱量は,南港の既設コンテナ埠頭で550万トン,新設コンテナ埠頭で380万トン,新島地区で870万トン,北港南地区で665万トンと計画している。

 内貿取扱貨物量では8千575万トン、一般貨物量で4千10万トン、フェリー取扱貨物量が4千564万トンと計画している。

 平成13年外国貿易の貨物量の全港湾の総量は11億1千500万トン、大阪港の同じく外国貿易におけるこの年の貨物取扱量は3千350万トンでそのうちコンテナは2千264万トンでした。全港湾に占めるシェアーは3%だったのです。

 わが国の中枢3大港湾の1つとして整備され、さらにスーパー中枢港湾として大規模整備が進む大阪港の最大の目的である海上輸送における貨物取扱量は、外国貿易での貨物量は全国港湾第11位と、港湾設備と投入資金量には到底見合わない低水準の取り扱いしかしていないのです。

 海上貨物取扱量の総量における順位は7位でした。それでも、コンテナの取扱量は計画目標近くになっています。コンテナ化が進む貨物船の状況と、商業港として商品、完成品の貨物取り扱い度合いの高い大阪港では当然のことといえます。(大阪港のコンテナ取り扱いが平成7年以降急激に増加しています。

 その理由は阪神大震災で神戸港のコンテナ施設など港湾設備が壊滅的打撃を受け振り替え港として大阪港の利用が高まったことが最大の原因です。)コンテナ船が大型化したため、接岸できないバースの遊休化が進み、低水深のバースを次々と廃止しています。

 その一方、計画を大水深化をさらに進めるものに変更して、一旦出来上がっているところの当初大水深にさらに水深を追加し、同一場所での巨額工事の再工事を行っているのです。

 地方のあまり利用されない港湾では、仮想の過大な需要予測で巨額で巨大な港湾建設事業を行い、利用の増加が確実な取扱方式(コンテナ、フェリー他)の大都会などでの事業では、「過小」な需要予測であえて停滞を発生させ、同一場所で繰り返しスクラップ&ビルドの巨額工事を絶えず生み出す手法をとっているのです。

 大阪港の平成13年の国内貨物取扱量は約5千6百万トンだったので、計画取扱量8千575万トンと比べると約3千万トン少なく、計画の65%しかなかったのに、この国内貨物を取り扱う埠頭、バース及びフェリーターミナルなどは既に完成しているのです。需要予測の出鱈目さは極端な需給のアンバランスとなって現れています。

 重要港湾に指定されている鳥取港、鳥取県空港港湾課平成18年度事業費の説明を見ると、防波堤の整備、耐震強化岸壁の事業が載っています。

 平成8年(96年)からの貨物取扱量は、H8(96)18万トン弱、H9(97)75万トン強、H10(98)130万トン、H11(99)166万トン、H12(00)173万トン、H13(01)145万トン、H14(02)71万トン、H15(03)64万トン強、H16(04)40万トン強、H17(05)40万トンと平成12年の173万トンの取扱量を最高に年々減少し、昨年ではわずか40万トンと最高時の23%しかありません。

 平成16年に中国地方整備局が鳥取港の港湾改修事業再評価を行っています、それによると昭和52年に事業採択されたこの事業の計画事業費は408億円、既存価値754億1千万円、管理運営費56億8千万円、再投資費用5億6千万円の残存価値合計816億7千万円となり、これに対する総便益は1千222億1千万円となるとして、費用対効果分析の結果1,5の評価を出しています。(出典:港湾改修事業の再評価項目調書、中国地方整備局)

 さらに残りの事業と計画変更の新規事業がこれからも続いていきます。
平成16年の福井港の貨物取扱量は178万トンでした。同規模の投資と、さらに新規事業を続ける鳥取港の貨物取扱量は40万トンです。これほど投資効果が上っていない港湾に、重要港湾の格付が続き、港湾整備事業は続けられていくのです。
つづく