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参議院議員選挙結果をどう読む  その4
青山貞一

掲載日:2004.7.12〜7.20

二大政党化への大きな流れと小規模専門政党の壊滅
 
 ところで、今回の参院選挙結果を見ると、昨秋の衆院選挙以降、二大政党化に急速に移行していることが分かる。当然これには賛否両論がある。

 二大政党化の流れのなかで顕著なのは、社民党、共産党など既存野党の著しい衰退である。「自社さ」によって自民中心の政権に入った社会党→社民党やさきがけが衰退するのは、やむを得ないとしても、中村敦夫氏による「みどりの会議」など、「個別専門店的な少数政党」の出番がまったくなくなってしまったことは、氏が果たしてきた大きな役割を知る者にとって、きわめて遺憾なことである。

 ちなみに、あまたある政党の中で経済成長至上主義を真っ向から批判しているのは、中村敦夫氏のみどりの会議だけである。自民党から共産党まで、いずれも経済成長を真っ向から批判している政党はいない。中村氏は、地球規模で各国が持続的に生きながらえるためには、先進国はゼロ成長なりマイナス成長とすべし、と言うローマクラブの「成長の限界」人類の危機報告に類する理念、政策を掲げてきた。

 この理念、政策が国民の多数に理解されるのは容易ではない。しかし、中長期的にみた場合、間違いなくエネルギー、資源の枯渇、食料供給の限界、環境悪化、人口増加などによる非可逆的な制約の増加によって、先進国の成長は鈍化せざるを得ず、多くの途上国の経済は壊滅的にならざるを得ないと思う。

 仮に今の日本にあっては、「理念政党」であったとしても、「みどりの会議」のような政党が存在することは日本そして世界の将来にとってきわめて意義あるものと思える。生活レベルを今から低くすることを世に問うたみどりの会議の存在は歴史に残るであろう。

 選挙前から想定された、これら少数政党の凋落、崩壊への対案として、筆者は中村敦夫氏や福島瑞穂氏ら、優れた人材、政治家に、一旦、民主党のなかに自分の場を移し、そのなかで専門店としての環境政策(中村敦夫氏のみどりの会議)や平和・エネルギー政策(福島瑞穂氏)にに特化した役割をもつことを期待した。だが、それぞれ固有の理由から独自のスタンスで参議院議員選挙に臨んだのである。

 ※ 中村敦夫氏は、国民年金の未納を早期段階で告白したが、
    「未納」が争点となった本選挙では、これもマイナス要因と
    なった可能性がある。


 中村敦夫氏や福島瑞穂氏だけでなく、市民団体、NPOなどは、現行の選挙制度を厳しく批判する。選挙制度が専門小規模政党に圧倒的な不利であることはまぎれもなく事実である。しかし、課題は多々あるものの、民主党(自民党の代替政党)のなかで、専門性を活かした、いわば自分たちの存在感を示すことも重要だと思う。

 その意味でも、今後は自民党との理念、政策上の対立軸を明確にした政党に民主党が脱皮することが不可欠である。同時に、欧州における「みどりの党」に類する小規模専門政党が許容される政治制度と政党構造がのぞまれる。
  
とはいえ民主党に期待せざるを得ない状況?....

 とはいえ、戦後、半世紀以上にわたり自民党が政権に着き、ごく一部の時期以外、本格的な政権交代がなかったこの国を、このままで良いする有権者はおそらくいない。

 既得権益や利権にがんじがらめとなっている「政官業」の日本を根底から変革するためには、ブレのない理念と、具体的な政策提案能力、それに説明責任とディベート能力をもつ議員の育成が不可欠である。とくににわか仕込みの民主党にこのことが言えると思う。

 要約的に言えば、民主党を第二自民党と批判、揶揄することは簡単である。しかし、その結果、与党に漁夫の利を得させていたのでは何にもならない。

 そう考えると、仮に現状で民主党が第二自民党的な存在であっても、私たちがそれを変えてゆくことが問われている。ひとことで言えば、日本国民の「観客民主主義」からの脱皮である。

 幸い、毒にも薬にもなってきた辣腕、小沢一郎氏が率いる自由党が昨年秋以来、民主党に合流した。若手や松下政経塾、それに労組中心の民主党に小沢氏らが参加したことにより、良い意味での理念、政策原理主義が活かされることも期待できるだろう。
 
 また反戦、非戦を掲げる沖縄出身の歌手、喜納昌吉氏が民主党の比例で当選した。喜納さんが今後、民主党内でどう活躍できるか、これはひとつのリトマス試験紙かも知れない。

難題山積の21世紀にどう立ち向かうか

 いずれにしても、難題山積の21世紀にあって、既得権益、利権にまみれた自民党を中心とした与党が瓦解することは間違いない。同時に、完全瓦解以前に、小泉首相がここ数年で一気に行ってきた国家主義化→憲法改正→軍国主義化への大きな流れをどう食い止めるかが大きな課題となる。教育基本法の改正も同様に重要な課題となるだろう。

 さらに700兆円を超えた累積債務や無責任きわまりない年金、社会保険制度をどう再構築するか、地方分権、道州制と言われながら、一向に中央集権が是正されず、依然として国庫補助や地方交付金におんぶにだっことなっている地方自治体や地方議会。

 これらの大きな課題に、にわかじこみの民主党が今後これらの重要な政策課題にどう応えるのかが問われる。私たち国民も、「観客民主主義」から脱皮し、主体的市民としてこれらの重要課題に立ち向かわねばなるまい。