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公共工事の諸問題
その1 最近の低価格入札と
落札率について
〜予定価格の原点から考える〜

阿部 賢一

2006年6月22日


1.予定価格の公表

 予定価格については、予決令第79条に「契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等によって予定し、その予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。」と規定されている。

 国交省はじめ発注者側は、この規定を根拠として、長年にわたり予定価格を公表してこなかった。*


 *平成四年改訂版『官公庁契約精義』(建設綜合資料社)では、この規定を解釈して入札価格の秘匿性を強調している。

--「開札の際これを開札場所に置くのは、入札後これを公開の場所において開披して、落札価格を決定することによって、競争手続の公平化を確保しようとするものである。しかし、このことは、予定価格を公表することを意味するものではない」--223p

 「予定価格の秘密は厳格に保持されなければならない。

 --予定価格は、競争入札に先だって作成されるものであり、入札者が、これを探知することは、競争について有利な立場に立つことになり、また連合(談合)の資料とされるなどの弊害を生むことになるので、入札前は厳にこれがもれることを防がねばならない。

 予定価格は、開札後においても落札決定まで公開されるべきでないことは、いうまでもない。

 これは、開札後落札者がないため再度入札に付す場合、また、さらに公告して入札を実施する場合、あるいは、その予定価格の範囲内で随意契約をする必要がある場合もあって、それに備える必要があるからである。落札決定後において予定価格を公開することはどうか。

 この場合においても、予定価格を公開すると、その後における契約の履行及びその後のほかの競争入札の執行上弊害を伴うおそれもあるので、落札決定後においても予定価格は秘密にすべきであろう。」----251-252p

 発注者が長年にわたり秘密扱いにしてきた予定価格を公表へと進路を大転換したのは、予定価格の遺漏を巡る事件が発生するところから、その防止を図るためであった。予定価格を公表してしまえば、遺漏事件も起こらないということになる。さらに入札制度の「透明性の向上」に努めるという改革姿勢を示すことでもあった。

予定価格については、入札前後に公表されるように改善され、入札不調の場合も再入札は最大二回にするなどが計られるようになった。これで、予定価格を超える応札を無理やり二回目で終わらせることとなった。

 平成14年3月に出された『公共工事の入札契約のよりいっそうの適正化に向けて』(公共工事の入札契約の適正化徹底のための方策検討委員会報告)によれば、「透明性の向上」施策として、国交省所管特殊法人等(11法人)において、全体発注件数の1割程度を目途に試行し、その結果を検証するとしている。

 平成18年3月9日付国交省・総務省・財務省連名の『公共工事入札及び適正化の促進に関する法律に基く入札・契約手続に関する実態調査及び公共工事の品質確保の促進に関する施策の実施状況調査の結果について』*によると、下表の通りである。

 つづく

*財務省HP http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy180309a.htm
なお、平成14年3月31日現在でその第一回調査報告書が出されており、下記サイトに掲載されている。
 総務省HP http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/pdf/021031_6_1.pdf
 平成14年9月27日付『入札契約適正化法及び適正化指針の措置状況調査について』

 調査対象は、国18機関、特殊法人等133法人、地方公共団体47都道府県、14指定都市、2,225市区町村。調査時点は平成17年10月1日現在である。

表−1 予定価格等の公表実績

 

事前公表のみ

事前公表及び
事後公表の併用

事後公表のみ

公表予定

未公表

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

0

0

0

0

15

15

1

1

2

2

0.0%

0.0%

0.0%

0.0%

83.3%

83.3%

5.6%

5.6%

11.1%

11.1%

特殊法人等

0

0

11

10

16

111

5

2

5

10

0.0%

0.0%

29.7%

7.5%

43.3%

83.5%

13.5%

1.5%

13.5%

7.5%

地方
公共
団体

都道府県

21

28

21

13

5

6

0

0

0

0

44.7%

59.6%

44.7%

27.6%

10.6%

12.8%

0.0%

0.0%

0.0%

0.0%

指定都市

5

8

8

6

0

0

0

0

0

0

38.5%

57.1%

61.5%

42.9%

0.0%

0.0%

0.0%

0.0%

0.0%

0.0%

市区町村

808

705

600

498

723

528

178

81

833

413

25.7%

31.7%

19.1%

22.4%

23.0%

23.7%

5.7%

3.6%

26.5%

18.6%

小 計

834

741

629

517

728

534

178

81

833

413

26.0%

32.4%

19.7%

22.6%

22.7%

23.4%

5.6%

3.5%

26.0%

18.1%

834

741

640

527

759

660

184

84

840

425

25.6%

30.4%

19.7%

21.6%

23.3%

27.1%

5.6%

3.5%

25.8%

17.4%

表−2 予定価格の積算内訳の公表実績

 

公表済み
(本格実施)

公表済み
(試行実施)

公表予定

未公表

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

H16.3.31

H17.10.1

7

8

1

0

2

1

8

9

38.9%

44.4%

5.6%

0.0%

11.1%

5.6%

44.4%

50.0%

特殊法人等

22

83

1

7

2

4

12

39

59.5%

62.4%

2.7%

5.3%

5.4%

3.0%

32.4%

29.3%

地方
公共
団体

都道府県

25

29

5

4

1

2

16

12

53.2%

61.7%

10.6%

8.5%

2.1%

4.3%

34.1%

25.5%

指定都市

6

6

0

0

0

1

7

7

46.2%

42.9%

0.0%

0.0%

0.0%

7.1%

53.8%

50.0%

市区町村

102

102

46

26

209

107

2785

1990

3.2%

4.6%

1.5%

1.2%

6.7%

4.8%

88.6%

89.4%

小 計

133

137

51

30

210

110

2808

2009

4.1%

6.0%

1.6%

1.3%

6.6%

4.8%

87.7%

87.9%

162

228

53

37

214

115

2828

2057

5.0%

9.4%

1.6%

1.5%

6.6%

4.7%

86.8%

84.4%