皆様、
グリーンピース・ジャパンの野川です。
核拡散防止条約(NPT)再検討会議をモニターし、各国の代表や会議へ集まるNGO関係者、マスコミなどに六ヶ所再処理工場の問題を訴え、再処理規制への動きを強める働きかけをするために、グリーンアクションのアイリーンさん、原子力資料情報室、原水禁などと一緒にこの一週間ニューヨークで活動してきました。
毎日の記録をブログとして、グリーンピース・ジャパンのウェブサイトから発信しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/npt/blog/
NPT再検討会議は5月2日に開会しましたが、この一週間は議題について加盟する各国の間での調整もつかず、議題の合意は来週の火曜日まで見送られました。2000年の再検討会議(5年ごとに開かれるので、前回の会議)の最終決議文書にある内容について見直すかどうか、そして会議の中でどの決議(resolution)や結果(outcomes)について話しあうのかというところで、全員の一致が取れないようです。金曜日の午後は、さすがのデュアルテ議長(ブラジルの国連大使で、今回の会議で議長に選出された)も不機嫌な様子で、週末も各国の相談にのる予定だという事を述べて、金曜日は4時過ぎに早々と閉会しました。
国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が提案する、新規の再処理とウラン濃縮施設の凍結案ですが、すでに会議へ提出され、議題について合意が取れれば具体的に会期中の計画の一つとして、3つある専門委員会の一つ(ほぼ「第3委員会」で確定)へ振り分けられるようです。IAEAの関係者に、金曜日の午後に確認を取りました。
金曜日に国連で開いた記者会見でエルバラダイ事務局長は、もしこのまま核兵器に使うことのできる物質を生産する技術が多くの国に広がれば、核兵器を必要があれば作ることのできる「仮想核兵器国」が増えるだろう、と述べています。
「これは、今後10年から20年の間に、正式には核兵器国ではない国々が、仮想核兵器国になるということを意味しています。それは自己破壊への良いレシピになるでしょう。」
と再処理とウラン濃縮という核兵器製造技術を停止しなければ、将来どのよう
な影響を及ぼすかを改めて警告しています。
NPTという条約は、原子力技術の平和利用を加盟国の「奪い得ない権利」として認めています。こうした背景から原子力技術の推進に係わってきたIAEAの事務局長でさえ、特に核兵器製造に欠かすことのできない2つの技術(再処理とウラン濃縮)については、凍結するようNPTに加盟する各国と、また加盟していないインド、パキスタン、イスラエルなどへも呼びかけているのです。このような非常に世界が微妙な安全保障体制におかれている今、やはり日本は二度と核によるどのような犠牲を出さないためにも、六ヶ所再処理工場の計画を見直すべきだと感じています。ここに来て改めて、核の拡散を防ぐという視点から、再処理計画を中止する意義を認識させられました。
国連の中では外交上の話合いと平行して、NGOが主催する会合がいくつも開催されています。昨日は、アメリカでも有数の科学者団体であり、環境問題や安全保障問題にも取り組んでいる「憂慮する科学者同盟」による会合が開かれ、ここでノーベル物理学賞を受賞したワインバーグ博士はじめ数人のノーベル賞受賞者、元アメリカの軍縮政策立案の関係者など27人が署名した、「六ヶ所使用済み燃料再処理工場の運転を無期限に延長することによってNPTを強化するようにとの日本への要請」を発表しました。
書簡の日本語訳(仮)は、核情報サイト(http://www.kakujoho.net/)に掲載されています。また原文は「憂慮する科学者同盟」のウェブサイトでご覧いただけます。
http://www.ucsusa.org/global_security/nuclear_weapons/page.cfm?pageID=1765
国際的に、いよいよ六ヶ所再処理工場の停止を求める声が具体化しています。エルバラダイ事務局長が開会時の演説で述べたように、5年ごとにした巡ってこない貴重な話し合いの場で各国が行動することに失敗すれば、2010年の再検討会議までNPT体制は変わらず、世界の情勢は更に多くの国が核兵器製造が可能な技術を持ち始めるなど、不安定な方向へ変化するかもしれません。今、条約の話し合いが議題も決まらない状況の中、市民の中から本当に核のない世界を求め、六ヶ所再処理工場を停止する声を届けることが意義あると思います。ふぇみんの皆さんからお預かりした文書も、機会があるごとにNGOの活動家や、政府関係者へ紹介させていただいています!
今後も継続して、ブログを通してニューヨークの様子をご報告させていただきます。皆様もどうぞお体を大切に、なさってください。
野川温子
グリーンピース・ジャパン核問題担当
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/npt/index_html
ニューヨーク滞在中は、+1-646-262-3351
もしくは、gpj_npt2005@yahoo.co.jpへご連絡ください。
Atsuko Nogawa [atsuko.nogawa@jp.greenpeace.org]
Greenpeace Japan Nuclear Campaign
Currently in New York for NPT
Mobile: +1-646-262-3351
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