後ろめたいと冷静さを失う 田中康夫 掲載日2006.3.2 |
2月22日に開会した長野県議会で僕が、提案説明の中で冬季オリンピックに触れると一瞬、議場には沈黙が流れ、が、以下の文章を読み続けると、聞くに堪えぬヤジが、反田中の県議から飛び交いました。 「元東洋信託銀行副社長の磯村元史氏を会長とする『長野県』調査委員会が昨年11月25日に公表した『長野冬季オリンピック招致委員会会計帳簿処分問題』についての報告書は、約9000万円の使途不明金が存在し、IOC(国際オリンピック委員会)が規定した制限額の24倍ものお土産をIOC委員に手渡し、それ以外の接待関連費用も判明しているだけで総額5億1221万円に上る事を明らかにしました。総額28億3400万円もの長野オリンピック招致活動費の中には、同じく判明分だけでも2億5983万円の県負担金が税金から投入されています。長野県からの交付金に至っては、9億2000万円です」。 が、「『長野県』調査委員会からの面談要請に対し、吉村午郎前知事は書面で拒否の意思表示を行いました。語りたくない事情が、有られるのかも知れません。けれども、今回の報告書は『ワシントン・ポスト』を始めとする諸外国の多くのメディアで報じられています。国内でも大阪の朝日放送は番組で特集を組み、開催から8年経った今でも、ある意味では県内の新聞やテレビ以上に高い関心を集めているのです」。 「公的な捜査権限を有さぬ中で、焼却されたと巷間、伝えられていた帳簿のコピーを発見し、委員諸氏の奮闘により、ここまでの調査報告を纏めました。この更なる解明こそは、金メダルだけでも5個を日本に齎した長野冬季五輪の名誉回復に繋がります。であればこそ、この件に関し、今こそ地方自治法第百条に基づく調査機関を長野県議会は設けるべきではないか、と私は考えます」。 人間、後ろめたい時には冷静さを失います。県指定金融機関の八十二銀行頭取だった中山富太郎氏等3名が、「不明朗極まりない会計処理」を「適正」だと監査報告し、五輪招致活動の音頭を取ったのは、小坂憲次文部科学大臣が大株主の「信濃毎日新聞」でした。長野県で君臨してきた“政官業学報のペンタゴン”ぐるみの、謂わば「脱法行為」だったのです。 不信任では山国から追い出せなかった田中康夫に関する「悪行」を昨年来の百条委員会で捏造し、議場で人権侵害なヤジを飛ばす夜郎自大とも言える守旧派議員は、サマランチの為に首都圏からお召し列車を特別に仕立て、戸倉上山田温泉で饗宴に及んだ招致活動を再検証する心算は、更々無いのです。況して、当事者とも言える「信濃毎日」の紙面には、調査委員会委員の1人だったジャーナリストの岩瀬達哉氏が月刊「現代」で慨嘆する様に「『今更、意味が有るのか』といったネガティブな記事ばかり」です。 とまれ、チャラい気分で日本からイタリアへと遠征して尽く玉砕した兄ちゃん姉ちゃんが大半を占めた中で、ホンマもんの氷上の女王・荒川“真っ当”静香嬢に金メダルを手渡したのが、金権の臭いを漂わすサマランチ某だったとは、何たる歴史の皮肉でありましょう。いやはや。 「長野県」調査委員会報告
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