耐震偽装と「瑕疵担保責任」 その1 瑕疵担保責任とは 青山貞一 掲載日2005年12月23日 |
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姉歯一級建築士(現在登録抹消)が建築確認用の耐震計算を偽造していたことが明るみに出た初期の段階で、不動産関係の事務所に勤めている息子がテレビのニュースを見ながらこうつぶやいた。 「お父さんマンションを買って住んでいる住民は売り主に対して瑕疵担保責任を追求できるよね」と。息子は現在、不動産関係の会社に勤務しながら宅建の国家資格取得のための勉強をしている。26歳だ。 今回の大事件に遭遇した住人は、当初、この瑕疵担保責任を想定したことだろう。 後述するように、マンションなど建築物の購入に際し、売買契約の内容にもよるが、買主はこのような問題が見つかったとき、売主に損害賠償の請求ができる。平成12年4月1日以降に契約した新築住宅には、売主あるいは、請負人に主要構造部分の10年保証が義務付けられている。 マンション、戸建ての別なく、マイホームを建てるあるいは購入することは、間違いなく人生の最大の事業となる。その大事業で、建築したあるいは購入した建物に致命的な不具合が見つかったとしたらどうするか? 仮に相当慎重に物件をチェックしたとしても、建築物件あるいは購入物件に欠陥や不具合はありうる。 このような場合、買主は売主に対して瑕疵担保責任を請求(追求)することが可能である。
以上が瑕疵担保責任の説明だが、実際の売買では、売買契約書の中で売主の瑕疵担保責任を免除したり、責任追及できる期間を短縮していることもあるので要注意である。たとえば、新規物件でなく、中古物件の場合どうか? 中古物件の場合、売主の瑕疵担保責任が契約で免除されていることもある。そのような場合には中古物件に瑕疵があっても売主に瑕疵担保責任の請求をすることが困難さらにできないこともある。それゆえ中古物件の場合には購入前に物件をよくチェックする必要がある。また中古物件購入の際の契約書をしっかり見、確認しておくことが大切だ。 よくあることとして、中古物件で瑕疵担保責任を免除する規定があるにもかかわらず、買主に意図的にそれを知らせないような場合には売り主が瑕疵担保責任を負うこととなる。売主が不動産業者の場合には、瑕疵担保の免責や期間を短縮など買主に明らかに不利な特別契約は法的に無効とされる。 さらに、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(*参照)では、全新築住宅に10年の瑕疵担保責任の期間が請負人あるいは売主に義務づけられた。新築住宅の請負人または売主は、買主に対し構造耐力上主要な部分(住宅の柱や梁基礎など)や屋根等の雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、引渡の日から10年間その瑕疵を修補するなどの義務を負うことになった。 請負人や売主が上記に反する特約を設けた場合、買主にとって不利な特別契約は無効となる。他方、瑕疵担保責任の期間を10年超など延長することは認められている。ただし、自然の劣化等により生じた不具合、欠損等については保証の対象外となる。また売買の際に通常の点検で発見できる欠陥も保証の対象外になるので注意を要する。 ※ 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、不動産取引の安全を確保することを目的に住宅性能表示の制度を新設した。この制度は住宅性能表示の共通ルールにより住宅性能の相互比較を買い主に容易とする制度である。ただし、評価を受けるかどうかは任意となっている。評価された住宅には住宅性能評価書が交付される。住宅性能評価書を添付し住宅契約した場合は、同記載内容が契約内容として保証されることになる。また評価書が交付された住宅では契約トラブルが発生しても、裁判以外に指定された住宅紛争処理機関において調停、斡旋、仲裁を受けられる。 今回の耐震偽装事件における最大の問題は、いわば売主に義務づけられている無過失賠償責任である瑕疵担保責任をそっちのけで、国が請負人あるいは売主に対し、すぐさま公的補助を打ち出したことである。 しかも国が公的補助の対象としようとしている物件は、耐震強度0.5以下のマンションである。何とその大部分は、ヒューザーの物件であることが分かった。 つづく |