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新しい歴史教科書!?

青山貞一

掲載日:2005.4.29


 私が20人引き連れて韓国のソウルに出かけた※のは2月、その後、竹島問題がトリガーとなって韓国で「反日デモ」が吹き荒れた。さらに、4月に入って中国で学生等が中心となり激しい「反日デモ」が吹き荒れている。

 ※韓国公共政策現地視察

 何んで、これほどまで韓国や中国に嫌われているのか、分かるようで分からない部分もある。

 いずれにしてもこのまま行けば、日本政府が目指す「国連常任理事国入り」はダメとなるだろう。

 今回、韓国、中国の怒り原因のひとつは、いうまでもなく日本の歴史認識である。なかでもいわゆる「新しい歴史教科書」が4年に1度の文部科学省による教科書検定に合格したことがあるようだ。

新しい歴史教科書、公民教科書の表紙

 これらの新しい歴史あるいは公民の教科書は、今までの教科書に代わる教科書をつくろうとを、1997年に「新しい歴史教科書をつくる会」が結成され、つくられた中学教科書を意味する。

 過去を振り返ると、2001年に文部省の検定をはじめて通過、今回が2度目の検定であった。

 実は今回検定を通過した教科書については、日本の歴史学者ら62人がこの4月25日、「歴史の事実をゆがめる『教科書』に歴史教育をゆだねることはできない」と緊急声明を出した。彼らは、この教科書は「都合よく歴史を解釈している」と言っている。

 まず第一に、この教科書は、古代から現代まで近隣のアジア諸国の感情を逆撫でするような歴史観」で貫かれていると言ってもよい。たとえば、現在日本社会で実在しなかったことが明白とされている神武天皇の東征伝承を持ち出している。これに限らず史実を無視したり、ねじ曲げるような記述が多いという。

 さらに、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが主張する部分と近隣アジア諸国が主張する部分のうち、どちらかと言えば、「新しい歴史教科書をつくる会」が主張する部分を強調していることも指摘されている。

 たとえば有名な「731部隊」、「朝鮮半島での同化政策」、「慰安婦」、「日本統治下での韓国人による独立運動」など近隣諸国が石に刻んでいるような史実に教科書は、いわば目をそらしていると言う。

 実際、「南京虐殺」「日中戦争」「韓国併合」など中国、韓国のひとびとがもっとも重視する史実についても、たとえば「韓国併合」は日本の安全と満州の権益を防衛するために必要であったなど、当時の日本政府の主張が一方的に記述されている。さらに、「韓国併合」に対する朝鮮半島での抵抗運動、独立運動にはほとんど触れていない。また、「強制連行」についても連れてこられたなどの表現となっている。
 
 私の研究室には中国、韓国から留学してきている大学生、大学院生が多数いるが、彼らと常日頃議論している身としては、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書、公民教科書は、到底受け入れないと思える。

 もちろん、いろいろな教科書があることは否定しないが、甚大な人的被害を与えた側に立ち、それを合理化、正当化するような記述が目立つ本教科書は、ことさら近隣アジア諸国の反感を買い、感情を逆撫でするだけで、日本政府が目指す「国連常任理事国入り」など、到底無理と言わざるを得ない。