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大手新聞による市場支配を規制!?(4)
〜地方の現場でも問題山積〜

青山貞一


掲載日: 2006.5.31


 ここで重要なことは、次のことである。

 すなわち、表1でみたように、全国紙は読売、朝日、毎日、日経の主要4紙で2500万部を超えているが、日本全体の発行部数は、約5300万部あり、読売、朝日、毎日、日経の主要4紙以外の総部数が、2800万部程度あることだ。

 これは表1(以下に再掲)をみればわかるように、日本では、読売、朝日、毎日、日経の主要4大紙とは別に、地方紙が多数あると言うことを意味する。

 発行部数で見ると、欧米のクオリィティーペーパー級の発行部数をもつ地方紙がごまんとあるわけだ。

表1(再掲) 世界の主要新聞発行部数比較
新聞名 推定発行部数
出典1)
推定発行部数
出典2)
読売新聞 1016万部
10,044,990
朝日新聞 826万部
8,241,781
毎日新聞 394万部
3,931,178
日本経済新聞 296万部
2,820,347
中日新聞
2,747,683
サンケイ新聞
2,058,363
USAトゥデー() 167万部
北海道新聞 120万部
1,233,170
ニューヨークタイムズ() 107万部
西日本新聞
846,566
ワシントンポスト 78万部
静岡新聞
738,599
ザ・タイムズ() 73万部
中国新聞
721,174
東京新聞
613,099
10 神戸新聞 52万部
560,175
河北新報
505,437
京都新聞
503,506
新潟日報
498,743
信濃毎日新聞
476,966
11 ガーディアン() 39万部
12 ル・フィガロ() 38万部
13 ル・モンド() 37万部
14 ディー・ウェルト() 30万部

 事実、上の表1をみると、中日新聞が275万部、北海道新聞が123万部、西日本新聞が85万部など、欧米の著名新聞の発行部数を遙かに上回る部数を発行しているのである。

 ここでの問題は、読売、朝日、毎日、日経の主要4大紙以外のそれらいわば地方紙がどれだけ、「国民の知る権利」や「表現の自由」、さらには「民主主義を守る」ことに寄与しているかである。

 残念ながら、多くの地方紙のなかには地方の政治権力や産業企業にべったりと迎合したり、本来、都道府県民に知らせるべき重要なことを、意図的に知らせなかったりしているものが結構多い、と思える。

 これは日常的に人々が強く感じていることだろう。地方紙があるから多様で多元的な情報源が得られることにはなっていなおのである。

 しかも、地方紙が当該地方で60%〜80%のシェアを獲得することも珍しくない。たとえば、長野県に拠点を持つ信濃毎日新聞の場合、 2005年4月現在の県内発行部数は、 480,045部 世帯普及率は、 61.3% に及んでいる。(出典:日本ABC協会公表部数)

図1 信濃毎日新聞の世帯普及率から見た長野県内の市場占有率

出典:http://www.shinmai.co.jp/koukoku/

 図1に示した信濃毎日新聞の占有率データは、同新聞社の広告資料を転載したものである。広告局としてみれば、県内で世帯普及率で60%以上もとっていることを誇っているのだろう。

 しかし、県など、ある地方で特定新聞の市場占有率が60%を超えるような場合、ひとつ間違えば、まさに「国民の知る権利」や「表現の自由」、さらには「民主主義を守る」の逆のことが起こる可能性も否定できない。

 そこでは事実が隠蔽されたり、ねじ曲げられて伝えられたり、特定部分だけがえぐり出されて伝えられると言った危惧があるからら。また新聞協会の新聞倫理にもとるような取材が平然と行われているかも知れない。

 日本の新聞は常々「インテリがつくって、やくざが売る」と揶揄されてきたが、その実態は、新聞をつくる方にも、やくざまがいのひとがわんさかいるのが実感である。

 これについても、今後、筆者が経験した事実を報告できればと思っている。高い市場占有率をもった地方紙が、現場で何をしているか、およそ天下の公器などと言えない実態を報告したい。

 以上、日本の新聞メディアについて、その発行部数と全国及び地方の占有率(シェア)を数字で見るとともに、私見を簡単に述べてきた。

 いずれにしても今の日本では、新聞メディアについては、全国規模では寡占状態が、地方では独占に近い状態が現出している実態があり、「国民の知る権利」や「表現の自由」、さらには「民主主義を守る」の観点から見て決して健全な状態にあるとは言えない。