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稀代のペテン宰相が弄ぶ多国籍軍参加と屁理屈
田中 康夫
日刊ゲンダイ 2004年6月17日
「奇っ怪ニッポン」に収録


掲載日:2004.6.27

 田中康夫氏は、日刊ゲンダイの水曜日版に毎週コラムを寄せている。奇っ怪ニッポンだ。毎号、作家、田中康夫ならではの論考を書いているが、なかでも2004年6月17日号に日本の将来を占う上できわめて重要な論考を書いている。ぜひ、ご一読頂きたい。 

 出典・原典は→ http://gendai.net/contents.asp?c=025&id=15009

 小泉ワンワン宰相は、“稀代のペテン師”であります。多国籍軍に参加はするが、日本独自の判断で途中撤退も行い得る、などと公言ならぬ高言・広言・巧言を重ねているのですから。

 因(ちな)みに物の本に拠(よ)れば、高言は、偉そうに大袈裟(おおげさ)な物言いをする事。広言は、無責任に当たり構わず言い触らす事。巧言は、人を騙(だま)すべく口先で上手(うま)く言い切る事。何(いず)れも、純ちゃんにとっては朝飯前の作業であります。

 が、「自衛隊は多国籍軍の中で活動はするが、引き続き、我が国の主体的判断の下、我が国の指揮に従い活動を行うものであり、統合された司令部の指揮下に入る事はない」との説明が「主体的判断」に基づく代物だなんて、何処(どこ)の誰が納得するでありましょう。

 多国籍軍にも参加しない意気地無しの国と全世界から馬鹿にされても良いのか、などと信心深い善男善女を“思想洗脳”してきた政権与党の皆々様は、その一方で、「危険が高まったから、途中でイチ抜けたぁ」、などと“広言”すれば撤退も可能だと、本気で思ってるのでしょうか?

 それこそは、意気地無しの国、と嘲(あざけ)り蔑(さげす)まれる状況に陥ります。多国籍軍に参加するとは、それなりの、ではなく、それほどの「覚悟」を必要とするのです。故に、国民合意が求められるのです。而(しこう)して、その国民合意が何ら得られていない現実は、明々白々です。

 にも拘(かかわ)らず、文字通り多国籍軍が多国籍軍として機能し続ける上での根幹とも言える「統一された指揮」、即ち「アンダー・ユニファイド・コマンド」を、「統合された司令部」なあんて“御為倒(おためごか)し”な解釈へと今回、定義変更したから齟齬(そご)はない、などと強弁しているのです。呵々(かか)。それ自体が齟齬でしょうに。

 とまれ、済(な)し崩し的に思い付きで物事を「断行」する小泉ワンワン宰相の下、専守防衛であった筈(はず)の日本は、集団的自衛権を行使する「普通の国」ならぬ「浅薄な国」へと朽ちていくのです。

 危険を感じた、との極めて情念的な理由のみを以(もっ)て、嘗(かつ)ての盧溝橋事件に象徴される、自ら戦争を仕掛ける事を可能とするのが、集団的自衛権の「旨み」だからです。イラクに留まらずソマリア、パナマ、キューバとアメリカが歩んできた、お節介で御為倒しな歴史を紐解(ひもと)くまでもなく。

 甘チャンな「覚悟」で知られるアイスクリーム好きの安倍(晋三)ちゃん辺りは、近い将来に徴兵制が敷かれる前に、自分の可愛い豚児を海外留学と称して脱出させておいた方が宜(よろ)しいかも。なあんて、笑い事では済まされない、とんでもなく焦臭い世の中になってきました。