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郵政民営化で得するのは誰か

〜民営化法案が衆院を通れば300兆円超
の資金が再分配されるであろう〜

(抄訳)

AGNES T. CRANE
ウォールストリートジャーナル紙
2005年8月26日
 
掲載日2005.9.12

原題:Who Gains From a Japan Post Split?
    If Privatization PlanClears,About $3 Trillion in Assets
    Would Get Redistributed?

 日本の巨大な郵貯の民営化には、多くの政治的な障害があろうが、300兆円を超える資産のうち、いくらが米国債、EU債などの外債に再配分されるかについて、すでに金融アナリストが計算をはじめている。

 日本の郵貯は、郵便だけではない。200兆円規模の資産を持つ郵貯が、単独分割されれば、日本一大きな銀行となる。また、簡保は120兆円規模の資産を持つ。シティグループのアナリストたちによれば、もし、郵貯と簡保が民営化されれば、これらの資金のかなりの部分が、他の市場に流出するであろうと予測している。

 郵貯の資産分配を民間のそれと比較すると、もし郵貯の民営化が実現した場合、シティグループの試算では、米国債、ユーロ債、日本株、外国株に資金が流れ「勝ち組」になるるという。一方「負け組」になるのは、これまで日本の国債・政府保証債を郵貯が買ってきたことで利益を得てきた日本債券市場であろう、とされる。

 ロンドンの INGファイナンシャル・マーケットのエコノミストのロブ・カーネル氏によれば、日本の郵貯と簡保は、これまでに日本の国債を約190兆円を保持している。これは、現在の発行済み国債の四分の一を占める額である。一方、これら日本の郵貯と簡保は外国証券にはわずか8.5兆円しか投資していない。

 10年もの日本国債の利回りは、1.5パーセント未満である。他方、10年もの米国債の利回りは4.17パーセントであるのと対照的である。民営化後の郵貯と簡保の新たなオーナが、よりよい収益を得るためにこれを見直すかを推測するのは、それほど困難ではない。

 シティグループは、郵政民営化によって運用資産オーナーが変わることによって、約150兆円が、日本の債券運用から引き上げられるものとみている。これには、日本国債、地方債、社債が含まれる。と同時に、民営化後は、ビジネスの先をあらゆる方面に写し、より有利な投資先と顧客先を探すであろう。

 アナリストの見積によると、1270億ドルは米国債、640億ドルはヨーロッパの確定利付き債、そして桁外れ多い5210億ドルが日本の普通株に行くと見ている。これらは、非常に大きな数字であるが、配分の変更は10年間に渡り行われるので、金融市場に与えるインパクトは、緩慢なものとなる。

 検討中の案によれば、郵貯の民営化は、郵便システムを郵便業務、窓口サービス業務、郵貯業務、簡保業務の4つの業務に分割するもので、その開始は2007年となる。また貯金・簡保は2017年までは、完全民営化されない。

 カーネル氏は、「これは、マーケットの心理の背後にある、もろもろの要因のひとつである。」とは言うが、近い将来、巨大な流れとなることは間違いない。これらの事態に至る前に、日本の小泉首相は、国会議員にこの民営化法案を可決してもらわなければならない。小泉首相は、9月11日の選挙で、何らかの変化が生じることを望んでいる。8月上旬には、小泉自民党に造反者が出て民営化法案を否決してしまった。これに対応し小泉首相は、衆議院を解散し、抜き打ち選挙を挙行、これにより小泉首相にとって新たな衆議院の議員構成が、改革に望ましくなることを望んでいる。

 ニューヨークのユーラシア・グループの政治リスク・コンサルタント、ロス・シャップ氏は、「小泉連立内閣は絶対多数を維持する公算がある」と。今までのところ有権者は、この方向に傾いているように見える。もし小泉首相のカケが報われれば、この15年間、日本の成長を阻害しているとアナリストたちが非難してきた、日本国家の硬直性を軟化させる方向に向かわせる重要な第一歩を踏み出すことになるであろう。

 「このことで市場には何らかの反応があるであろう。」として、投資家たちが、高成長率を予測して、日本国債を売る動きを見せるであろうとカーネル氏は暗示した。