※本コラムのうち、募金行為については、「独立系メディア 今日のコラム」は、
一切の責任を負いません。応募者、募集者はいずれも自己責任でお願い
いたします。 編集部
みなさん、こんにちは。
これまで何回かにわたってお知らせした、パレスチナ、ガザ地区ラファでのイスラエルによる侵攻と家の破壊について、UNRWA(国連難民救済事業機関)が1,580万ドルの支援を緊急に要請するアピールを出しました。
詳しい状況をお伝えする前に、事務的なことですが、支援金の入金方法について連絡をさせてください。
日本からUNRWAへお金を届ける方法として、リソナ銀行を通して入金することが可能なのですが、今確認したところ入金のたびに4000円以上の手数料がかかってしまい、その件についてはUNRWA
が交渉中ということです。
なので、私の口座に入金していただいて、まとめて送金することにしました。
振込みをしていただく際、ご自身のお名前を入力しなおすことができます。
その時にお名前の最後に「ラファ」とカタカナで入れてください。
操作がややこしいという方は、メールまたは、ファックスで入金したことを
お知らせくださっても結構です。(必ずお知らせください)
振込先
UFJ銀行浦安支店
普通1173530
モリサワノリコ
メール
midi@par.odn.ne.jp
ファックス
047−352−5538
これまでも、あまり大々的にお金を集めるような呼びかけはしませんでしたがそれでも、メールを読んでお金を振り込んでくださったり、知人とオークションなどをして売上金をとどけてくださったりして、これまでにUNRWAだけで、短期で集まった1540ドル届けることができました。(今回UNRWA
が必要としているお金のちょうど1万分の1くらい)
※この2年間報告会などでお預かりした支援金は上記も含めて70万円に上り、全てUNRWA
のほかにも、現地の病院やNGOなどに、現金、薬、絵本などとして届けることができましたが、今回呼びかけて集まったお金は、使用目的をラファの家屋破壊の緊急支援に限定します。
お顔も見えない方たちに、呼びかけてお金を集めることや、お金を集めるためだけに文章を書くことに、自分自身戸惑いや後ろめたさがあります。
私は何をやっているんだろう?お金ってなんだろう?って思うこともあります。
しかも、イスラエルが家を壊し、そこへ私たちが支援して、家を失った人々がそこから離れて、もっと安全な場所に移動して家を建てることができたとしても、それまで過ごした空間は失われ、もともとの家があった破壊の現場は、彼らの思い出や記憶ごとイスラエル軍に奪われ、取り込まれていくわけです。
それは、イスラエルが建国を決心したときから、ずっと繰り返されてきました。
パレスチナの人々の未来に投資しているとは言えませんし建設的な支援ともいえないのかもしれません。
「イスラエルの尻拭い」とも言えます。
でも、遠くにいる私たちが遠くなりに事情を知ろうとして、痛みを共有し、その結果支援という形ででも、世界中から反応が集まっていくことは、パレスチナの人々の小さな希望となるだけでなく、イスラエルへの大きなプレッシャーともなるのです。全ては止めることができなくても、確実に抑止になります。
家を破壊され、住む場所を奪われた人2万1142人・・・だそうです。
あの、狭いラファの地域だけで(5月30日現在)
ラファに何度も視察に訪れて、状況を伝えてくれている安藤さんの報告より。
「 家屋破壊の規模を図るのは破壊された家屋の数字ではなくて、一人一人の個人に降りかかる災難です。一戸一戸の家にストーリーがあり、長年お金を蓄え建てた人生の集大成であったり、家族の集まる場であり、そこに住む一人一人の思い出が凝縮している場所を、ブルドーザーで瞬時に壊してしまう、などということは、一軒たりともあっていいはずがありません。
ましてや事前の通知も荷物を持ち出す時間も与えずに壊してしまい、補償することもなく壊しっぱなし、というのは、中に住んでいる人を同じ人間と考えることができない人たちの仕業に思えてなりません。」
森沢典子
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ガザより UNRWA に勤める安藤直美さんからさっき届いた手紙と
UNRWA の緊急アピール
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ラファでは昨日深夜、ボーダー沿いフェンスからイスラエルの戦車が何十台もブラジル、ブロックO地区にまた移動し、そこでは銃撃やアパッチの旋回の音が激しく、ブルドーザーによる土地ならしも行なわれていた、という報告が今朝入っていました。
UNRWAが一昨日、国際社会(ドナー国…日本は主要ドナーの一つ)に向けて、ラファの危機的状況への対処としての補足アピール(昨年末に出した2004年の緊急アピールへの補足)を発表しました。
個人の感覚からすると求めている支援額の桁が大きく感じるかもしれませんが、イスラエルの侵攻による被害によって、その回復にはこれだけの金額が必要とされている、、という参考にしてください。
拙訳の後に、原文(英語)の順でご紹介します。
安藤
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UNRWAプレスリリース 5月31日
UNRWA: ラファの危機的状況に対して1,580万ドルの支援をアピール
エルサレムー 国連パレスチナ救済事業機関(UNRWA)は、本日国際社会に対して、ラファの人々の緊急的ニーズに応えるため1,584万ドルの支援を求めました。このアピールはインティファーダが始まって以来、ガザにおいて、数週間に続くもっとも激しい破壊の後に発表されました。
UNRWAは家を失った何百もの家族、稼ぎ手が死傷した家族、継続した医療ケアの必要な家族に対して現金、食料、住居などの緊急支援を行なうための資金を必要としています。
このアピールの下、UNRWAは最近のイスラエルの侵攻の被害に対処していくための緊急的支援を必要としている760家族に対し現金支援を行なう予定です。UNRWAはほとんどの人々が支援を信頼して求めることができる唯一の存在です。UNRWAはこの現金支援プログラムのために22万8千ドルの資金が必要としています。
この760家族のうち、約560家族がUNRWAの緊急シェルター計画における家屋再建の機会を受けることができます。彼等は当座の間、住居を借りる資金が必要になります。このために67万2千ドルが必要となります。また長期的にみて、UNRWAは新しい家屋を建設する資金が必要になります。UNRWAでは、これらの家族が恒久的に住むための家屋建設に1,150万ドルが必要と見積もっています。この金額は侵攻時に様々な度合いで破損を受けた244家屋の修繕費用も含まれます。
5月30日時点で、ガザ地区において家を失った人は2万1,142人にもなります。現在に至るまでUNRWAが新しい家屋を提供することができたのはその三分の一にも及びません。ガザにおいて依然シェルターを必要としている人々のための家屋再建を実施するために、UNRWAは3,850万ドルを必要としています。
UNRWAは現在ラファの三つの学校に避難している約2,500人の人々に食料を配給しています。この食料配給を最低でもあと2ヶ月続けるために、また家を失った人々に日用品を提供するためには、84万2,000ドルが必要です。さらにラファにおけるUNRWAの医療品の在庫を補填し、また車イスや義肢を負傷した難民に提供するために、あと11万ドルが必要です。
UNRWAはこのアピールにおいて、上下水網やその他のインフラ施設への破壊によって深刻な衛生環境の危機に晒されているラファのタルエッスルターン地区の破損したインフラ修理の資金についても呼びかけています。このアピールにおいてインフラ施設修繕のための金額は約92万8千ドルとみています。また、UNRWAの緊急支援の運営費用を賄うために、別途資金が必要です。
今回のアピールの発表にあたり、UNRWAのピーター・ハンセン事務局長は「ガザ地区において最も打撃を受けた場所でありながら、支援を求める先は数多くありません。ラファは常に貧しい場所でした。そして今では荒廃した場所ですらあります。何百もの貧窮家族が、この非常に深刻な人道的危機に対処するために支援の手を差し伸べているUNRWAや国際社会に頼っています。」と述べました。
ラファにおいて影響を受けたほとんど大多数はUNRWAに登録がある難民で
す。UNRWAは国連機関、NGO、パレスチナ各省庁で構成する活動調整グループの議長であり、ガザ地区におけるほかの主要な救済グループと調整してこのアピールをとりまとめました。
UNRWA Press Release 31 May 2004
UN Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East-
Headquarters Gaza
website: www.unrwa.org
Press Release No. HQ/G/17/2004
31 May, 2004
UNRWA Launches $15.8 Million Crisis Appeal for Rafah
Jerusalem – The United Nations Relief and Works Agency for Palestine
Refugees (UNRWA) today launched an appeal to the international
community for $15.84 million to meet the immediate needs of the
people of Rafah. The appeal follows weeks of the most intense
destruction in Gaza since the start of the intifada.
UNRWA needs the funds to provide emergency cash, food and housing
assistance to the hundreds of families who have lost their homes,
had a breadwinner killed or wounded, or who are in need of ongoing
medical care.
(全文はこのサイトに)
The text of this press release is available at
http://www.un.org/unrwa/news/releases/pr-2004/hqg17-04.pdf
Also visit
http://www.un.org/unrwa/emergency/appeals/rafah_appeal.pdf to get
the full text of the Supplementary Appeal for Rafah
以上
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次はナブルス通信(こちらもさっき出たばかり)です。
ずっとメディアチェックを行い、情報を発信してきてくれたナブルス通信の鬼編集者ビーさんが、ラファの状況に関してとうとうマジギレして書いた渾身の記事です。関西弁も炸裂してます。
彼女の記事からは、パレスチナで起きていることは、昨日爆発があったとか侵攻があった・・・と出来事だけを単発で見ても、何だかよくわからないけど、ちょっとでも冷静に、少し遠目で、一貫して事態を追えば、イスラエルの目指すものが一貫して見えてきて、それを正当化するためにいかにコメントが一貫していないか、よくわかります。
森沢典子
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○○○ナブルス通信 2004.6.2号○○○
http://www.onweb.to/palestine/
Information on Palestine
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◇contents◇
「軍が戻ってきたラファ」 編集部・ビー・カミムーラ
◇軍が戻ってきたラファ
◇プレイバック「レインボー作戦」
◇こんなこともあった、ラファ
◇最後に
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◇軍が戻ってきたラファ
(今回は普段と書き方を変えて、個人的な文章としてお送りします。今後、同じように書くかどうかはわかりません。が、今回は根が下品なのを抑えて書くのができない気分なので、好きなように書きます 編集部・ビー・カミムーラ)
☆もう、軍が戻ってきた! 家屋破壊が再開されたラファ
「我々は戻って来るぞ」とイスラエル軍の高官が匿名で語っていたとおり、29日未明から30日にかけて、ラファのブロックJにイスラエル軍が侵攻した。20台の戦車と2機のアパッチ攻撃ヘリを従えて、軍用ブルドーザー5台、ラファのブロックJに入り、性懲りもなく家屋破壊を繰り広げた。
『ラファ・トゥデイ』には「電気が切られた。アパッチが旋回している」という電話での報告が上がり、どうなっていることやらと思っていたが、戦車が集中砲撃をくりだし、アパッチヘリがミサイルを落とし、そしてブルドーザーは何の警告もなしに家々を破壊していった。
この一晩で新たに壊された家は25軒。60家族、352人がすみかを失ったとパレスチナ人権センター(PCHR)は発表している。
☆報道から消えたラファ
世界的な(日本などは除く)非難を巻き起こした「レインボー作戦」からほぼ一週間。たかだか一週間で、また、こんなことができるというのも不思議だが、このことはほとんど報道されなかった。日本でニュースチェックをしている私は30日に起きたガザ市での暗殺攻撃(3人が殺され、10人ほどが負傷)以外に、ガザのニュースを見ることはなかった。ロンドンでチェックをしているマークですら、ほとんど見なかったというのだから、世界的にほとんど報道されなかったのだろう。
「もう、ラファのことは飽きた」?「新鮮味がない」?「規模がそれほ
ど大きくない」?
ジャーナリストのほとんどが引き上げ、「撤退」の言葉がばらまかれ、「事態が収束」したかに思えるような雰囲気のなかで、ささっと破壊を行うというイスラエル軍の行動力は、ある意味すごい。そして、マスメディアの性質をよく見抜いている。
この破壊の前日にラファを訪れた人はこう報告している。
「タルエッスルターン地区の中心部は道路という道路のアスファルトが掘り起こされていました。また、武装ヘリからミサイルを受けて鉄 くずとなってしまった車もいくつかまだ道に放置されていました。
上下水のインフラ施設が壊されており、汚水が道路に溢れ、裸足のこどもたちがその上を走り回り、衛生環境がよくありません。
同地区が一週間近く閉鎖されて、先週はじめにようやくイスラエル軍が撤退してから復旧作業が進んでおり電話や水などのライフラインは 回復したようですが、まったく別の場所になってしまいした。
幼稚園のフェンスや建物もひどく壊されていて、子どもの遊戯器具が無残にグランドに倒れていました。
「トンネル」もしくは「テロリスト」もしくは「武器」を探す目的で、道路やインフラ施設や幼稚園がこれほどまでにひどく破壊される意味の見当がまったくつきません」
こんな状態からラファが立ち直れないままに、さらなる新たな破壊。世の中をなめきっているとしか思えない。
http://www.pchrgaza.org/images/2004/rafah_05/7.htm
(30日のブロックJの写真。サイトの後半に)
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◇プレイバック「レインボー作戦」
☆イスラエル国内での反応
世界的に大きく報道されたラファでの破壊がイスラエルにもたらしたものは、じつは大きかった。その象徴と言えるのが、ラピド法相の発言で、イスラエル国内的に大きな波紋をひろげた。その発言というのは、「がれきになった家の跡地で薬を探している老女の姿は、私に自分の祖母を思い出させた」(ハンガリー出身のラピド氏の祖母はホロコーストで家を追われている)。「イスラエルは破壊と、ラファでの家屋破壊をやめなければならない。それは人間的な行いではなく、ユダヤ的な行いでもない。このことは世界のなかで我々自身の立場に重大な問題をもたらす。しまいには我々は国連からはじき出され、ハーグ国際司法裁判所で罪を問われることになる」(『イディオット・アハロノオト』紙など
より)
さらには、「先週、米国に滞在していたが、世界から我々は怪物のように見られていることに気づいた」とも語っている。シャロンとシャローム外相らはこの一連の発言の取り消しを求めたようだ。ラピド氏は「ホロコーストとは言っていない」と弁明したが、家屋破壊に対する批判は取り下げなかった。
ちょっと、待ってくれ、こっちこそ、ショックだ。「レインボー作戦」とやらが始まる直前に、家屋破壊を正当化する判断を出したのはイスラエルの高裁だぞ。ラピド「法相」のあんぽんたんぶりもたいしたものだが、これまで延々と続けてきた家屋破壊を知らなかったのか?!
少なくとも昨年10月のラファ大侵攻は、相当世界的にカバーされてきた。
しかし、ラピド氏だけではなく、イスラエル国民の大半も今回、やっとラファの惨状を目にして、初めてショックを受けたらしい(マジで)。相当な規模の犠牲がでないかぎり、目に届くこともないというのがよくわかる。
☆イスラエル・メディア「けっこう高くついたやんけ」
イスラエル国内の反応はイスラエルの大衆紙『マアリヴ』によく表れている。
「ラファでの壊された家々とがれきの中にたたずむ持ち主たちの残酷な写真はイスラエル人を含む多くの人々の心に訴えかけるものだった。そして、イスラエル軍が正当な(原文ママ)目的で劇的な行動をすることが制限されるということが明白になったのだ」
なんだかよくわからない文章だ。同じ『マアリヴ』の中のこちらのほうが明快ではある。
「作戦のつけは大きかった。国際社会に引き起こした非難とそれにより作戦を中止しなければならなかったことを考えると、この作戦はほとんど失敗だった」(25日頃の記事。APによる英文での紹介より)
同盟国である米国すらも今回だけは国連安保理の決議に拒否権を発動しなかった(できなかった)ことも相当に大きいようだ。
「えらく高くついたやんけ」というのが、イスラエルのメディアでの一致した見解であることは確かだ。
☆迷走する軍部の発言
写真一枚ですぐばれるイスラエル軍の嘘については、前回も伝えているが、「民間人は殺していない」という発言が一転「少しは殺した」となったのを英国・インディペンデント紙が25日に報じた。それでも、「ミサイルと砲撃を受けたデモで死んだもののほとんどが武装していた」から「武装していたのは1名だけ」に変わるというような中途半端なものだ。犠牲になった子どもの数も実数よりかなり少なく言っている。
「動物園を壊してはいない」はいつのまにやら「道には地雷が埋められているので危険だから、動物園を通っていくしかなかった」ということになった。どこかチンケな言い訳だ。殺された動物たちの死骸やぐちゃぐちゃになった檻の映像は、世界に広く伝えられたので、何かを言わないとならなくなったのだろう。だいたい、他の道路をぐちゃぐちゃに破壊して進んでいることとまったく辻褄が合わない。
いわゆる武器の「密輸」トンネルも「90本はある」という壮大なスケールから「3本あった」ということにスケールダウンした。これも実際にあったのかどうかは誰も確かめられていない。ラファではトンネルを掘るといっても80mが限界だという証言もあり、エジプト国境から80m以内はもうとっくに更地にされているようなラファでそんなにトンネルがあるとは思えない。
何と言っても、集中して家屋破壊の被害を受けた地域は国境から1kmとか700mも離れているタルエッスルターンやブラジル地区の家々なのだ。
子どもたちの殺害に関しては、アムネスティ・インターナショナルだけに限らず、イスラエルの国内人権団体からも「独立した調査委員会で調べるように」という要請があがっているが、軍は「パレスチナ人の武装派がやった」と言い続けている。
このような軍部の発言の中で、ひときわ目を引いたのは、「作戦は終わっていない。一息ついたら、またやるぞ」という匿名の軍高官の発言だった。これは25日にAPやガーディアンなどが伝えている。
実際にガザの作戦司令部責任者も「作戦は終わったとは言っていない」と発言し、国際的な批判を受け止めているふしはさらさらなかった。
(ついでに言えば、シャロンの報道官、ラアナン・ゲイセンが27日にイスラエル軍放送で「我々は(ラファで)米国がファルージャでしていること、ロシアがチェチェンでしていることをやったまでだ」と発言したという[『アル・アハラム・ウィークリー』による]。レスポンスの言葉も出ないほど、とてつもない発言だ。それなりに自己認識能力があるというべきなのか。際限のない開き直り能力があるというべきなのか。あまりにも恐ろしい。少なくとも、この人たちの世界ではファルージャやチェチェンで起こっていることが「どうってことない」ものだというのは、しっかり把握できる)
かと思うと、モファズ国防相は「将来的にはエジプト国境沿いも含めて、ガザから全兵士を撤退させるつもりだ」などと語っている。
そして、この29日〜30日にかけての、新たなラファでの家屋破壊開始。行動がもっとも確実に彼らの思想を伝えている。
☆「ラファ、5月の虐殺」の統計的事実
5.13-24 にラファで起こったこと(パレスチナ人権センターによる)
・56名が殺された(うち、45名が民間人。そのうちの10人が子ど も)。負傷者は最低200人にのぼる。
・220軒の家が全壊。140軒が部分的破壊。家を失った人は821家 族、4847人。
[UNRWAの発表では、18〜23日までの間に45軒が破壊され、575人が家を失ったとある。5月だけで、この時点までには、155軒、 1960人がラファで家を失った。数値の違いは、基準の違いによる。 おそらくUNRWAは文句のつけどころがない、かなり厳しい基準を用 いていると思われる。家が建っていても、住めない状態になっている人もいる]
・最低700ドゥナムの農地がずたずたにされ、46軒の商店、モスク、墓地、インフラが破壊された。[1ドゥナム=1000平方メート ル]
UNRWA発表では、ガザ地区だけでこの5月末までに家を失った人は2万1442人。(2000年9月以来)
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これらは単なる目安の数字でしかない。ラファにたくさんの友人を持つ人はこのように書いた。
「家屋破壊の規模を図るのは破壊された家屋の数字ではなくて、一人一人の個人に降りかかる災難です。一戸一戸の家にストーリーがあり、長年お金を蓄え建てた人生の集大成であったり、家族の集まる場であり、そこに住む一人一人の思い出が凝縮している場所を、ブルドーザーで瞬時に壊してしまう、などということは、一軒たりともあっていいはずがありません。」
☆パレスチナ人による分析
トンネル摘発などを理由にして、エジプトとの国境沿いにイスラエルがコントロールする地帯を広げていくために家屋破壊を続けているというのが、パレスチナ側の最も基本的な見方だが、今回の虐殺、家屋破壊に関しては、別な側面を指摘している人もいる。
「今回、ターゲットにされたタルエッスルターンやブラジル地区にはそうもレジスタンスはいない。レジスタンスが多いのは、他の地域だ。それなのに、ここが標的にされた。というのは、兵士を殺されて、志気が落ちているイスラエル軍にとっては、簡単に攻撃できる地域が必要だったからだ」
このように語ったのは、タルエッスルターン住民のサディヒ・アブドゥッラーさん。(26日付 ガーディアンによる)
実際に殺されたり、逮捕されたレジスタンス・メンバーは今回は少なかった。銃撃「戦」ということも、ほとんど報告されていない。(が、毎日新聞のデスクのように、平気で「最激戦区」と書いてしまう勘違いも甚だしいメディアが存在している?
殺された子どもたちの多さを見ると、確かに「たやすく殺せる相手」をわざと狙っているような感覚が沸き上がる。お菓子を買いに外に出た3歳の女の子さえ撃ち殺しているのだから。
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◇こんなこともあった、ラファ
☆「今、家が壊されてます」「できることは?」「ないです」
ブラジル地区に住むイブラヒム・アブ・ハマドは15年間、自分を
雇ってきたイスラエル人の社長に携帯電話から電話をかけていた。
(このところ、ラファから出勤不可能になっていて、事実上解雇だ
が、長年の信頼関係がふたりにはある)
「ボス、今、うちがブルドーザーで壊されてます」
「まさか、おまえの家は国境から遠いじゃないか」
その事実をやっとわかってもらうと、社長は尋ねてきた。
「どうしたら、助けることができるんだい?」
「いや、無理です。もうブルドーザーはここに来てます」
ハマド一家は白旗を振りながら、かろうじて家から脱出することができたが、家はがれきになった。
ハマド氏は15年間、イスラエルで建設業につとめてきた。社長はできることなら、また、ハマド氏に復帰してもらいたいと思っている。 「イスラエル人の家を建て続けてきた私が、イスラエル人に家を壊されるなんて……」(25日付 インディペンデントによる)
☆ブルドーザーが「希望」という名の学校を脅かす
──破壊に怯える聾学校
ガザ地区南部唯一のろう学校がラファにある。その名は「希望の学校」。生徒数131人、4歳から16歳までがこの学校に通っている。
この学校は今や一面のがれきの中にぽつんと取り残されて建っている。ダルウィーシュ校長はこう語る。
「前は国境まで10軒の家があったんです。でも、今は私たちの学校が最前列になってしまいました。今やここは最も危険な地域です」
校長は今回の攻撃を察知して、学期末試験を繰り上げ、生徒たちを早々と家に戻していた。
3ヶ月前に、イスラエル兵はこの学校を占拠し、2日間、狙撃拠点として使った。そのときに最上階の窓は全部木っ端みじんにされ、51のドアも吹き飛ばされた。
それ以前の昨年10月から、この学校は校舎の上の階を使うことができなくなっていた。「私たちは教育を続けることに力を注いでいますが、銃撃がひどいところからは逃げないといけません。あまりに銃撃がひどいので、もう上の階は使うことができなくなりました。狙撃塔が銃撃を開始したら、私たちは生徒たちに気を配り、校舎の内側に集めます。聞こえない者にとっては、それは簡単なことではありません」
この学校では2年前に16歳の生徒が胸を撃たれて殺された。銃撃音の開始が聞こえなかったから殺されたのだと生徒たちは言っていて、このことがみなのトラウマになっている。
この「希望の学校」は替わりの土地を何ヶ月も前から探し始めた。それがみつかるまでイスラエルは学校を破壊しないと言っている。
(25日付 ガーディアンより クリス・マックグリール記者)
☆動物園の破壊とブラジル地区
http://www.onweb.to/palestine/siryo/rafa-zoo.html
「駝鳥もホームレスになった」 マーク
(通信で送っていない分の翻訳文章です)
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◇最後に
ラファの破壊はこの5月に突然、始まったわけではない。2000年の9月
からずっと継続的に行われてきたことだ。
http://www.onweb.to/palestine/siryo/onedayinrafah.html
「ガザでの「地獄」の一夜」 2003年3月の文章
http://www.onweb.to/palestine/siryo/nab-sj31dec03.html
「静かな<ジェニン>──ラファでゆっくりと進行している虐殺」
2003年12月の文章
ずっと継続して『ラファ・トゥデイ』はこの状況を伝え続けてきている。
しかし、ここまでそれを止めることはできないできた。
そのうえ、今回の虐殺でこれだけ批判が高まっても、まだ小出しに破壊を進めているありさまだ。
かえって「5月よりはひどくない」という麻痺が起こる分、大きくない破壊は目立たなくなったと言うこともできる。すでにそれがこの29〜30日に証明されてしまった形だ。
この麻痺に浸かりきってしまうと、さらにラファでの破壊はとどまることがなくなってしまう。
これを書き終えようとしている今、また新しい侵攻の情報が入ってきた。ラファに住む高校生のアネスさんから、ロンドンに伝えられ、ウェブに上がったものだ。それによると、1日の夜から戦車などがまた入ってきて、ラファのサラハッディーンのあたりで家屋破壊がなされている。近づくことができないので、詳しい状況はわからない。
http://www.rafahkid.net/blog.html
Incursion & Demolitions (June 02, 2004)
そして、これを伝えているマスメディアの情報はひとつもない。
「いったい、どうなっているんじゃ!?」
大きく報道することで、本当はこのような破壊を止めることができる。見ること、世界中がみつめること、見ていると伝えること、それを続けていくこと。
破壊の規模に関わらず、前回よりも今回さらに大きな非難が沸き上がる。そんなふうであれば、これを続けていくことはできない。
それとも、一度にものすごい数の人間が殺され、町がほとんど消滅するのでもないかぎり、注目もされないのだろうか。
ラファの破壊は突発的に起こる出来事ではない。防げないことではない。占領の構造のなかで、ずっと継続されてきた行為なのだから。
(あ、だんだん、怖いぶっきらぼう文体になってきた。怒るとどうもこうなるのです)
ラファのアネスさんは「近寄って、侵攻の様子を探らないで。そんなことをしていたら、殺されてしまう」と言った友人にたいして「今、これを伝えるのが僕の仕事なんだ。ラファのことを伝えなくては」と答えたという。
そう、アネス、どんなに微力でもそれをさらに伝えるお手伝いができるよ──と私はアネスに伝えよう。「バカヤローッ」と声に出して言う替わりに(いや、言いながら)これからも伝えていきたい。
*さらに今、着たばかりのUNRWA[国連パレスチナ難民救済事業機関]、プレスリリースより。
6月1日、イスラエル軍は戦車から、ラファにあるUNRWAの男子小学校を銃撃し、何発かが校舎にあたり、さらに2発が窓から教室に入ったことということだ。そのうち、1発は破片が10歳の生徒の頭に当たり、軽傷。もう1発を首に受けた生徒は緊急手術を受けて、依然として重体だが、容態は安定してきているという。
UNRWAは強い非難をイスラエル政府に出している。(2004.6.2)
**
やっと出た水曜のラファの写真記事:
http://news.search.yahoo.com/search/news/?p=Rafah&c=news_photos&n=50&ei=UTF-
8
(上記の学校で撃たれた少年の写真、血塗れになった教室の写真なども出ています。今のところ、新たなラファ侵攻についての単独の記事は配信されていません)
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※「ラファ、5月の虐殺」についての経過は
「パレスチナ情報センター」topにまとまっています
http://palestine-heiwa.org/
(募金、動画、その他の情報豊富)
※ラファについての総合情報:
「特集:絶え間ない攻撃にさらされる街、ラファ」
http://palestine-heiwa.org/rafah/index.html
※ガザ地区の地図
http://www.palestinercs.org/images/Maps/gazamaplg.jpg
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◇どうか、イスラエルに声を届けてください
・参考になる文例と送り先は
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/palestina0405.html
・米国・国務省へのサンプル・レター (以下の下の方に)
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/palestina0405c.html
(上記のメイン内容は、ラファのデモへの攻撃を記録したフォトストー
リーです。途中、かなり生々しい写真があることにご留意ください)
・米国にイスラエルへの軍事支援を止めるよう働きかける要請署名
http://www.stop-us-military-aid-to-israel.net/petition/
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◇この文章は以下に掲載予定
http://www.onweb.to/palestine/siryo/rafanakba2jun04.html
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◇ナブルス通信の翻訳をしているリック・タナカさん来日!
「来日って?」と思うみなさん、リック・タナカさんはふだんはオーストラリアに在住なんです。今回は、パーマカルチャーの大家、デビッド・ホルムグレンさんの講演ツアー通訳として来日し、日本列島を「巡業」中です。
パーマカルチャー(permanent + agriculture)に興味がある方、ホルムグレンさん、リックさんに興味のある方はどうぞ講演に。
http://begoodcafe.com/project/per_culture_david.html
(6月9日 表参道・東京ウィメンズプラザ)
他、小田原、京都などの日程(知っている分だけ)は以下に。
http://nekokabu.blogtribe.org/entry-0d78882892bd3c899b233e3a585d82dc.html
リック・タナカさん自身の著書『オーストラリア楽農パラダイス』(東京書籍)も、パーマカルチャーがわかるばかりでなく、石油の確保のために人々が殺されていく今の世界で、自分がどこに立ち、何を食べて生きていくのかということを考えさせてくれて、そのうえ、楽しい本です。
オススメ!
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◇P-navi info <http://nekokabu.blogtribe.org/>
[ほぼ毎日更新中。編集者ビーの速報、ミニ・インフォ、コラムなど]
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◇ナブルス通信の配信お申し込み、バックナンバーは以下に。
http://www.melma.com/mag/84/m00109484/
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