強制的に米牛肉を 食べさせられる恐怖 〜米航空会社の機内食問題〜 青山貞一 掲載日:2006.9.11 |
9月上旬、調査研究でカナダのノヴァスコシア州及びニューファウンド・ラブラドール州にでかけた。 日本からトロント、モントリオールなど通常のカナダ東部の州に行くには、カナダの航空会社であるエアー・カナダ以外では、以下の米国航空会社となる。 (1)コンチネンタル航空 (2)デルタ航空 (3)ノースウェスト航空 (4)アメリカン航空 (5)ユナイテッド航空 ところが、同じカナダ東部でもノヴァスコシア州及びニューファウンド・ラブラドール州など最東端の州となると、エアーカナダ以外では、コンチネンタル、ノースウェストしか実用航空はなくなる。 たとえばデルタは日本から母港アトランタ経由となるから、三角形の2辺を行くことなり、膨大な時間がかかる。 もちろん、日本航空、全日空などもあるにはある。通常、航空運賃が米国系の2倍以上となり私たち大学教員は利用しずらい。ちなみに大学教員は通常の海外出張は、航空運賃が15万円が上限となっている。これはアメリカンなど、ハリファックスに行っている他の米国航空会社もも妥当する。2倍以上の航空運賃など到底ださない。 一方、カナダ最東端の各州に行く、航空会社のルートは次の通りであり。 エアーカナダの場合: 成田→トロント→ハリファックス(セントジョーンズ) コンチネンタルの場合 成田→ニューアーク→ハリファックス(セントジョーンズ) ノースウェストの場合 成田→デトロイト→ハリファックス(セントジョーンズ) 上記の便はいずれもも夕方に日本を発ち、トロント、ニューアーク、デトロイトまで12〜13時間一気に飛ぶ。その後、トランジットで2〜3時間弱空港に待機。その後、小型機ジェットに乗り換え目的地まで2〜3時間飛ぶ。その結果、目的地には、同日深夜に到着することとなる。成田からうまくいって、現地まで18時間ほどかかることになる。日本から北半球で一番遠い。距離では1万kmを超える。 私は仕事でハリファックスなどによく行くが、上記の理由から選択する航空会社はどうしても、コンチネンタルかエアーカナダとなる。季節にもよるが9月上旬の場合、航空運賃は諸経費を入れ往復で10〜14万円と言うところか。 本題に入ろう! さてここで本題だが、今回もコンチネンタルででかけたが、問題は機内食である。最初に断っておくが、ここでの問題では、よく言われる機内食がうまいとかまずいと言う問題ではない。 今回は行き帰りともに機内食は3回でた。 ●1回目の機内食: コース(?)でメインが肉(ビーフ)か魚(タラ)の選択。 ●2回目の機内食: いわゆるハンバーグ(ビーフ)のみで選択なし ●3回目の機内食: 以下では、鶏肉の照り焼きとなっているが、実際にはミンチ状ビーフを焼いたもの(ハンバーグ用肉)にポテト、たまごの付け合せで選択なし 写真はコンチネンタル空港(ニューアーク→成田)の機内食のメニュー メインコースを見て欲しい。行きもそうだが、ビフテキと魚(鱈)がメインの選択となっている。 写真はコンチネンタル空港(ニューアーク→成田)の3回目の機内食。(成田到着前の朝食。右側のトレーの左側がビーフ 上記のようにいずれの機内食(往復とも)はビーフがメインとなっている。 コンチネンタルはニュージャージー(ニューヨークの隣の州)を母港とした列記とした米国航空会社である。したがって、コンチネンタルが米国産以外のビーフを機内食に使う可能性はゼロに近い。機内食には産地呼称制度など何もないが、間違いないだろう。 行き、帰りともに第一回目の機内食では、一応、ビーフが魚あるいは鶏肉を選べるようになっているが、現実にはそれ自体形骸化している。 私たちが登場したコンチネンタル便はボーイング社の777と言う完全電子化された航空機を使っているが、どういうわけか、行きも帰りも相当早く空港でチェックインしたが、いずれも43列目である。全体で44列あるうちの43列目である。 ちなみに、ボーイング777の場合、エコノミーでは、(3席+3席+3席)×44列=約400席となっている。 大体どこの航空会社も同じだが、前の列から給仕をはじめる。したがって、仮にい食べ物に選択の余地があった場合でも、後列となると、選択の余地がなくなり、あまったものを宛がわれることとなる。 行きも帰りも、この便は日本人が多い。それが理由かどうかわからないが、聞いていると日本人はFishの選択が圧倒的であった。そんなこともあり、43列目以前に魚はなくなり、強制的にビーフを渡された。 私はすかさず、I can't have US beef!. とフランとアテンダントに文句をいうが、まったく聞き入れられず、それしか残っていないと言う返事(ガーン)。 結局、サラダとパンのみを食べ、メインディッシュは一切手をつけなかった。さらに、第2回目、第3回目に至っては、ビーフのみでそれ以外の選択の余地はない。 これは成田到着直前の機内食でも同じだ。最初にもらったメニューには、鳥の照り焼きとご飯と書いてあったが、私たちの43列では、すでにそれらはなく、一様にビーフとポテトチップス、それにオムレツモドキが一方的に渡された。これは写真を参照のこと。 思うに、日本人は米国産牛肉のBSE問題で何度となく煮え湯を飲まされている。一体どんな検査体制なのかについても疑惑の目で見ている。 もちろん、日本にいれば通常の食事において米国産ビーフしかないなどと言うことは99.99%ありえない。どうしてもすき焼きでビーフを食べる場合でも、オーストラリア産であれ、奮発して和牛でも選択できる。 しかし、超長距離の機内食で米国産ビーフばかりがだされ、しかもまったく他の食材を選択することができないというのは、いかがなものであろうか? 日本人であれば、米国産ビーフ イコール BSEリスクがあると考えるのはごく当然である。 ミンチ化されたビーフを何の説明もなく繰り返し、機内食として提供する航空会社の基本姿勢には本当に閉口した。まさに米国の傲慢さ、一方的な押し付けがもろに米国航空会社の機内食にでた感じである。 ひるがえってリスクがある場合でも、最終的に自己の責任であれっても、複数からひとつを選択できることが民主主義社会の最低限の基盤である。 とするなら、今の米国社会、米国企業はそれすら失っている。しかも、たとえエコノミーの航空切符であれ、他国の人間に10万円を超える買い物をしてもらっているのである。 結局、私は行きも帰りも一度も、ビーフの機内食は食べなかった。もちろん一日食べないくらいでどってことはないが、米国社会の基本認識はこんなものなのかと感じるとともに、こんなひとたちが一方的に押し付けてくる米国産牛肉にはあらためて怖さを感じざるを得なかった。 もっと言えば、機内にはベジタリアンや宗教的理由で豚であれ豚肉でも食べれない乗客もいるだろう。それらに細かく対応しろとは言わないが、今回の一件は、テロ対策の名のもとに、どんどん疲弊し、多様性をなくす米国社会、企業の一端を垣間見た気がする。 |