日本政府が法制化で全面的に頼りにしているのが内閣法制局だが、この4月、その内閣法制局が福田前官房長官に報告していたイラクの「非戦等地域」に関する解釈を、前長官が政府見解とすることを留保していたことが共同通信の配信で分かった。
さらに防衛庁長官は、この内閣法制局の解釈をもとにすると、イラクのサマワがイラク復興支援特別措置法に言う「非戦闘地域」でなくなり、陸上自衛隊の活動中止、撤退となる可能性が高いことから、同解釈に反発していたことも分かった。
共同通信の記事は、その意味で、自衛隊のイラク・サマワ地域への派兵の法的是非を判断する上できわめて重要な記事である。
4月以降サマワに何回も砲弾が撃ち込まれ、またオランダ兵が戦闘で死亡するなど、どう客観的に評価、判断してもイラク特措法による「非戦等地域」ではない、と評者らは論陣を張ってきた。
その意味で福田前官房長官が内閣法制局から報告を受け取りながら、国民に報告していなかった問題は、今後、国会でも大きな論議を呼ぶことになると思われる。また小沢一郎衆議院議員は、今後民主党の代表となったら、野党第一党党首として、この重要問題を国会で徹底論議すべきである!
※ 配信された共同通信の記事は、東京新聞など地方紙が2004年5月16日(日)
朝刊に掲載した。しかし、共同通信が配信していない朝日新聞、読売新聞、
毎日新聞等の読者には当然記事が提供されていない。毎日新聞は16日午後8時
Webで記事とし、17日朝刊に掲載した。他社も後追いであれ追跡し、より多くの
国民に知らせて欲しい。
『サドル派、国に準じる』 内閣法制局解釈『非戦闘地域』と矛盾 東京新聞2004.5.16 内閣法制局が、イラク南部サマワで復興人道支援活動を展開している陸上自衛隊部隊の撤退にもつながりかねない解釈をまとめ、四月に福田康夫前官房長官に報告していたことが十五日分かった。政府関係者が明らかにした。 福田氏は法制局の解釈を政府見解とすることを留保。防衛庁は解釈を認めれば、サマワがイラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなる可能性もあるため、激しく反発している。 内閣法制局が報告したのは、米軍との衝突を繰り返しているイスラム教シーア派の対米強硬指導者サドル師支持派を「国に準じる者」との解釈。 石破茂防衛庁長官はこれまでの国会答弁で、自衛隊の派遣先となる非戦闘地域について「海外での武力行使を禁じた憲法九条を担保する規定」と説明。その際、「戦闘」については「国または国に準じる者による、組織的、計画的なもの」と定義してきた。防衛庁幹部はサドル派について「組織性、計画性は認定できる」としながらも、「国に準じる者」と認定するのは困難との立場だ。 しかし法制局の解釈に従えば、サマワでサドル派による攻撃や応戦があった場合、イラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなり、結果的に「陸自部隊の活動中止−撤退」につながりかねない。 サドル派は十万人に上るとされる民兵組織を持ち、「反米、反占領」を主張して米軍との衝突を繰り返し、米軍が壊滅対象と位置付けている。 防衛庁によると、サマワにはサドル派とみられる約三十人のグループがあり、米国の占領統治に対して反対する活動を続けている。 十四日夜(日本時間十五日早朝)には、サマワ市街地で、オランダ軍、イラク警察と、サドル派とみられる武装勢力が衝突、イラク人治安当局者一人が死亡するなど治安悪化が深刻化している。 |