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福岡県三輪のガス化溶融炉操業差止裁判(1)    青山 貞一

掲載日:2004.4.20

 2004年2月24日、かねてから福岡県の住民団体の依頼で旧NKKが三輪町を含む一部事務組合に導入したガス化溶融炉をめぐる操業差止裁判の証人として福岡地方裁判所に出廷した。

 以下は、そのときに私が証言した詳細内容である。現地視察を含め3ヶ月近くかかって準備した証言では100枚以上のパワーポイントを使い、まさにありとあらゆる課題について主尋問に対応した。主尋問に要した時間は何と3時間弱だった。

 しかし、反対尋問は、何とわずか20分、しかも主尋問の内容にはほとんど触れない。 まさに拍子抜けの証人尋問であった。
 

一般廃棄物焼却施設建設差止請求事件証人陳述
   青山貞一
   
武蔵工業大学大学院教授、環境総合研究所所長 2004.2.24
  表紙
  経歴
@日本のゴミ焼却主義の実態
 一般廃棄物焼却炉数の国際比較
  一般廃棄物焼却率の国際比較
  一般廃棄物処理の問題点
  可燃ゴミの組成
  不燃ゴミの組成
Aダイオキシン体内摂取の経路
  焼却炉(溶融炉)排ガス→大気汚染→呼吸→体内
  焼却炉(溶融炉)排ガス→大気汚染→土壌→呼吸→体内
  焼却炉(溶融炉)排ガス→大気汚染→野菜→体内
  最終処分場→再浮遊→大気汚染→呼吸→体内
  最終処分場→小河川→河川→取水→体内
  最終処分場→河川→海洋→生物濃縮→魚介→体内
Bダイオキシンの毒性よ疾病
  ダイオキシンの毒性とは
  ダイオキシンの毒性の種類と体内摂取量(急性毒性)
  ダイオキシンの毒性の種類と体内摂取量(発ガン毒性)
  ダイオキシンの毒性の種類と体内摂取量(慢性毒性
   (免疫毒性、生殖毒性、胎児毒性)
  米国環境保護庁(EPA)の発ガン性認定
  発ガン毒性、遺伝毒性に関する議論1
  発ガン毒性、遺伝毒性に関する議論2
  体の内部環境の安定とその異常
  化学物質の量と中毒・アレルギー・化学物質過敏症
  体内に入った後(半減期)
  WHOの耐容1日摂取量の根拠
Cダイオキシン規制と課題
  排ガス中ダイオキシン規制の各国比較と日本の現状
  土壌中ダイオキシン規制の各国比較と日本の現状
  ドイツの土壌保護令における予防値、試験値、措置値
  耐容一日摂取量の各国比較と日本の現状
  食品中ダイオキシン規制の現状(EU)
   (最大許容値、行動指針値、目標値)
  EU基準による所沢市の農作物ダイオキシン類濃度の評価 
  魚介中ダイオキシン規制の現状(米国環境保護庁)
  環境庁平成10年度全国一斉調査(水生生物)
  日本の魚介類のダイオキシン濃度(水産庁)
  日本の魚介類を食べた場合のTDI相当値(水産庁)  
Dダイオキシン類対策特別措置法の概要と課題
E溶融炉の実態と課題
  焼却炉の構造概念図
  ガス化溶融炉の構造概念図
  直接溶融炉の構造構造図
  本件実証炉の排ガス出口別ダイオキシン濃度と課題
  被告提出書証にある濃度データの検証
  廃棄物のPVC混入率とダイオキシン排ガス、焼却灰濃度
  溶融炉からの重金属発生の課題
  焼却炉周辺土壌中の重金属濃度実証データ
  重金属の生体への影響の可能性
  排ガス中重金属濃度と日本の溶出分析法の課題
  溶融炉のスラグの安全性と経済性
  溶融炉の維持管理費とその課題
F焼却炉・溶融炉建設費とその課題
  同国際価格比較
G環境アセスメントの課題
  本件生活環境影響調査の課題
  希釈拡散倍率の課題
  拡散シミュレーションの課題(地形等の考慮)
  本件溶融炉立地とその課題
H排ガス公定測定の課題
  年に一度の届出(8760時間中4時間の排ガスサンプリング)
  厚木基地における大気中ダイオキシン測定結果
  事業者が分析業者を選び検査する第三者性の問題
  燃焼が安定した後、1時間以上経過してから検査
  最も低い値を届け出ることが可能となっていること
  選択的なデータ提出が可能なこと
  いわゆる検査ゴミ(普段と違う組成で焼却する)
  廃棄物のPVC混入率とダイオキシン排ガス、焼却灰濃度
  プラスチックの製造割合
  サンプリングスパイクの実施有無
  厚木基地における大気中ダイオキシン測定結果
I排ガス連続測定
  3つの主要な測定方法
  フィルター冷却法
  冷却プローブ法
  希釈法
J排ガス連続サンプリングシステムの詳細
Kガス状物質、粒子状物質とフィルターの構造
L排ガス連続測定の分析例
M重金属排ガスの測定可能性
N欧州における排ガス測定の認証
  EN45000,EN-1948-1等
O排ガス連続測定の実例
P総括

 福岡地裁での裁判から1ヶ月ちょっとたって、以下の日経新聞記事を見つけた。日経新聞以外に朝日新聞は一面で大きく取り上げていた。

 記事をよく読むと、福岡県三輪町などに旧NKKが導入したガス化溶融炉に関連し、約5億円もの金を地元対策費などに使っていたとある。

 しかも、旧NKKはこれらのガス化溶融炉施設の建設工事などを下請けに発注する際、経費の水増しや架空の業務委託などの手口で所得を圧縮。地元対策費として経費に計上していたという。

 この種のやり口は、焼却炉、溶融炉メーカーがよく行う手口である。たとえば、千葉県の流山市に荏原製作所が導入した焼却炉でもほぼ同じ手口を使っていたことが過去、大きな問題となっている。

旧NKKが5億円所得隠し・施設建設で対策費 
日経新聞 2004.4.2

 鉄鋼大手の旧NKK(現JFEエンジニアリング)が東京国税局の税務調査を受け、2003年3月期までの3年間に約5億円の所得隠しを指摘されていたことが2日、分かった。同社は隠した所得を、ごみ処理施設建設の際の地元対策などに使っていたとみられる。同国税局はこれを交際費と認定。悪質な所得隠しにあたるとして、重加算税を含めて約1億円を追徴課税したとみられる。

 同社は2000年10月、大分県佐伯市などで作る広域事務組合が発注したごみ処理施設を約85億円で受注。また、福岡県三輪町のごみ処理施設も約97億円で受注した。ともに高炉技術を使った「ガス化溶融炉」と呼ばれる施設で、すでに完成している。

 関係者によると、同社はこれらの施設の建設工事などを下請けに発注する際、経費の水増しや架空の業務委託などの手口で所得を圧縮。地元対策費として経費に計上していたという。


 住民、弁護士、それに私たち証人が時間をかけ、カンパを集め施設がもたらすさまざまな影響、課題に対して施設の操業停止を求めようとしている最中、業者は巨額の金を周辺住民に地元対策費としてばらまいていた可能性があるのだ。

 何ともやりきれない気持ちである。