田中康夫知事、 市町村の異論を批判 「知事の提出権の侵害」と! 青山貞一 2006年1月30日 |
長野県議会の2月定例会に、田中康夫知事が提案予定の 「廃棄物の発生抑制等と良好な環境の確保に関する条例(仮称)」(以下、単に廃棄物条例(案))をめぐり、鷲澤長野市長らが長野市選出の県議会議員らに「否決してほしい」と要請、さらに長野県の市長会や町村会が長野県の廃棄物条例関連予算計上の見送りを要望するなど、異常な事態が生じている。 鷲澤正一長野市長は、1月24日の定例会見で、長野県が県議会の2月例会に提出を予定している廃棄物条例案について、「否決してほしい。県は余計なことを口出ししないでくれ、と言いたい」などと述べ、市選出議員らに反対の働きかけをしていくことを明らかにした。 これに対し、田中康夫長野県知事は、1月27日の会見で、県が2月県議会に提案する長野県廃棄物条例案に市町村から異論が出ていることに対し、「知事の予算や条例の提出権、予算執行権を結果として侵害する」ものと、厳しく批判した。 さらに、田中康夫知事は、同会見で、知事に批判的な県議や市町村長に対し、「『田中康夫は気にくわない』は結構だが、それで(すべてを退け)不幸になるのは誰か。行為主義で判断してほしい」と訴え、政策の中身で是非を問う建設的な議論を求めた。 長野県では、昭和45年に制定された国の廃棄物処理法(廃棄物の清掃と処理に関する法律)が有するさまざまな欠陥、課題を開発するため、3名の廃棄物条例制定アドバイザーに条例制定素案づくりを依頼した。 条例制定アドバイザーには、弁護士で理学博士の梶山正三氏、上智大学法学部教授の北村喜宣氏、そして武蔵工業大学環境情報学部教授の青山貞一の3名があたってきた。また県生活環境部は、過去、県民、市町村、県議会、事業者などに対し、数10回に及ぶ説明会、意見交換会、パネル討議などを実施し、意向の把握と条例案の拡充に努めてきた。 同条例案の内容(概要)は、以下の 「廃棄物の発生抑制等と良好な環境の確保に関する条例(仮称)」原案 をお読み頂きたい。 廃棄物条例前文 条例原案概要説明資料(普及版)(PDF形式:210KB/4ページ) 条例原案全文 (PDF形式: 194 KB/17 ページ) 概要説明資料 (PDF形式: 754 KB/19 ページ) 条例原案逐条解説(規則素案付き)(PDF形式: 828 KB/71 ページ) 上記条例案の内容は、廃棄物処理法がもつ根幹的な法的課題を解決することのみならず、廃棄物発生抑制・資源化計画策定、不法投棄防止のための排出者責任の明確化、アスベストを含む建設廃材対策、県民参加の環境モニタリング制度、県民環境協議会創設、行政権限発動請求権、内部告発奨励制度など、数々の画期的な諸制度、手続を創設しており、司法、環境政策分野の専門家らから高い評価をもらっている。また多くの県民からも同様の評価を受けている。 一方、条例制定に反対する急先鋒、鷲澤正一長野市長は、一昨年6月1日に長野市で開催された長野県議会政策条例制定研修会のパネル討議において、県議会議員、市町村議会議員ら270名を前に、「条例の内容ではなく、誰が条例を出すかが問題だ」と公言してはばからなかった。 同廃棄物条例案では、産業廃棄物処理施設に加え、一般廃棄物処理施設を対象に大気汚染、水質汚濁など広域的視点から環境及び土地利用上の配慮が必要な問題について、委員会を設置し協議する条項が新設されている。 この条項を県議会の反田中会派及び反田中の市町村長が、市町村の権限の侵害として、この間、条例の制定に反対してきた。 だが、複数市町村に汚染、汚濁などの影響が及ぶ可能性のある焼却炉や処分場の設置に際して、計画段階から総合的な環境配慮を積極的に行うことは時代の要請であり、一般廃棄物処理施設だけ例外とすることこそ、おかしい。 、県民の健康と環境、安全と安心を守ることがなぜ、市町村権限の侵害なのか? まったく理解に苦しむ。さらに世はすべてクロスチェック(多重監視)すべき時代。広域的観点から県がチェックすることは、もとより県民の望むところであろう。 言うまでもなく、現在、わが国では、過去のように市町村から要望があれば野放図に、巨額の焼却炉、溶融炉、処分場建設のための補助金、交付金をノーチェックで出せる状態にはない。また世界一、ゴミを焼却し、埋め立てている日本のゴミ政策そのものが国際的にも批判されている。 そんななか、ゴミがでるから収集、運搬し、巨額の税金を投入し、燃やして埋める従来のゴミ行政そのものをあらためることなく、「市町村の権限の侵害だ」として、条例制定にこぞって反対する長野県議会や市長会、村長会の姿勢こそ、指弾されるべきである。 |