仙台市松森工場全炉停止 高濃度ダイオキシン検出、3週間公表せず 〜市長公約、早くも破綻〜 青山貞一 掲載日:2005.6.9 |
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青山貞一ブログ版 仙台市泉区にある市の一般廃棄物清掃工場、松森清掃工場が試運転中に大事故をおこし、現在、3炉(200トン×3炉=600トン)すべてが運転を停止している。 元々、仙台市では、生ゴミを堆肥化することなどにより新規大型焼却炉の立地は不要となる可能性が検討された。しかも生ゴミ堆肥化プラントの技術経済性の第三者評価も、東京のゴミ関係のコンサルタントに仙台市が委託し、コンサルタントからそのプラント(高速堆肥プラント)はかなりの評価を得ていたようだ。 にもかかわらず、仙台市は突如、泉区松森の住宅地に隣接する土地に、住民らの激しい反対を押し切って、最終的に1日600トンの巨大な焼却炉を建設し試運転を強行したのである。 泉区松森の住民団体は、早期の段階から仙台市に松森清掃建設の白紙撤回を求めるとともに、仙台市に対し住民監査請求、宮城県に公害紛争調停を申請した。この辺の経緯は住民団体が作成した以下の表1を参照頂きたい。
2001年4月、住民側は私、青山貞一を公害調停の証人として仙台市側に要請する。同年4月30日、私は松森で講演会を実施した(表1最後の行参照)。 しかし、市側は住民側が選定した証人を拒否する。市長側が私が証人になることを拒否した理由は、「青山氏は国とメーカーの言うことを信用しないから」だったそうである。とんでもないこじつけである。私に言わせれば、過去、国民は国やメーカーを信用してどれだけ酷い目に遭ってきたかこそ、重要な問題である。 その後、住民側は、仙台市に出した監査請求が実質的に却下されたのを受け、行政訴訟(住民訴訟第一号訴訟)を仙台地裁に提起する。第一号訴訟は、周知のように差し止め訴訟である。が、仙台市は住民側と話し合っている最中は工事を強行しないという紳士協定を反故にし、基礎工事などに入った。原告側はやむなく第一号訴訟を第四号訴訟に切り替え裁判を続行した。 仙台市側は公害紛争調停で青山貞一が証人になることを拒否したものの、仙台地裁の行政訴訟では原告、被告どちらかの一存で証人を決まることはできず、最終的に裁判長が青山貞一を証人に認めた。私は仙台地裁で松森清掃工場の必要性、妥当性、正当性の3つの分野で証拠をあげ疑義を呈する証言を行った。私が行った証言、また提出した証拠は、別途示したい。 さて、松森清掃工場の焼却炉の型式はストーカー炉であり、三菱重工は仙台市が行った競争入札で落札した。が、その当初から私の友人の仙台市在住の全国市民オンブズマン連絡会議の弁護士らは、仙台市松森清掃工場の入札結果に疑義を呈していた。 当時、東京のコンサルタント会社で元衆議院議員秘書が取締役を務める業際都市開発研究所は、各地の公共工事受注工作をめぐって暗躍していた。徳島県知事がこの一件で最終的に逮捕され、県知事を辞職したのは有名な話だ。そのいわくつきの業際都市開発研究所の取締役の備忘録に、仙台の廃棄物焼却炉関係のメモがあったのだ。当時、東京地検も捜査を行ったようだが、その後ウヤムヤになっており、未だ疑惑は晴れていない。 業際都市開発研究所関係の詳細は、以下の記事を参照頂きたい。 ○東京新聞:入札時からつきまとう影 仙台のごみ処理ピンチ ○共同通信:仙台の公共工事でも暗躍 重機大手が報酬3億約束 ○共同通信:荏原など数社を捜索 業際研の脱税容疑に絡み ところで、仙台市長は、何と市議会などで松森清掃工場の排ガス中ダイオキシン濃度を国の規制値、0.1ng-TEQ/m3 ではなく、一桁低い 0.01ng-TEQ/m3 を遵守すると公言していた。 周知のように、国のダイオキシン類対策特別措置法では、焼却炉の排ガスは年に一度事業者側が測定業者を依頼、測定し、県に届け出ればよいことになっている。したがって、仮に事業者である市自身が年に一回行う排ガス測定結果が、仮に0.01ng-TEQ/m3を下回っていたとし、それが正しい値で会った場合でも、年間365日×24時間=8760時間のうちの数時間の値が0.01ng-TEQ/m3を下回っていたにすぎない。他の時間帯に0.01ng-TEQ/m3を上回ることは十分ありうる。 しかし、議会だけでなく裁判でも仙台市長再度は国の基準より一桁低い0.01ng-TEQ/m3以下を必ず守るので、問題ない、安全であると言い張ってきたのである。 今回の大事故は、試運転中に起きたものだ。ストーカー炉は日本中で最も多く使われており、実績ある一般廃棄物焼却炉だ。そのストーカー炉で事故が起きたところに大きな課題がある。 2005年6月8日の毎日新聞の記事によると、「1号炉は3月31日、『触媒反応塔』にたまった未燃ガスが異常燃焼したため緊急停止した。三菱側が4月上旬、煙道内部にたまった黒い物質をガーゼでふき取り、成分分析した結果、ダイオキシン濃度は1グラム当たり1・6ナノグラム(ナノは10億分の1)だった。」とある。 これは、1号炉の「触媒反応塔」にたまった未燃ガスが異常燃焼したため緊急停止させたあと、煙道内にたまった物質を測定したところ1.6ng-TEQ/gと言う高濃度のダイオキシンを検出したが、市役所は比較的問題が少ない2,3号炉のダイオキシン濃度測定結果を住民側に提供したものの、肝心な1号炉の高濃度ダイオキシン類のデータは約一ヶ月近く隠していたことになる。 なお、上記の2,3号炉の排ガスダイオキシン濃度は、トラブルが起こった後の4月7−9日に実施している。全炉が停止した状態での測定なので意味がない。 仙台市は、「この分析結果から、事故時の排ガス中のダイオキシン濃度は1立方メートル当たり0・232ナノグラムと推計。通常運転時の自主基準(同0・01ナノグラム)の23倍に当たるが、同局は「ばいじんも含めて大気環境中への影響を試算した結果、環境基準を下回っている」などと、勝手な解釈、言い訳に終始している。 しかし、上述のように藤井仙台市長は、議会、裁判のなかで排ガス濃度に関して0.01ng-TEQ/m3を遵守すると公言しているのであり、市役所の環境基準を下回っている云々と言う言い分はまったく問題のすり替えである。そもそも、1号炉のダイオキシン類濃度が、仮に市が推計した0・232ng-TEQ/m3が、自ら公約した0.01ng-TEQ/m3の23倍も上回る高濃度のダイオキシン類を環境中に放出していたことには変わりない。市長の公約に違反することは変わりない。 仙台市は、本件に関し、市のホームページで言い訳に終始しているが、現況再現のない正規プリュームモデルによる周辺地域への影響濃度予測結果などまったく意味がないことを知るべきである。そもそも、影響を受ける地域は小高い丘陵にあり、真っ平らを前提とする正規プリュームモデルは適用できない。 丘陵地等複雑地形への大気汚染モデルの適用に係わる課題については、環境アセスメント学会誌の最新号(2005年8月公刊予定)に私が理論、実務を含め論文を執筆している。ちなみに、青山は環境アセスメント学会の理事、編集委員である。 元来、ダイオキシンの大気環境基準は日本にしか存在していない。日本が敢えて環境基準を設定した理由は、1997年当時、世界の先進国主要都市の約10倍、スウェーデンの40〜50倍の高濃度であったわが国の都市部にあっては、何はともあれ暫定的に0.6pg-TEQ/m3と言う大気環境指針を設けざるを得なかったことにあり、先進諸外国の大気中ダイオキシンの水準は、おおむね日本の環境基準の1/10〜1/50の水準にある。また環境総合研究所が過去5年間継続している松葉を用いた大気中ダイオキシン調査でも九州地域などでは平均で0.0.1pg-TEQ/m3以下の水準にある。 最後に、藤井市長のひとつまえの石井仙台市長は、ゼネコン汚職で93年に逮捕・起訴されるなど、仙台、宮城の地は昔から官製談合など政官業の癒着構造、利権構造が大いに問題となる土地柄である。
今回の市長選には藤井市長は引退を表明し出ないらしいが、上記のように市議会、市民に大見得を切って国のダイオキシン濃度基準の1/10以下を公言したことにつき市長はどう責任をとるのだろうか? 同様に私に対する反対尋問のなかでも、仙台市は焼却炉排ガス濃度として、、0.0000000...と気の遠くなるほど多くゼロをつけた排ガス中ダイオキシンデータを示した。もちろんこれらのデータは、三菱重工業が提供したものだ。 三菱重工は、今回の一件についてどう釈明するのであろうか? いずれにしても、市民に0.01を公言したために、業者にバグフィルターだけでなく触媒塔まで付けさせダイオキシンを押し込めようとした策が完全に裏目に出たのが今回の事故である。
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