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まっとうな福岡地裁判決
  青山 貞一 

掲載日:2004.4.8


 やっとのことでまっとうな司法判断がでた。

 2004年4月7日の福岡地方裁判所における小泉首相の靖国参拝違憲判決のことである。私自身ある裁判の証人で1ヶ月ちょっと前に福岡地裁の証言台に立ったばかりだ。

 それにしても驚いたのは、小泉首相が判決についての感想を求められ、「おかしい? どうして憲法違反なのか?」、「これからも行く」と述べている点だ。

 今更言うべきもないことだが、日本国憲法、第九十九条では、以下にあるように「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とある。国務大臣であり国会議員である小泉首相が違憲と司法に判断された事に対し、「おかしい? どうして憲法違反なのか?」、「これからも行く」と言っていること自体、きわめて異常であり、犯罪的である。一体この小泉と言う人は、何を考えているのか、と頭を疑いたくなる。

日本国憲法 第十章 最高法規
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 ところで、今回の福岡地裁の判決だが、「隠し味」があった。

福岡地裁判決(骨子)

 1 公用車を使用し、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳するなどしており、国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」に当たる。

 2 一般人の宗教的評価、目的、行為の一般人に与える効果を考慮すると、憲法20条3項目によって禁止されている宗教的活動に当たり、同条項に反する。

 3 原告らに対して信教を理由として不利益な取り扱いをしたり、心理的強制を含む宗教上の強制や制止をするものではないから、信教の自由を侵害したとはいえない。

 4 賠償の対象となる法的利益の侵害があったものということはできず、不法行為の成立を認めることはできない。


 判決主文では、原告側の損害賠償を退けた結果、何と小泉首相は控訴できず、この福岡地裁判決が確定する可能性が高いことだ。もし、控訴できないとそれば、今後、この種の裁判の判決に大きな影響力をもつことになる。 

 本来、判例違反と憲法違反の判断は最高裁の専権事項となってきたが、その最高裁が一向にまっとうな判断をしめさず、すべて先送りやウヤムヤとしてきたことで、日本の国家主義や軍国主義がまたたくまに台頭してきた背景がある。

 今回の判決は、司法の本来あるべき判断を示したにすぎないが、よくぞやったと評価できる。それにしても憲法をまったく遵守しない首相をここまで放置してきたのは、おそらくほかならぬ私たち国民の観客民主主義ではないか、と今更ながら考える。