泰阜村選挙人名簿登録異議申立棄却決定取消請求事件に関し、6月24日に長野地方裁判所が下した、田中康夫の選挙権は泰阜村でなく長野市に存する、との判決を不服として、僕は7月5日、最高裁判所に上告を申し立て、受理されました。
長野市から泰阜村に転出転入した昨年9月26日から今年3月1日までの158日間、相対的に最も多く寝泊まりしたのは長野市のマンションの一室で、故に松島貞治村長宅の一室を間借りしている僕を選挙人登録した泰阜村選管は誤り、と判断したのです。
小泉純一郎氏が首相就任以来の3年間、最も寝泊まりした場所は公邸です。正確を期すれば、前半は千代田区永田町の公邸、後半は品川区東五反田の仮公邸。とまれ、住民登録している横須賀市に寝泊まりは疎(おろ)か、足を踏み入れたのも、新聞各紙の「首相動静」に基づくと、僅か1日。
「現実に泰阜村の区域内を生活の本拠とし、同所に住所を有していたとは認められないから、本件登録に係る選挙人名簿には誤載がある」との判決に従うと、小泉純一郎氏を登録し続ける横須賀市の選挙人名簿には誤載が有り、取消を免れない、って話になります。
加えて、こうした取消請求の訴えを、日本中の誰もが起こせます。泰阜村選管に異議申立可能なのは地方自治の本旨に基づくと村民のみで、何(いず)れも長野市在住の自民党県連幹部らは原告適格を有さない、と泰阜村選管及び参加人の僕は主張したのに対し、長野地裁の辻次郎裁判長は全国津々浦々の有権者に原告適格を認めたのですから。
両親と共に国立市在住だった夫婦が、隣接の立川市に転居した途端、両親の1人が介護を必要とし、夫も関西に転勤、妻は週に4日、従前と同じく国立市で寝泊まりしていた場合、国立市長は立川市長に住民登録の抹消を求めねばならない、って事になります。
のみならず、単身赴任者の寝泊まり実態も常時、基礎自治体たる市町村は調査・把握していなければならぬ羽目に陥ります。取り分け、鷲沢正一・長野市長に於(お)かれては。
即ち、元日弁連会長の土屋公献氏らが唱える「住所複数説」を採らぬ限り、斯(か)くも交通網、IT網が整備され、人口動態の概念も変化した今日、恐らく聡明なる総務官僚は既に懸念しているでありましょうが、住民基本台帳法自体が成り立たなくなるのです。
霞が関に事務所を構え、年来に亘(わた)って僕の弁護人を引き受けてきた中尾昭氏と長野県在住の齋藤泰史氏に加え、法曹交流の一環として日弁連の要職から司法の場へ移り、松山地方裁判所長を務めた後、再び弁護士として活躍する澤田三知夫氏の3氏を代理人として、上告は7月6日に受理され、審理が始まります。【田中康夫】 |