←エントランスへはここをクリック!           

落選運動を主導する

韓国のNPO「参与連帯」
(その1)

青山 貞一

政策学校「一新塾」代表理事
武蔵工業大学環境情報学部教授

掲載日:2005.3.6


 以下は、2005年2月17日〜20日、政策学校一新塾が行った韓国現地視察の一部として訪問した韓国の政治NPO、「参与連帯」の紹介である。

 
※一新塾:政策学校、非営利活動法人一新塾の略。
        大前研一氏が設立、政策コースと起業コースの2コースがある。
        現在、青山貞一、森嶋信夫の2名が代表理事。
        青山は政策コースを担当している。


 今や世界的に有名となった韓国の落選運動を主導するのが「参与連帯」。

 参与連帯は1994年に発足、2005年ですでに11年の歴史がある。設立目的は、@国会、司法、行政の監視、A社会的弱者への援助、B朝鮮半島の平和に関する研究等である。

 その「参与連帯」だが、組織としては専門団体ではなく、市民とともに運動していく総合的市民運動という形態で運動している。

 参与連帯は、現在、8つの活動機構をもっている。権力を監視する部署、司法を監視する部署、行政監視をしている明るい社会を作る部署、主に朝鮮半島の平和や統一について活動している平和構築部などである。

 「参与連帯」は、企業、政府から一切金銭的支援を得ていない純粋な市民運動として活動している。1万3500名の会員がいる。月に会員一人、500円から1000円の会費を出して組織運営をし、会員には、100人の弁護士、300人の大学教授、50名の一般活動家も参加している。

参与連帯本部にて 参与連帯事務所、若い人が多い

 2002年と2004年は落選運動を行った。国会議員を落選させる運動として、世界的に認められた。

 韓国の政治は、腐敗などが多い政治構造である。「参与連帯」は、15代国会が始まると同時に国政監査の運動を始めた。国政監査というのは、国会が持っている機能で、行政部を監視するシステムである。参与連帯をはじめ他の市民団体は、国政監査が行政を監視する上で、うまく機能しているか監視している。

 1999年に40の市民団体が、国政監視に関し、抗議なり、問題提起をして、その後具体的に監視活動を始め、国会が行政をどのように監視しているか追求している。実際は、国会が行政をどのように監視しているか公開しない場合が多いので、それに対して抗議をし、どのように公開してほしいか要請している。

 2001年それではだめだということで、国政監視がもっと具体的に強制力を持つように国会に要請している。国政監視をすべき国会が機能しないと言うことを遺憾に思い、国会議員であっても腐敗している人、選挙違反をしている人などの過去のデータを調べ、そういう人たちは落選させなければならないという運動から私たちの運動は始まった。

 「参与連帯」は、選挙の前に党推薦にふさわしくない人物を調査し、推薦の段階でその人物が悪いか良いかを監視している。

 「参与連帯」の推薦にふさわしくない人物は、@腐敗した政治家、A選挙違反した政治家、B人権を軽視する人、C議会活動、政治活動に不誠実な人である。この4点を基準にして、候補者について公にアピールしている。

 「参与連帯」は、本選挙でも同じ監視体制と取って、党が推薦しても、我々の趣旨に合わない人物は、落選運動の対象としている。ちなみに2000年の国政選挙では、参与連帯が86人を逆推薦し、そのうち59人が落選した。2004年選挙でも高確率で、落選運動を成功させた。市民運動の力は、これを契機にすごく伸びた。

 現在の韓国国会は、299名中、70人が新人議員である。政治制度改革もその時期に起こった。落選運動に次にくるのは、政治制度改革である。参与連帯は、政治制度改革も行っている。2003年頃から市民団体は、政治関係法という法律を制定させようとしているが、それは国会議員だけが作るものではなく、市民全体が作る物だと主張し、国会に対して運動をしている。

 政治資金制度、政治制度改革というのは、国会でつくるものではあるが、国民とともにつくるべきと考えており、国会に対してともに作ろうという運動をしている。その結果として、国会でも議長の下、政治制度改革、政治資金制度などの法制度をつくるための委員会が発足した。その委員会の中に政治資金に関する委員会があり、そこで企業から一切の金を出させない法律を通過させることができた。

 国民からの寄付についても10万円(100万ウォン)以上をもらった人は公開するという制度も設けさせた。選挙制度改革として、比例代表選出の議員を増やすことにも成功した。その結果、民主労働党が2004年の選挙で、比例で10議席を得ることができた。

 「参与連帯」が、今、特に力を入れているのは、国会を改革することである。その目的は国会が国民の代表として、生産的な議論が盛んになるようにすることである。


その2へ