全ての建設工事に 『受注希望型競争入札』を 田中康夫 掲載日2006年6月8日 |
「信州・長野県の公共事業改革を国も学ばねば」と総選挙翌日に僕も出演したNHKの番組で公明党の神崎武法代表が宣ったからなのか、或いは、本県の入札制度改革・公共事業評価制度・建設産業構造改革を評価する報道が「讀賣新聞」や「日本経済新聞」で為されているからなのか、国土交通省の北側一雄大臣も同様の趣旨を大臣会見で表明しました。 彼等の「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針)の改正」は、斯くなる流れの中に位置しているのでしょう。が、その取り組みには依然として、少なからぬ差違が存在しています。 全ての建設工事に「受注希望型競争入札」を導入している本県とは異なり、国では一般競争入札を2億円以上の工事に限定しています。本年度に入って「2億円未満の工事にも積極的に試行」する様にと「指示」を出しました。が、それらは何れも各発注機関の努力目標に過ぎません。指名競争入札や随意契約が、全体の95%以上を占める不透明さは、未だ解消していないのです。 小規模企業への受注機会の確保を図るべく本県では加えて、従来は孫請け・曾孫請けに甘んじていた土木建設業者が直接、入札へ参加可能とする「参加希望型競争入札」も導入しています。 僕の就任時、道路舗装を始めとする維持修繕・管理業務等の入札は、県費100%で実施しているにも拘らず、実際に重機を保有し、人々を雇用している中小規模の県内企業が、何故か参加出来ない理不尽な状況でした。 東京に本社が位置する上場企業の県内支店が応札・落札し、そこから仕事が分け与えられるピラミッド構造だったのです。無論、斯くなる大手企業は、重機も人員も、県内に確保している訳もありません。全ては“丸投げ”です。 参加希望型競争入札は、B2C、B2Bの哲学に基づきます。故に平均落札率は8割台なのです。「中間搾取の解消」が功を奏して、例えば従来、1000万円を要していた道路舗装工事が800万円で賄える変化が生まれたのです。採算割れの受注ではない事は、土木建設業者の85%が参加希望型競争入札を支持し、更なる充実を望んでいる調査結果からも明らかです。 繰り返しますが、こうした事業費用への国庫補助はありません。全額県費です。8掛けで賄えれば、残り2割の費用で別の歩道整備等が行えます。極論すれば、福祉や教育の分野へと振り分ける事も可能です。 他方、出納業務を扱う会計局内に、検査チームを本県は新設し、土木・農政・林務の3部で公共事業を担当してきた老練な技術職員を移籍させました。安かろう悪かろうの工事を見逃さない為に、専門の検査官を配置したのです。 国でも工事検査を、実施してはいます。が、同じ部署内に検査担当者が居たのでは、柵(しがらみ)を断ち切って活動するのは至難の業です。 契約約款には、違約金特約条項を設定しています。20%の損害賠償予約条項です。その後、国でも同様の条項を設けましたが、それは10%。悪質な事案でも15%に留まっています。 「新客観点数」を導入し、通常の経営事項審査に加えて、工事成績、技術者の人数、除雪や維持等の地域貢献度を算定する基準を本県独自に設け、総合評点に加算しています。福祉、農業、林業等の「新分野進出」も経営意欲の指標として加算されます。高い意欲を有し、良い仕事を、弛まず実践している業者は優れた評点を得る事で、従来よりもワンランク上の金額規模の公共事業への入札参加資格が付与されるのです。 「総合評価落札方式」の導入も、全国屈指です。優勝劣敗な価格競争に陥らぬように設けた件の制度は、個別具体的な入札に於いても、応札価格以外に工事成績、地域要件、地域貢献、技術者要件等の要素を加味する評価基準です。 工事成績配点を大きくする事で社会的共通資本の品質向上を目指しているのです。35%の公共工事では、最低入札価格以外の企業が落札しています。 が、それは高かろう悪かろう、では断じてないのです。 僕が就任した6年前、一般競争入札の落札率は97.6%でした。繰り返しますが現在は入札全体で80%弱の落札率です。国には到底為し得ない「改革」です。
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