小泉純一郎首相の制度改革の要のひとつに国から地方への税源、財源、権限等の移譲にに関するいわゆる「三位一体改革」がある。
この三位一体改革に、当初から疑義、異論を唱え、さらに対案を模索してきたふたりの知事が今後連携する可能性がでてきた。
田中康夫長野県知事と石原慎太郎東京都知事だ。
両知事は、歯に衣着せぬ物言い、ブレない理念で国民的な知名度抜群、今や並みいる大臣や国会議員も、まともなディベートを挑めない希有な作家出身の政治家である。
総務官僚主導の現在の三位一体改革、すなわち国から地方への税源、財源、権限は、どうみても中央集権的で国の都合による地方制度改革となっている。まさに矛盾に満ちた地方制度改革となっている。
常日頃、国家像や思想で対極に位置する両知事だが、今回、国の本末転倒な地方制度改革に明確かつ連携して反対。同時に本来あるべき地方制度改革について政策提案、実行を模索する模様だ。
日本の知事の多くが、日本社会の革命、改革を忘れ、「観客民主主義」と「手続民主主義」に陥っている。その最中、有言実行タイプのご両人が地方制度改革をリードすれば、何が問題か、どうすればよいかが国民の眼前に明確になるだろう。
小異を持ちつつ地方制度改革と言う大同で連携、タッグすることを大いに期待したい。
国と地方の税財政を見直す三位一体改革をめぐり、全国知事会(会長・梶原拓岐阜県知事)など地方6団体による補助金削減協議が大詰めを迎える中、田中康夫長野県知事が12日、都内で石原慎太郎東京都知事と会談した。焦点の義務教育費国庫負担金の削減について両知事は共に反対の姿勢を示しており、知事会議に向けた対応策も話題になったとみられる。
三位一体改革では、06年度までに国から地方に3兆円が税源移譲され、地方6団体は、国庫補助負担金削減案の提出を求められている。全国知事会では、これまでに、中学校教職員給与分9000億円を含む3兆3000億円の削減案のたたき台を作成。18、19日に新潟市で開かれる全国知事会議で最終協議する予定だ。
東京都は「義務教育は国の仕事」との見解からこの流れに反対、地方交付税見直しなどを含む独自の税財政改革案を発表している。田中知事は、7月15日に都内で開かれた全国知事会議で、都の改革案を評価する発言をしていた。発信能力抜群の両知事が共同戦線を張れば、今後の論議に影響を与えることになる。【野倉恵】
毎日新聞 2004年8月12日 23時34分
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