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地方分権改革に適した
地方制度改革案A


川村 和之


掲載月日:2007年6月26日

無断転載禁



 前回の最後の方で地方分権改革案の基本的な部分について簡単に説明をしたが、ここからはその詳細について説明していく。まずは一番初めにある『都道府県と市区町村を合併させ、普通地方公共団体を一本化する』ことについて説明する。

 まずはこれについて思いついたきっかけを説明したい。第一に、そもそも地方分権改革の方向性として、行政事務に関して「基礎的自治体優先」と「簡素で効率的な筋肉質の行財政システム」というのが基本である。「基礎的自治体優先」というのは、国で担っている事務を地方に、都道府県で担っている事務を市町村にと、行政事務の権限を市民に近いところに権限を委譲させていくという考え方である。

 この考え方は、自治・政治の透明性を図ることができるため賛同はできるのだが、そうした場合に都道府県というのがいらなくなってくるし、国から地方への税源等の移譲が言われているのに、都道府県から市区町村への税源の移譲が語られていないのもおかしい。

 第二に、その上で都道府県を合併させるなり、新たな地方公共団体として設置するなりして、広域的な政策の処理にあたらせる「道州」を置くというアプローチで議論が進められているのだが、なぜそういうアプローチでなければならないのかの理由が不自然なことに全く分からない。

 そして第三に、分権改革により地方自治体に「簡素で効率的な筋肉質の行財政システム」や「行政実務の処理スピードの迅速性」などを構築することが求められるのであれば、2層ないし3層構造の地方自治システムというのは非効率ではないかと感じる。

 これらの疑問点を踏まえて考えると、アプローチとして都道府県同士又は市区町村同士の合併によって進めるというやり方ではなく、普通地方公共団体の種類を一本化するというアプローチでの進め方というのを考えられないのだろうかと頭によぎったのがきっかけである。

 一種類にする流れの方向性として、最終的には都道府県と市区町村の合併という形を取れればと考えている。まず改正案が成立するのと同時に、総務省令で都道府県に対して新しく普通地方公共団体とする地域分割案の作成又は提出期限について通達する。

 それを受けて、都道府県は属している市区町村及び住民の意見や都道府県の支局の管轄地域などを勘案して郡とする地域分割案を作成し、国と構成市町村に提出する。この地域分割案の提出と同時に、地域分割案に基づき新しく普通地方公共団体とする地域を構成する地方自治体は、具体的な事務処理及び移行に関して協議をしていく。

 この場合に、事務処理に関して新しく普通地方公共団体とする地域を構成する地方自治体で広域連合を組織し(制度的にできれば、この広域連合で協議をしていくのが望ましいが)、協議の進展に応じて順次都道府県及び市区町村の行う事務・権限を広域連合に委譲させていき、政府も委譲に際して問題があればそれについて政令を出したり法律を改正したりするなどしてサポートしていく。

 そして協議が全国的に収束を見せたあたりから、全国一斉に一年程度準備期間を設けて実質的な業務を行わせ調整を行い、終了後に全国一斉に都道府県と市区町村の合併という形で本格移行とする。

 新しい普通地方公共団体で行う事務や税に関していえば、当然のことながら、それまで都道府県や市区町村(またそれらが加盟している組合や広域連合)でこれまでやってきた事務、施設等の管理、税源、その他の地域政策などについて一本化することになる(これに伴い地方自治法第二条第九項に定められている法定受諾事務について、第一号又は第二号という区別はなくす。)。

 さらに現在道州制の論議において言われている地方公共団体に対して委譲すべきとされている事務権限についても、この新しい普通地方公共団体でやっていくことにしていく。となると、当然ながら新しい普通地方公共団体で行う事務というのはむちゃくちゃ多くなり、住民の声が思うように届かない地方自治になってしまうのではないかという話になる。

 それについての解決策について、地域自治区の設置の義務化や広域的な行政・政策を行う場合の広域連合や一部事務組合の活用ということになるのだが、これについては改めて説明する。

 普通地方公共団体の種類を一つにすることでのメリットをいうと、「住所表記が簡単になる」「通常よりも迅速かつ的確な事務処理を行えるようにし、行政責任の所在を明確化させることができる」「通常の地方税の負担や地方公務員の人員を少なくしながらも、面積規模にしては充実した行政サービスを提供することができるようになる」「地方の税財政基盤を確立し、簡素で効率的な行財政システムを持つ自治体を新たに作ることができる」「衆議院の小選挙区編成がより地域に密着した柔軟なものにすることもでき、従来の都道府県境を越えた小選挙区編成が可能になる」といったことが挙げられる。つまり、従来の市町村合併に頼る方法よりも、「地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方」に則した理想的な普通地方公共団体ができると言えるだろう。

 最後に一本化した普通地方公共団体の規模について。先ほども書いたとおり、都道府県は属している市区町村及び住民の意見や都道府県の支局の管轄地域などを勘案して地域分割案を作成するのですが、基本として歴史的背景や地理的背景(役所には最低でも車で一時間で着く程度に)、人口などを考慮した上で一般的に生活広域圏とされている程度が適当ではないかと考えている。

 また、地方裁判所や警察署、消防署、法務局、ゴミ処理場や汚物処理場、職業安定所、各種実業高校、気象台、陸運局といった行政機関は新しい普通地方公共団体の中に最低一つはあるべきとも思うので、それらの運営に十分な財政基盤を作るのに有効な編成も必要とも考えるし、人口という観点からすれば衆議院の小選挙区と一つにするのもありと考える(特に大都市圏においては)。いずれにせよ、一本化した普通地方公共団体の規模は広域圏をベースにいろいろと議論が必要と考えております。

つづく