以下は2003年2月〜3月に有志が呼びかけ人となり合計2万人以上の署名をもとに、日本政府に申し入れた内容です。
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過去の人類の歴史、経験から武力攻撃が何ら問題解決にならないことは明らかです。このことを最もよく知っているのは日本国民のはずです。
ドイツ、フランス、ベルギー、ロシア、中国など国連安保理主要国を含むEU等の国々は大量破壊兵器廃棄のための査察の継続を強く求めています。この2月15日にはニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリンなど世界60カ国、400カ所で1000万人を超えるひとびとのイラク攻撃反対デモもありました。全米各地でもベトナム戦争時に比肩する反戦デモや集会が、東海岸のニューヨークから西海岸のロサンゼルスまで全米約150の都市で行われ、ニューヨーク・マンハッタンでは約38万人もの市民が参加しています。各国の世論調査でも70〜80%のひとびとが米国の正当性のない武力攻撃に反対の意志を表明しています。
このような国際的な大きな反戦、非戦のうねりのなか、日本政府は米国のイラク攻撃を実質的に支援することをきめました。これは非軍事的方法で解決を求める圧倒的多くの国際世論から、また憲法において武力による国際紛争の解決を放棄した国家として論理的にも間違っていると思われます。
日本が米国の同盟国であるのは事実です。しかし、ドイツ、フランスなど米国の主要同盟国でさえ、今回の米国のイラク攻撃についてはNATOや国連安保理において明確かつ論理的に批判し、査察の継続を求めています。
日本政府はイラクが国連決議を遵守していないとことあるたびに述べていますが、過去、イスラエルが60件に及ぶ国連決議を無視してきたことを看過し続けています。朝鮮民主主義共和国の核保有問題についても非軍事的な解決の道を選ぶと言ったり、「北朝鮮問題で米国に世話になるのでイラク攻撃を支持するしかない」と言う趣旨のことを述べています。これらは日本政府が明らかに米国のダブルスタンダードに追随していることを物語るものであり整合性もなく、きわめて非論理的なものです。
さらに昨年7月に国際刑事裁判所(ICC)設立条約が成立し、戦争犯罪に関する国際司法制度が設立されました。コフィ・アナン国連事務総長はこの国際刑事裁判所について次のように述べています。すなわち、(国際刑事裁判所)は少なくとも、ジェノサイド、人道に対する罪そして戦争犯罪といった国際社会に対する重大な犯罪を裁く常設裁判所という、国際法体系が長い間失っていた場を提供することを約束する、と。
しかし、米国のブッシュ政権はこの制度からの離脱を表明し、結果としてイラクで米軍兵士が行う戦争犯罪の疑いのある行為を国際的に裁くことができません。米国が国際刑事裁判所(ICC)条約を批准する意思も示していない以上、日本が米軍の攻撃を支持することは、今日の国際水準の戦争に関する規制が適用されないことを黙認し、日本はイラクで起こりうる戦争犯罪の共犯となりうると言わざるを得ません。ましてや状況によっては核兵器の使用もありうると米国防長官は公言しているのです。これを食いとめるすべもないまま日本政府が米軍支持をするのは犯罪です。
そのブッシュ政権が地球温暖化防止のための京都議定書や核実験全面禁止条約(CTBT)さらに米ロ弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)など、国際的にみてきわめて重要な公約を次々に反故にしてきたことは周知の事実です。
いずれにしてもイラク問題は国連による徹底した査察のなかで、非軍事的手段で逐次解決して行くことが、理性ある国家が選択すべき最良の道であるはずです。
10,600個の核弾頭を所有し、世界30カ国に軍事基地を持ち、世界の軍事費の50%になんなんとする軍事大国米国による正当性なきイラクへの先制武力攻撃は、罪のない数限りない子供など市民を殺傷し環境を破壊するだけでなく、21世紀における世界のありようを根底から破壊し、取り返しのつかない大きな禍根を残します。
米国に何でも追随してきた日本政府ですが、イラクと日本はもともと何ら敵対的な関係にありません。イラク攻撃を実質的に容認、支持することは、日本の国益にもなりません。米国による戦争行為への日本の支持は明らかに間違いです。
日本は米国の親密な同盟国であればこそ、米国が何が何でもイラク攻撃をするという姿勢を是正させる義務と責任があるはずです。
思慮ある衆議院、参議院の国会議員の皆様、何としても日本政府に米国等のイラク攻撃の容認、支援を制止させるよう、切にお願い申し上げます。