エントランスへはここをクリック!                  

忍び寄る国家主義(1)
〜国旗・国歌の強要〜
 

青山貞一

掲載日:2004.4.4

 日本では、ここ数年、国家主義的な風潮だけでなく、押しつけが一段と強まっている。とくにこれが顕著なのは教育の場である。

 たとえば、以下の東京新聞ヘッドラインにあるように、東京都は都立高校卒業式で君が代斉唱の際に起立しなかった教員約180名を戒告処分などとした。嘱託教員の場合、採用取り消しとなった者もいる。

都立高教員大量処分で悲鳴
東京都教育委員会が、都立学校の卒業式で、君が代斉唱の際に起立しなかった教員約百八十人の処分を決めた。不起立というささやかな抵抗への異例の大量処分は、都教委が求める日の丸掲揚・君が代斉唱の「適正実施 ...
2004年04月03日 00時00分 東京新聞

教職員処分を決定
東京都教育委員会は三十日、都立学校の卒業式で君が代斉唱の際に起立しなかった教職員約百八十人を戒告などの処分とすることを決めた。生徒の大半が起立しなかった学校の指導状況の調査も進めており、今後、処分 ...
2004年03月31日 00時00分 東京新聞

教職員約200人処分へ
東京都教育委員会は、都立高校や都立盲・ろう・養護学校の卒業式で君が代斉唱の際に起立しなかったなどとして二百人近くの教職員を戒告などの処分にする方針を固めた。三十日の臨時教育委員会で正式に決める。日 ...
2004年03月30日 00時00分 東京新聞


 まず平成11年に制定された国旗・国歌法だが、同法は以下にあるように一切、国旗掲揚、国歌斉唱の強要をしていない。

国旗及び国歌に関する法律
平成11(1999)年8月13日 法律第127号
平成11(1999)年8月13日施行(附則)

別記の図は官報を元に再構成

(国旗)
第一条

 国旗は、日章旗とする。

 日章旗の制式は、別記第一のとおりとする。
(国歌)
第二条

 国歌は、君が代とする。

 君が代の歌詞及び楽曲は、別記第二のとおりとする。
附則
(施行期日)

 この法律は、公布の日から施行する。
(商船規則の廃止)

 商船規則(明治三年太政官布告第五十七号)は、廃止する。
(日章旗の制式の特例)

 日章旗の制式については、当分の間、別記第一の規定にかかわらず、寸法の割合について縦を横の十分の七とし、かつ、日章の中心の位置について旗の中心から旗竿(ざお)側に横の長さの百分の一偏した位置とすることができる。

以下略

 では、何で職員が処分されるのであろうか?

 これは、公立学校などで、職務命令としてこの国旗掲揚、国歌斉唱を扱ううことができるようになったことを意味する。国旗・国歌法自体には何ら罰則規定はない、しかし、地方公務員法32条、地方教育行政法43条2は公立高校などの教職員に対し、教育委員会その他上司の職務上の命令に忠実に従う義務を負うと定めている。

 その結果、職務命令に従わない場合,地方公務員法29条に基き任命権者である教育委員会による懲戒処分の対象となる可能性がでてきたのだ。

 したがって日の丸・君が代が法制化されたことで学習指導要領にあるるように、各種式典で学校が日の丸を掲揚するとともに、教員は生徒が君が代を斉唱するよう指導することが事実上“義務”づけられた、と言うのが一般的な解釈となる。

 公立学校では、都道府県知事が教育委員会委員の任命権者となっている。そのことから、教育委員会主導で国旗掲揚、国歌を起立して斉唱すべしという職務規程がつくられ、それに違反する教職員を戒告なり懲戒することになったと言うわけだ。