「独立系メディア」としてのミニFM放送局(1) 青山 貞一 掲載日:2004.6.27 |
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過日、東京駅の一角にあるステーションホテルの小さな喫茶店で岩波「世界」の岡本 厚編集長と久々議論した。岡本さんとは坂本龍一さんの「非戦」グループ(sustainability for peace)のメーリングリストでいつも一緒の友人だ。 この日、「独立系メディア、オルターナティブメディア」について大いに議論した。 独立系メディアで最もやりやすいのは、インターネット系メディアである。事実、昨年のイラク戦争がはじまるまえ私たち「非戦」グループが設置したり利用している非戦系ホームページは、ヒット数で評価すると並ある大マスメディアが設置管理するホームページと互角、いやそれ以上に奮闘したことが分かっている。 ※青山貞一、国民はイラク情報を<どのウェッブ>で得ていたか! このように、いまなら誰でも、その日のうちにホームページを立ち上げることができる。メーリングリストもそうだ。私のこの「独立系メディア 今日のコラム」のホームページも、まさにそのひとつ。大して金がかからず、かけず、しかも国内はもよとり世界中で誰でもが読める(見れる)。これほど簡単で廉価なメディアはない。メディアとして社会的に機能するか、唯我独尊とならないかどうか、はまさに内容勝負である。 しかし、こと電波系メディアとなるとそうはいかない。電波系メディアを使って、独立系メディアを立ち上げるのは容易ではない。それは国家の免許が介在するからである。これは地上波(中波、短波、超短波)、また衛星系(超短波、マイクロ波)など波長を問わず共通のことだ。もちろん、設備投資も桁外れに大きくなる。 この日、岡本さんは、最近、東京都東村山市で開局したNPO法人が免許を受け運用するミニFM放送局(コミュニティ放送)について紹介してくれた。何でもこの東村山のミニFM放送局は、その昔、国に働きかけ、日本で最初にミニFM放送局の免許を受けたそうだ。今回は、NPO法人として日本で最初のミニFM放送局の免許(現在予備免許中)を受けた。 現在日本には、現在、以下のURLにあるように北海道から沖縄まで、170局ほどのミニFM放送局が免許を受けている。東村山のミニFM局はNPO(非営利活動法人)が設立、運営すると言う意味で目新しいが、すでに多数のミニFM局が存在している。。 http://www2s.biglobe.ne.jp/~unit973/fmlink.htm |
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インターネット全盛時代に、あえて電波を利用して独立系メディアを具体化することのメリットはどこにあるのかが問われる。その最大のメリットは、不特定多数、それもライブ放送が可能なことにあると思う。インターネットの場合、ストリーミング方式で生放送するとなると、相当お金をかけても、せいぜい100人、よくて200人が同時に受信できるに過ぎない。これに対し、AM、FMを問わず電波を使った場合、数1000人、数万人が同時に受信することが可能である。しかも、FM放送は帯域が広くとれ、すばらしい音質で音楽が送れる。受信する側は、普通のラジオ、チューナーで十分だ。 一方、インターネットに比べた場合の電波系の大きな課題は、サービスエリアが限定されることだ。インターネットなら、ライブの場合人数は限られるが、それこそ地球の裏であってもどこでもだれでも受信可能だが、電波系の場合、使う周波数にと電波の出力によるが、半径せいぜい100kmに限られる。 ちなみに、普通のFM局、たとえば有名なFM局、J−WAVEだと、以下のように10KWの出力が免許されている。
J−WAVEのような本格的な10KW(=10000W)の出力をもつ営業局のですら、サービスエリアは、せいぜい100km程度である。 これに比べると、ミニFM放送局の出力は5〜20W、まさにミニである。ミニと言うことは、おのずと電波の到達距離も短く、ミニFM局の場合、実用到達距離はせいぜい10km程度となる。 ところで、アマチュア無線局の場合、1級局に許されれている出力は1000Wである。すdねい1000局以上に1000Wが免許され運用されている。この現状と比べると、どうみてもプロの放送局とは言えないミニFM局に5〜20Wしか免許されない現実はおかしい。ちなみに、アマチュア無線の場合、2級局でさえ200Wの出力が許され数万局が毎日運用している。しかも、アマチュア無線の場合には、出力が2級の最大出力、すなわち200Wまでの装置が認定制度により事実上何の開局時検査、定期検査なしに運用可能である。すなわち技術的な設置検査が不要となっているのだ。 にもかかわらず、ミニFM局に対し、この規制緩和のIT技術時代に、なぜ、国家がわずか5〜20Wしか免許せず、しかもものものしい時代錯誤の検査制度をとっているのか、疑義を感ぜざるを得ない。 かくして、規制緩和が不十分な今の日本では、まともなサービスエリアをもつ放送局を市民レベルで開局にするのは不可能に近いと言える。 ここで次のような疑問が生ずる。 @国はなぜ、この種のFM放送局に20W程度の免許しか与えないのか、せめて100W程度の出力を与えるべきではないか。Aわずか20W出力のミニFM局に対し、国はなぜ予備免許はじめ検査などをするのか、アマチュア無線の現状から見ても、おかしい。Bさらに、ミニFM局に対して放送局機材に準ずる高額な装置、設備が必要なのか、などが問われる。 以下を見ると、現在、東京23区には、渋谷区、葛飾区、江戸川区、中央区、世田谷区、江東区の6局のみである。 米国のニューヨーク市(NYC)やロサンゼルス(LA)には、あちこちに多数のFM局がある。チューナーのつまみを回すと、おそらく50局は聞こえる。現在のFMチューナーの性能からすれば、仮に東京で100W局を50局に免許を与えても混信することはないはずである。 以下は、愛知淑徳大学の北米東海岸(米国、カナダ)を現地視察した際のリポートである。米国やカナダでは、以下にあるようにひとびとの生活空間に身近な形でFM放送局が設立され運営されているのだ。
また、他の報告によれば、米国には現在12,615ものラジオ放送局があり、そのうちAM放送局が4,783局、FM放送局が5,766局もあるという。
いすれにしても、営業FM局とミニFM局を会わせ300局にも達しない日本の現状と比べるとその差はあまりにも大きい。我が国の電波メディアの市民、NPOなど非営業組織への免許数は、米国に比べ一桁以上少ない。この数字こそ電波系の独立メディアをつくる上での大きな課題を示している。 (つづく) 関東地方のミニFM局一覧 出典: http://www2s.biglobe.ne.jp/~unit973/fmlink.htm
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