衆院議院運営委員会理事会は8月、質問主意書提出について「必要のあるものは事前に理事間で協議する」と合意した。質問提出数が急増してきたため、答弁書作成に費やす事務量の増加に困った政府が与党に提出制限の検討を申し入れたことが背景にあるという。
私は、中村敦夫・前参院議員の政策秘書として、6年間で質問主意書48件の提出を補佐してきた。その経験から、制限論に異議を唱えたい。
質問主意書とは、必ず政府から回答が返ってくる公開質問状である。国会法に基づく制度で、国政全般について取り上げることができ、会期中は国会議員のだれもが一人の判断で提出できる。そのため、議員の関心に沿ったテーマを機動的に質問できるのが特長だ。
例えば、中村前議員は多くの公共事業問題を質問主意書で追及してきた。アスベストの使用禁止を求めた質問が政策転換のきっかけとなるなど成果も得た。
こうした質問制度は、議院内閣制の国なら、どこにもある。議院内閣制は議会の信任を政府の基盤としているため、政府を恒常的にチェックすることは議会の責務だからである。質問主意書は議院内閣制とコインの表裏をなすものであり、これを制限しようとすれば、議院内閣制の根幹を揺るがすことになる。
確かに、質問主意書への答弁書は、内閣法制局の審査や閣議決定などの厳格な手続きを必要とするため、行政職員にとってみれば負担が大きい。だが、質問主意書に負担を感じるのは、政府・与党自身の姿勢に大きな原因がある。
一つは、都合の悪い情報を隠そうとする隠蔽体質である。答弁書の作成には、言質や情報を極力与えないようとするための協議や調整に、多くの手間が取られてはいないか。もともと、情報を積極的に公開していれば、資料を求めるたぐいの質問はおのずと減少するはずである。
次に、行政職員にとって国会関係の非公式業務が膨大なことである。非公式業務とは、行政機関が自らの政治的意思を実現するために、有力議員などに法案や政策の実現を根回しすることなどを指す。公式業務の答弁書作成を、それらと同様の国会業務として大きな負担に感じてしまうのである。行政職員の負担軽減を真剣に考えるならば、まずは有力議員などへの根回しを廃止してはどうか。
実際、質問主意書の提出が盛んになり、政府・与党がそれを脅威に感じていることは、本来の役割が果たされていることの表れであり、喜ぶべきことである。
むしろ、議論となったこの機会を捉え、閉会中の質問主意書提出も認めるなど「質問制度」の拡充によって国会の行政監視機能を強化するのが、時代の要請といえよう。
(了)
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