忍び寄る国家主義(3) ひとつの根源 青山貞一 掲載日:2004.4.10 |
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東京都の教育委員会が職務命令で、教師らに国旗に顔を向け国歌を斉唱させ、それに従わない教師らを戒告処分としたことが大きな問題となっている。それに関連し、4月9日の東京新聞は、以下のような記事を掲載している。
何と、元早稲田大学総長の清水司氏が東京都教育委員会の委員長となっている。早稲田大学と言えば、歴史的には国家主義の対極にあると思われる。その清水氏は「一部の教員が反対する不都合があった。校長の命令を受けながら、子どもたちの晴れの門出で不都合な行動に出るのは許すことができない。反省を促したい」と起立を拒否した教員を強く批判したと言う。 ホームページで元早大学長の清水 司氏のプロフィールを見ると、次のように紹介している。 「専門分野においては、科学技術庁電子技術審議会専門委員、電気通信学会評議員等を務めるなど、日本の電波工学の発展に寄与する一方、わが国の教育のあり方や文化・スポーツの振興を高い視点から見通し、大学基準協会常任理事および副会長、全国保育士養成協議会会長、全国大学体育連合会長、東京都生涯学習審議会会長、東京都教育委員会委員長、全国都道府県教育委員会連合会会長等々を歴任し、教育行政、研究・教育の改善と発展に多大な貢献をなした。 さらにまた、日本私立大学連盟常任理事、日本私立大学協会評議員、同協会常任理事等を歴任すると同時に、日本私学振興財団理事長を務め、私学振興に多大な貢献をなした。中でも、国公立学校とともにわが国の教育を担う私立学校の公共性を重視し、財政困難に陥っている私学のために公費助成の適正な増額を求めるとともに、私学改革と水準の維持向上に尽力する一方、私学の自己努力による質的な向上をめざし、教育研究の改善を強力に推進することに努めた。 このような氏の綿々と続くその活動の中には、一筋の光が貫いている。それは”文化の推進”への貢献であり、氏の生涯を通じてのこのような類なき功績に対し、平成9年11月文化功労者としての栄誉が与えられ、平成12年11月には勲一等瑞宝章を授与された 」と。 上記には、「このような氏の綿々と続くその活動の中には、一筋の光が貫いている。それは”文化の推進”への貢献であり」とある。まさか国から文化功労者としての栄誉が与えられ、勲一等瑞宝章を授与されたことが”文化の推進”ではあるまい。果たして何が”文化の推進”なのか私には分からない。上記の記述の大部分は会長、委員長などの肩書きである。その肩書きの多くは、早稲田大学のブランドと学長と言う立場と無縁ではないだろう。そこには氏が教育者として何をどう”文化の推進”に尽力したのかがまったく見えないからである。 私見では、今、日本の教育に本来的に問われているのは、画一性、統一性ではなく、多様性、自主性、自立性ではないかと思う。清水氏は早稲田大学理工学部の出身だが、今回の国旗、国歌の教員への一律押し付けと処分の根源が、早大学長経験者、それも工学出身者から発せられている点はとくに重要だと思う。 もとより、多様性が必要とされる教育の現場に、管理者的立場から画一的に国家主義的行為を強要することはあってはならないと思う。大学に身を置くものとして日々強く感じるのは、工学出身者のなかにその種の短絡的な基準、規則の画一的当てはめ論者が多いことである。そう言う私も元はと言えば、工学出身である。自戒しなければならない。 |