「宇宙基本法の監視を」 ―国民に訴える 世界平和アピール七人委員会 2008年8月27日 |
世界平和アピール七人委員会 委員 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了 宇宙基本法案が今年5月21日に国会で可決され、成立しました。 私たち世界平和アピール七人委員会は、昨年11月に、自民・公明両党の議員が提出した法案に対して「宇宙基本法案の再検討を求めるアピール」を発表しましたが、このたびの法律の成立過程および今後の運用について危惧の念を消すことができないので、宇宙開発戦略本部発足の機会に改めて国民の皆様に訴えたいと思います。 まず、この法案審議の異様さに注目したいと思います。昨年提出された自民・公明案は一度も審議されることなく、5月9日の衆議院内閣委員会において理由の説明がないまま撤回され、ただちに自民・公明・民主の三党案が提出されました。 そのまま2時間ほどで委員会審議が終了して可決され、4日後には衆議院本会議で一切の審議がないまま採決されました。 続く参議院の内閣委員会でも実質2時間ほどの審議だけで可決され、提出からわずか2週間で、参議院本会議で採決・成立という速さでした。 このように急ぐ理由は何も説明されず、私たちの意見を含めた国民の声にこたえ、現在と将来の国民に責任をもって決定する姿勢がまったく見られませんでした。 この法律は、これまで専ら平和利用に徹して「非軍事」を掲げてきた日本の宇宙開発を、軍事利用を目的としたものに衣替えしようという狙いが明白です。 具体的な例を挙げれば、日本の宇宙開発を進めている宇宙航空研究開発機構(JAXA)を規定する法律(宇宙航空研究開発機構法)の第4条には「平和目的に限る」と明記されていて、成立時の国会審議において、これは「非軍事」だと確認されてきました。 ところが、今回の参議院での審議の中で、「非侵略」と変更された機会に当然見直しが行なわれると提案者が明言したのです。「非軍事」の研究開発機関の存在自体を許さないという重大発言が、なんら深められることなく国会で認められている怖さを感じます。 基礎研究を無視した目的研究だけでは健全な開発を実現させることはできません。ましてや、他国並みの防衛力を求めることは、際限ない宇宙の軍事予算拡大を認めることにつながります。 防衛目的と攻撃目的は分けられるものでなく、防衛力強化は、攻撃力強化を誘発することは歴史が示しています。宇宙軍拡への道なのです。 私たちは、日本の産業の健全な発展を願うものですが、安全保障を軸とした研究開発への動員と軍需産業の拡大強化には同意できません。 今後、この基本法を基礎にして、具体的な運用のための法律が提案されることになっています。 私たちは、私たちを含めた国民が、「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」と書かれているこの基本法の運用方針をよく検証し、あくまで宇宙利用が平和憲法の原則から名実ともに外れることがないよう厳しく監視していくよう訴えます。 連絡先: 小沼通二(委員・事務局長) 247-14 横浜市栄区公田町200−9 ファクス:045−891−8386 メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp URL: http://worldpeace7.jp 世界平和アピール七人委員会 委員 武者小路公秀(国際政治、大阪経済法科大学教授) 土山秀夫(医学、長崎大学名誉教授) 大石芳野(写真家、東京工芸大学教授) 井上ひさし(劇作家) 池田香代子(ドイツ文学翻訳家、口承文芸研究家 ) 小沼通二(物理学、慶應義塾大学名誉教授) 池内了(宇宙物理学、総合研究大学院大学教授) 誕生と初代委員:1955年(昭和30年)11月11日 下中弥三郎(世界連邦建設同盟理事長) 植村環(日本YWCA会長) 茅誠司(日本学術会議会長、東大教授) 上代たの(日本婦人平和協会会長) 平塚らいてう(日本婦人団体連合会会長) 前田多門(ユネスコ日本委員会理事長) 湯川秀樹(京大基礎物理学研究所長) (これまでの委員(現委員も含む):28人) 七人委員会の立場と考え方 人道主義と平和主義に立つ不偏不党の立場 国際間の紛争は絶対に武力による解決を図るべきでない 日本国憲法の平和主義に立脚して活動 核兵器廃絶 これまでのアピール 53年間に国内外にアピールを93 世界連邦、国連改革・強化、グローバル・ガバナンス 8 日本国憲法、平和主義、紛争の非軍事的解決 28 核兵器、原子力 60 最近のアピール 2008 日本政府は米印原子力協定に反対を 2008 北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望 2007 宇宙基本法案の再検討を求めるアピール 2007 国民投票法案に対するアピール 2006 朝鮮民主主義人民共和国の核実験発表に対するアピール 2006 米国とインドの原子力協力推進についての要望書 2005 平和に生きる世界のために 2005 核不拡散条約再検討会議に際し、核軍縮への具体的努力を求めるアピール 2005 核兵器使用60周年にあたり、改めてその実態、非人道性を直視するよう日本国民と日本政府に訴える 七人委員会のホームページ http://worldpeace7.jp 連絡先:小沼通二(こぬまみちじ)委員・事務局長 ファクス:045-891-8386 メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp |