他人のフンドシで 相撲を取る厚顔無恥 田中康夫 掲載日2006.3.30 |
「サービスエリアをサービス満点に」との書き出しで、西日本高速道路株式会社の「取り組み」を、「産経新聞」が称揚しています。 曰く、「サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の収益力を強化する為の大規模な改良計画」。「滋賀、京都の四つのPAの他、中国、四国、九州に重要拠点を定め、コンビニエンスストアやリラクゼーション施設、プロ野球のグッズショップ等を設置。高速道の利用者に限定せず、地域住民にも開放、魅力有る集客施設で『親方日の丸』からの決別」。 阿呆も休憩休憩にして頂きたいものです。その敷地も施設も、元はと言えば国民の共有財産。即ち、他人のフンドシで独り相撲を取る厚顔無恥振りこそは「親方日の丸」に他なりません。 「高速道の通行料金収入は、大きな伸びが期待出来ない。同社が業績向上のカギとするのがSA・PA事業」。「飲食サービス、物品販売事業を収益の柱に育てたい」。 これぞ、本末転倒では有りませんか。共に民営化されたイタリアも日本も、高速道路の建設費用は1km当たり約45億円です。にも拘らず、通行料金はイタリアの4倍にも達するのが日本なのです。ローマからミラノは、東京から神戸と同距離の560km。イタリアでは3300円に過ぎません。 然るに、民営化後に6つの高速道路各社は値下げを断行したでしょうか? 否、ハイウェーカードや回数券を廃止し、ETCを自前で購入しない限り、実質値上げをしているのです。縦しんばETCを設置した所で、その割引率はイタリアの足下にも及びません。 結果、通行料金が高いから、物流各社のトラックは一般道路を通行するのです。子供の通学路も民家の密集地も、朝昼晩、騒音と危険に晒されています。通行料金無料のバイパス建設の声が高まり、二重投資の結末は更なる国家財政の悪化を齎します。小泉純一郎内閣の僅か5年間で、250兆円もの新たな借金が生み出され、日本全体の借金総額は1000兆円に達したのも、宜なる哉です。 SA・PAの売上高を5年後には3倍にしたい、と高言し、「これまでにない新業態の「ハイウエー・コンビニ」、「リラクゼーション施設を設け」、「高速道路の通行車だけでなく地域住民にも集まって貰える」との構想は、駅ビルのショッピングセンター化で駅前商店街が壊滅したのと同様の未来を、全国津々浦々に展開していく新自由主義経済の荒廃そのものです。 「官から民」の美名の下に、「公=おおやけ」の意識無き「民=ミーイズム」が跳梁跋扈しています。官とは異なり、情報公開の対象から外れる「民」の方が、政治家ならぬ政事家にとっても、公僕ならぬ私僕にとっても、都合が良いのです。 5年間で3倍の売上にするなら、5年間で3分の1の通行料金を実現します、と「公」約させてこそ、公共高速交通網の構造改革ではありますまいか。 従来の半額で建設可能となった、と高速道路の権威を自任するジャーナリストは豪語します。が、これこそは不思議な話です。半額で建設可能だなんて、「偽装」なのではありませんか。百歩譲って可能だとして、それこそ高値安定の談合が罷り通っていた証ではありませんか。護送船団記者クラブの新聞各社も、提灯記事を掲載する前に、本質を抉ってこそ、麻薬とは無縁の「ジャーナリスト宣言」でしょ。呵々。 |