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佐賀地方裁判所 諫早干拓仮処分
差し止め決定を維持
弁護団声明

 掲載日:2005.1.12

―声明―

国はこれまでの態度を根本的に改め諫干をタブー視しない真の有明海再生に今こそ踏み出すべきである

2005年1月12日
よみがえれ!有明海訴訟弁護団

 本日,佐賀地裁は,有明海漁民106名の申請にかかる国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業)差止の仮処分事件において,「漁業被害を将来的に防ぐための第一歩としては工事の差止め以外に他の有効な代替手段も見当たらず,その意味で差止めが被申立人(債権者)らが採り得る現時点で唯一の最終的な手段と思料される」,「一連の本件事業による漁業被害の継続の可能性はこれを否定できない」,「本件事業の中止によって生じる損失額が前者(漁業被害)を上回ると軽々に断定することは相当でない」と述べ,昨年8月26日の工事続行禁止の仮処分命令に対する国の保全異議を退け,同仮処分命令を認可する決定をするとともに,国が申し立てた執行停止の申立を却下した。
 本件干拓事業の工事続行禁止を命じた昨年8月26日の仮処分命令は,漁民の被害を直視し,漁民の申請を全面的に受け入れて,本件干拓事業と有明海異変・漁業被害の法的因果関係を明確に認定し,事業を厳しく断罪した。
 進行中の大規模公共事業を工事の終了間際で差し止めるという前例のない仮処分命令は,被害に苦しむ漁民はもとより,広範な内外の世論からも歓迎され,周辺自治体の議会では支持と共感の決議がなされるという,これまた前例のない事態までもが生じた。
 それはとりもなおさず,みずから設置したノリ第3者委員会が提言した中・長期開門調査をサボタージュし,深刻な被害に苦しむ漁民を置去りにして,本件干拓事業と漁業被害の関係を曖昧にしてしまおうとする,国の身勝手で醜悪な対応に対する広範な国民の不快感のあらわれに他ならない。
 本来なら,かつてない歴史的な仮処分命令という司法の判断の重みをしっかりと受け止め,国は,それまでの態度を猛省して,ただちに本件干拓事業を中止し,そのうえで,排水門を開門して,本件干拓事業の悪影響を取り除くことを主眼とした有明海の真の再生に,早急に,着手すべきであった。
 しかるに国は,仮処分命令をまともに検討もしないまま,早々に保全異議を出し,その後も,本件干拓事業をタブー視した有明海再生事業なるものを計画し,実行しようとしている。しかし,有明海異変と漁業被害の原因に目を閉ざしたままでは,真の有明海再生は期待しえない。
 本日の2つ決定は,ふたたび国のこうした対応が全く道理のないものであることを明らかにした。
 今度こそ国は,司法の判断の重みを真摯に受け止め,本件干拓事業の中止と排水門の開放,本件干拓事業の影響を取り除くという観点を中心に据えた真の有明海再生に踏み出すべく,歴史的な仮処分決定にふさわしい歴史的英断をなすべきである。
 以 上
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