東京都西多摩郡日の出町には、25市1町※によって構成される「東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合」が一般廃棄物(ごみ)の最終処分場(埋め立て地)を設置している。
処分場からの汚染漏れ、周辺住民の癌の多発(個別の因果関係は不明)、事業者によるデータ隠し(裁判所の命令が出ても税金からお金を払ってまでもデータを隠しつづけた)、東京都による市民のトラスト地強制収容などで全国的に有名になった、あの「日の出町」最終処分場である。ちなみに日の出町のごみはここには埋め立てられていない。
日の出町には2つの最終処分場がある。1つは1984〜1998年までごみが搬入されていた「谷戸沢(廃棄物広域)処分場」(上の写真参照)、もう1つは1998年からごみの搬入がはじまり現在も使用されている「二ツ塚(廃棄物広域)処分場」である。 汚染漏れ、データ隠しが最初に問題になったのは「谷戸沢処分場」であり、トラスト地が東京都によって強制収容されたのは「二ツ塚処分場」であった。
この日の出の処分場を1年半ぶりに訪れ、地元で汚染問題の解決に取り組まれている住民の方に2つの処分場周辺を案内していただいた。 いずれの処分場も、周辺は豊かな自然に取り囲まれており、ハイキングコースとして親しまれている。訪問当日も、谷戸沢処分場周辺ハイキングコースではマウンテンバイクに乗った礼儀正しい学生グループに、二ツ塚処分場周辺では、20名ほどの中高年のハイキンググループに出会い、挨拶を交わした。
谷戸沢処分場はハイキングコースからは直接みることは出来ない。そのため、予備知識がなければその存在さえも分からないだろう。脇道にそれて、処分場内がみえる位置まで歩いた。 一方、二ツ塚処分場は奥まで歩くと、埋立中の最終処分場、そして場内に建設中のごみ溶融施設の工事現場が、事業者が目隠しとして(?)散策路沿道に張り巡らせた黒いネットごしに見え、工事のけたたましい騒音が聞こえてきた。豊かな自然の中の散策を楽しむどころではない。当日は土曜日だったため埋立作業は行われていなかったが、平日は工事だけでなく埋立作業が行われており、散策路を歩く人のなかには原因は不明ではあるが、体調が悪くなる方も頻発するそうである。
また、地元住民が調べたところ、二ツ塚処分場から飛散する灰が届きそうなところ・風の通り道には、成長に異常がみられる植物が多くみられるとうかがった。一方、すでに閉鎖されている谷戸沢処分場周辺では、埋立作業が行われていないため、灰が舞い上がることもなく、植物にみられていた異変も減少しつつあるとのことであった。
確かに、個々の植物や人間への影響、異変については、埋立との因果関係を立証するのは難しい。しかし、周辺の環境調査では平均的なレベルを遙かに超える有害物質が検出されていることも含め、人間・生態系に起きていること、化学的な分析調査結果を総合的に評価すると、最終処分場からの著しい影響が改めて浮き彫りになってくる。
ちなみに、谷戸沢処分場、二ツ塚処分場に搬入されている「ごみ」の大半は、実は「ごみを焼却した際に生ずる灰」である。多くの自治体で「ごみ」の搬入量を減らすため(埋立経費節約のため)、プラスチックを含めてごみを焼却して「灰」として日の出の最終処分場に持ち込んでいるためである。中には市民がせっかく分別したプラスチックを燃やして問題となっている自治体もある。
プラスチックを含むごみを燃やした灰は、ダイオキシン類、重金属類をはじめとする多くの有害物質が濃縮されているため、非常に有害性が高い。
さらに、二ツ塚処分場では場内に溶融炉を建設し、不燃ごみや灰を溶融することによって、資源・有害物質の大半を大気中に蒸発させ、残りのさらに濃縮された灰を埋め立てようとしているのである。
これは日の出処分場だけでなく、ごみ問題に関心の高い市民が反発する中、日本全国で行われつつある。
世界が「ゼロ・ウェイスト」、燃やさない、埋め立てない方向に向かっているこの時代に、日本のごみ行政は、「ごみ」の見かけを減らすため、莫大な税金を投入して、技術依存の焼却・溶融主義、埋立主義を一層推進し、そのための施設(ハコモノ)を作り続けようとしている。
------------------------------------------------------
※東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合の構成市町(25市1町):
八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、
町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、
狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、
羽村市、西東京市、瑞穂町
|