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全国知事会
国の行財政改革評価研究会:傍聴記
座長:田中康夫長野県知事)

青山貞一
武蔵工業大学大学院
環境情報学研究科教授
(公共政策論、環境政策論)


 掲載日:2005.4.22


国会議員を呼んだ座談会での田中康夫知事:全国知事会で

 ●全国知事会 「国の行財政改革評価研究会」 全音声ファイル
 
 上記をクリックすると、知事会研究会の討議の全容が聞けます。 
   形式は、mp3。容量は約10MBあります。
   註:青山が10分ほど遅れて参加したため冒頭部分が欠けております。



 2005年4月21日、東京都千代田区の都道府県会館3階にある全国知事会会議室にて、午後4時30分から午後6時15分まで、全国知事会主催による「国の行財政改革評価研究会」が開催された。

 本研究会は、田中康夫長野県知事が座長を務める全国知事会の一研究会。他の構成員は宮城県知事と宮崎県知事。なお、昨日は、田中康夫知事と浅野史郎知事が出席、宮崎県知事は代理の三宅善彦副知事が参加した。

 研究会では、この間、同研究会が平成17年3月にとりまとめた「国の行財政改革評価研究会・最終報告書」をもとに、2名の国会議員を交え、最終報告書にある主要なポイントを座談会の形式で議論していた。

 研究会に招聘された2名の国会議員はいずれも現役の参議院議員。ひとりは、林 芳正参議院議員(自民党:山口県)、もうひとりは松井孝治参議院議員(民主党:京都府)である。

 青山は大学で公共政策論を担当しており、国の行財政改革及びその評価も主要な関心事である。とくに今回は、都道府県の側から国の行財政改革をどう評価しているのかを議論している点で大いに関心があった。そんなこともあり、急遽、大学から研究会にでかけ傍聴した。

 さらに言えば、この研究会は行財政改革で全国の先頭を走っている田中康夫知事が座長を務めていること、座談会に呼ばれた2名の参議院議員のうち、松井議員とは地方自治法一部改正による住民訴訟制度の改悪が総務相により画策された際、友人の政策研究大学院大学の福井秀夫教授と一緒にたたかってきたこと、さらに林議員は直接は存じないものの、官邸サイドによる行政事件訴訟法改革に福井教授と一緒にここ数年係わってきたが、林議員は自民党の若手有力議員として同改革に非常に熱心であり注目していたこと。そんなことも今回の傍聴の背景にあった。

 4月21日午後の研究会の座談会では、以下の国の行財政改革の項目のうち、とくに(1)情報公開及び総額人件費の抑制について2時間ちょっと議論された。いずれも重要なテーマである。

 (1)情報公開のあり方
 (2)入札制度の改革
 (3)総額人件費の抑制
 (4)国関係法人の見直し
 (5)その他
 (6)国の行政改革・財政改革が進まない要因

 議論の前提となった最終報告など配付資料(巻末参照)は、後日、PDF形式で提供したい。


 ところで、上記の(1)〜(6)の項目は、いずれも国に先駆け長野県、宮城県などの知事が力を入れ改革を断行してきた分野だ。そんなこともあり議論がかなり盛り上がりラディカルな提案もあった。

 一番目の議題、国の情報公開法は現在、改正のための審議をしているところろだが、この分野では都道府県や政令指定都市の方が、制度、実体両面で国に先行していると言ってよい。

 傍聴していてもっとも興味深かったのは、座長でもある田中康夫知事が、フランスのフーリエ主義に触れるなかで、今や第四の権力たるマスメディアの情報公開に言及した点だ。知事は、昨今のマスメディアに関連する事件、不祥事などとの関連で情報公開を国、自治体に厳しく迫る大新聞などマスメディア自らが、何らまともな情報公開そして説明責任を果たしていないことを強調した。まさにその通りである。

 国、自治体の情報公開には多くの課題は残るものの、一昔前に比べれば制度、実態両面で長足の進歩をとげてきた。司法、立法も遅ればせながら、情報公開の必要性を認識し、それなりの対応をしてきたと言える。

 しかし、今や日本社会において第四の権力と化している大新聞、テレビなどのマスメディアが、一方で他人に厳しく情報公開を迫りながら、他方で自らはほっかむりしているのが実態、現実では無かろうか。刑法に言う、「職務強要」スレスレのことを日常的にしている地方紙の記者もいる。

 ごく最近の例だけを見ても、NHKチーフフロヂューサーらによる一連の制作費等の詐取事件、中国慰安婦問題をめぐるNHKの特集番組への国会議員による事前検閲問題に関するNHKと朝日新聞の係争、朝日新聞がサラ金業者、武富士から5000万円超の金をもらってとぼけていた事件など、どうみても社会の木鐸であるべきマスメディアが司法、行政、立法の3権力と比べ、まったく情報公開、説明責任を果たしていない。

 座談会の情報公開の議論の多く時間は、意思形成過程の情報公開についてなされた。

 私自身、国、自治体を問わずこの意思形成過程における情報公開のあり方を行政訴訟など司法面を含め、過去大いに議論に参加してきた。たとえば、私が代表幹事を務めているNPO/NGO環境行政改革フォーラムでは、国の情報公開法制定過程で情報公開の専門家でもある読売新聞解説委員の鶴岡憲二氏らとともに、衆参議員と議員会館で徹底議論を行ってきたし、現在も行っている。

 そんなこともあり、現役知事と現役国会議員、しかも厚生省出身の浅野議員、通産省出身の松井議員らがこの問題をどうとらえているのか、大いに関心があった。

 一方、「総額人件費の抑制」では、全国で唯一、自治労などの組合と徹底議論し、一般職員を含め10%の給与削減を実現しているのが長野県であり、田中康夫座長からその経過、背景などの説明があった。また国会議員からは、民間であればとっくに会社が倒産しているような状況のなかで、各種法律に基づく労働4権で固く身分が守られている国、自治体の一般公務員のあり方についての提案もなされた。

 もっぱら、この分野でも、長野県は地方自治法改正による4年の任期付き任用や非常勤特別職の任用を行っている。長野県はいわばポリティカル・アポインティーの先鞭を付けている。

 最後に、浅野知事から自分が霞ヶ関にいたときの経験を含め、国の役人の規律の乱れ、とくに出勤が遅いのが常態化していることに、厳しい批判がなされた。これは一見些末な指摘に思われるが、官僚等は自分たちが天下国家を考えて仕事をしているのだから、就業規則など関係ないと言う一種の思い上がりがあり、結果として深夜までズルズルダラダラと役所にいて非常に効率が悪い仕事となっている現実を辛辣に指摘したものだ。

 私も30年近く、霞ヶ関の官僚と政策立案、法案準備などでシンクタンク、コンサルタントとして付き合ってきたが、浅野知事の指摘に限らず規律と言うことだけをとればトンデモ役人は結構多い。。ちなみに午前2時過ぎに霞ヶ関のの役人とある審議会提出資料についての打ち合わせをしたことがあるが、そのとき課には何と、10名以上キャリアーが残っていた。そのひとりは、人前でズボンをジャーz−にはきかえ、これから虎ノ門までジョギングしに行くくると言っていた。またパソコンでゲームをしているものもいる。この人たちは何を考えているのかと、思われる奇異あるいは常軌を逸した行動を散見した。

 もっぱら、とはいえ、国、地方を問わず「休まず、遅れず、働かず」の宦官勢力が増えては最悪である(苦笑)。

 2時間の議論を傍聴し、強く感じたことは、やはり現場でしっかり働いているひとびとは、机上の空論ではなく、また単なる「手続民主主義」に徹することなく、国、自治体にではなく、国民にとって何が大切かを見据えていることだ。

 これは地元マスメディアの理不尽な攻撃にさらされながら、県民の目線にたって仕事をしている田中康夫長野知事についてとくに妥当すると思う。

 その意味で、ほとんど国民、県民などの目に触れないこの種の研究会を今後とも、積極的に傍聴し、私なりに報告できればと思う。 

◆配付全資料名:
(1)国の行財政改革評価研究会 最終報告のポイント
(2)国の行財政改革評価研究会 最終報告書
(3)国の行財政改革評価研究会・座談会出席者名簿
(4)国の行財政改革評価研究会 構成員名簿
(5)国の行財政改革評価研究会・座談会 次第