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解せない日本政府の対応
青山 貞一

掲載日:2004.11.5


 香田証生さんのイラクでの拉致そして殺害との関連でアルカイダ系の実行犯とおぼしき者の犯行声明中に日本政府が数100万ドル(日本円で数億円規模)の身代金の取引申し出があったと言う下りがあった。

 11月3日夜、テレビ朝日スクランブルの取材クルーから上記についての取材があった。

  テレビ朝日:
2004年11月4日12:35
  番組:スクランブル特報サイトの青山インタビュー部分



 私自身、日本政府がアルカイダ系実行犯との間で身代金の取引をしたかどうかについての証拠など持ち合わせもない。しかし、

 @今回は実行者が今井君らの場合と異なりアルカイダ
   系組織であれば、二転三転などブレそうもないこと、
 A時間が極めて限られていること、
 B小泉首相が拉致後、きわめて早期段階で、相手の申し
   出である自衛隊の撤退を拒否したこと、
 C聖職者など第三者を介しての交渉が極めて困難なこと
   などを考え合わせると、

次のような仮説が成り立つのではないかと考えた。すなわち、

 @日本政府は、このままほっておくと、間違いなく香田
   さんは殺されること、
 Aこの場合、日本政府として唯一考えそうなことは、首
   相官邸及び外務省の例の機密費等を使い、
 Bイラク政府関係者らを通じバクダッド及びその周辺で
   身代金話を流布し、
 Cそれに相手が引っかかってくることを期待してもおか
   しくないことだ。

 もちろん、「身代金」については、今までのところ犯行声明のなかでアルカイダ系実行犯が言明しているだけで、何ら確たる証拠はない。

 一昨日、中東にいる谷川外務副大臣は、香田さん遺体の日本への搬出に先立ち、空港での記者団の取材で、記者団が何も言う前に、「日本政府は身代金の取引などしていない!」といきなり声をあらだてたそうだ。周知のように、

 @首相官邸及び外務省の機密費、報償費等の有無及び
   内容は、外交機密とされ、
 A国の情報公開法の適用除外となる可能性が高い(実際、
   今のところ過去の情報も出ていない)。

 ところで、多くの日本人は、米国に追随するあまり、日本人の保護を一義とせず、いち早く「自衛隊は撤退しない」と言明した小泉首相に怒りを感じている。

 と同時に、もし、日本政府が直接、間接を問わず「身代金」交渉をしていたとすれば、小泉首相の言う「テロに屈しない」はウソになる。

 そうはいっても、おそらく多くの日本人は日本政府が「身代金」を使ってでも香田さんを救出することを指弾することはなかったはずだ。

 結局、香田さん救出の失敗は、小泉首相がいち早く「自衛隊は撤退しない」と言明したことでアルカイダ系実行犯を激怒させ、日本政府の「身代金」交渉がタイミングを逸したことではないかと考える。

 そもそも、この12月14日に期限が切れるイラク特措法にもとづく陸上自衛隊のイラク派遣との関連を活用してでも、香田さんを救出する上での政府の「方便」はありえたのではないか、と思う。

 ぜひ、小泉首相には殺害ビデオを見ていただきたいものである。

 その後、外務省を取材している某大新聞の関係者から、日本政府の「身代金」関与についてほぼ間違いないと言う情報を得た。