以下は、2003年12月、有志が呼びかけ人となり6千人以上の署名をもとに日本政府がイラクに自衛隊を派兵させることを断念させるための申し入れです。
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日本政府は2003年2月、フランス、ドイツ、CIS、中国などが国連査察のイラクへの継続を要求するなか、米英のイラク攻撃を早々と国益にかなうとして支持した。支持した最大の理由は、イラクにおける「大量破壊兵器」の存在であった。
現在までに明らかになったことは「大量破壊兵器」が何一つ発見されないことである。また先制攻撃の論拠のひとつとなったフセインが相当量のウランをニジェールから入手しようとしている、ということも捏造であることが分かった。そもそも、米国が他国を先制攻撃する権利は国連憲章、国際法上ありえない。これは民主主義を標榜する法治国家なら自明なことである。
米国は大量破壊兵器に準ずる圧倒的な質、量をもつおびただしい武器によりイラクをあっという間に制圧し勝利宣言した。そして現在までイラクを一方的に占領、統治している。しかも、米国はイラク国内のバスラやティクリートにある油井地域を占有し、政権に関係する石油関連会社の子会社に特命随意契約で優先的に業務を与えている。これだけをみても、米国がしていることは決して「中東の民主化」とか「イラク国民の圧政からの解放」などでないことが分かる。大義も正義もないのである。
現在イラクが戦時下であることは誰の目から見ても明らかである。この夏から米英軍以外へのイラク人らによる攻撃が激しくなってきた。日本政府や日本の報道機関の一部は、これらを「テロ」、「テロ」と言っている。が、他国を一方的に侵攻し、領土を占拠している国に対し、地元イラクのレジスタンスが攻撃をしかけることは、十分ありうることである。それを「テロ」呼ばわりすること自体、論理矛盾である。
マサチューセッツ工科大学のチョムスキー教授は「テロとは他者が『われわれ(米国)』に対して行う行為であり、『われわれ(米国)』がどんなに残虐なことを他者に行っても『防衛』や『テロ防止』と呼ばれる」と述べているが、まさに至言である。何でも「テロ」呼ばわりすることで事足りとすることに、大きな疑念と怒りを感ずる。一方的な武力行使により勝てば官軍であっては断じてならない。
このように米英等によるイラク戦争は、元来、正当性がないだけでなく、エネルギーの収奪など利権に満ちたものでもある。日本政府はいち早く2月に米国支持を表明した。しかも、それだけではなく、憲法第九条をまったく無視し、イラク特措法を強引に制定し戦時下のイラクに自衛隊を派兵しようとしている。イラクへの自衛隊派兵まぎれもなく違憲である。だけでなく人道面からも間違っていることは、子供でもわかるはずである。
日本政府はブッシュ大統領来日時に、向こう3年で50億ドルもの国費をイラク復興支援として拠出することを明言した。正当性がない戦争に日本政府は国民的な合意がないまま、なぜかくも荷担するのか、しかも小泉首相は未だ国民に説明責任を果たしていない。
日本政府はことあるたびに「国益」「国益」と言ってきたが、日本政府が考える国益は、(1)憲法第九条を改正(改憲)させ、普通の国になると言う名のもとに、国家主義、軍国化、再軍備の道を走ることである。イラク特措法はそのための既成事実づくりである。(2)政官業は、危機を煽ることにより軍事産業、防衛産業を今後の日本の主たる公共事業として推進しようとしている。(3)米国に追随することによりイラク、イラン、アフガニスタンなど中東諸国に眠る石油、天然ガスなどのエネルギーにありつこうとしている。これらは何ら国益ではなく、政官業一部の者の利権に過ぎないのではないだろうか。
このような「国益」は戦後、私たちが築いてきた「非戦」国、日本の信頼を根底から破壊し、中東諸国のひとびとだけでなく、世界各国国民の日本及び日本人への信頼性を失わせるものである。
具体的要望
日本政府は、イラクへの自衛隊の派兵を勇気をもって断念し、「非戦」日本を再構築すること、同時に頭を使いもともと親日のイラク国民に協力できることを模索し実行することを強く要望する。 |
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