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ウィーンフィル ニューイヤーコンサート2006 を聴いて 青山 貞一 Teiichi Aoyama |
Kの放映画面より青山が撮影 ブログ版 恒例のウィーンフィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートが2006年1月元日、日本時間午後7時20分から約2時間30分NHKが中継した。 過去数年のニューイヤーコンサートの指揮者は、2003年がアーノンクール、2004年がムーティ、2005年がマゼールがとつとめてきた。今年はラトヴィア出身のマリス・ヤンソンス氏(写真参照)である。 指揮者のマリス・ヤンソンス氏 今回は、今年2006年がモーツアルト生誕250周年ということもあってか、シュトラウス一家の曲に加えてモーツアルトの曲も演奏された。曲目は例年のそうであるように、圧倒的大多数は、ヨハン・シュトラウス二世のものだ。 以下は、今年のニューイヤーコンサートで演奏された楽曲一覧である。NHKのWEBに掲載された一覧だが、当日は以下の楽曲以外に数曲が演奏されていた。
指揮者のヤンソンス氏は現在、バイエルン放送交響楽団そしてコンセルトヘボウ管弦楽団とヨーロッパを代表する名門オーケストラを率いている気鋭の指揮者だ。いわば、当代随一の実力をもつ、売れっ子指揮者である。そのヤンソン氏が今回、はじめてウィーンフィルの指揮をとった。 ヤンソンス氏の曲目選択、演奏順序そして何よりも指揮は、毎年ずっと聞いてきた私にとっても、申し分ないものであって、ニューイヤーコンサートを十分堪能できた。 私は仕事や国際学会などの研究発表で何度もウィーンを訪れているが、残念ながら、まだ一度もウィーン楽友協会大ホールで開催されるこのニューイヤーコンサートを現場で生で聞いたことがない。これついては、何度も自分のブログ等で触れているが、本当に残念だ。 この学友協会ホールは、聞くところによれば全面的な木造建築物であり、現在でも冷暖房設備を入れていないとのこと。確かに物理学的には、人工的に冷暖房を入れると、音響環境がガラッと変わる可能性がある。残響時間も大きく変わるだろう。 ところで、現在、コンサルトヘボーの主席指揮者でもあるヤンソンス氏だが、日本ではあまり知られていない。そのヤンソンス氏は、聞くところによると、彼はオーケストラの楽器をバランスとって鳴らさせることが多く、特定の楽器を強調するようなことはあまりしないそうだ。これがクラッシックファンにとって、<ヤンソンスは個性が薄い>と評される所以のようだ。 毎年ニューイヤーコンサートが行われるウィーンの学友協会コンサートホール。 撮影時は、ホール前が工事中だった。ウィーン市内は小さく、地下鉄を使えば シェーンブルン宮殿はじめ学友協会など何処にでもすぐにゆける だが、ニューイヤーコンサートでは、大部分がシュトラウス一家の名曲、それも天下のウィーンフィル相手の指揮である。いわばその種の個性など不要、いわばスッピンの良さが味わえたと思う。ヤンソンス氏の対角線上にあったのが、小澤征爾氏だったと思う。小澤征爾氏のニューイヤーコンサートは、私のまわりではきわめて不評だった。私もそう感じた。また、私の友人Sさんも同じ感想と当時もらしていた。 ヤンソン氏は、バランス感覚とともにリズム感が抜群、学友協会大ホールに世界から集まった耳の肥えた観客を魅了する術ももっていたと思える。いずれにしても、私にとっては、ここ数年のニューイヤーコンサートでもっとも秀逸なものと言えそうだ。 ●私にとってのシュトラウス 今回の演奏では、いつもアンコール曲となっている「美しき青きドナウ」とともに、春の声(ヨハンシュトラウスのワルツ 作品410)がとくに良かった。 「春の声」を聞くと、私が2002年夏、バルセロナで国際会議あり、その前に立ちよったザルツブルグのホーエン城の下の路上で聞いた「春の声」を思い出す。4人の若者がバラライカとアコーデオンだけでシュトラウスとモーツアルトの楽曲をザイルブルグの路上で演奏しいたのだが、それが本当にすばらしかった。 今でも毎日、彼らから直接買ったCDを聞いている。これまたすばらしい。
路上で買ったCD ●モーツアルト生誕250周年に寄せて ニューイヤーコンサートでは、モーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」 序曲も演奏されたが、今年はモーツアルト生誕250周年である。本場、オーストリアのウィーンや生誕の地、ザルツブルグではさまざまな記念コンサートや行事が行われるようだ。 モーツアルト自身については、今更ここで論じる必要はないが、生誕の地、ザルツブルグに行かれていない方は、ぜひこれを機会に行かれると良いと思う。日本からは直行便のオーストリア航空が一番。値段もリーズナブル、時間も一番少ない。 オーストリアでは、どこでも音楽はもとより歴史的文化的資産をベースとしたまちづくり、景観保全のあり方で学ぶところ大である。 残念ながら、今の日本では保全、保護すべき環境資源や歴史的景観が、ちんけなマンションや高層ビルなどで台無しにされている。その背景には、経済効率一辺倒の規制緩和があると言っても良い。さらに昨年秋は、本来あるべき安心、安全までもが、それら一部のちんけな建築物にはないことが判明した。 外交でも今のオーストリアから学ぶところは多い。かつて栄華を誇ったハプスブルグ家の中心地でヨーロッパの歴史を探訪するにも、列車で足をのばし、プラハなどに行くのもグーである。
オーストリアは、人口わずか800万人の小さな国だが、第二次大戦以降は、軍隊はもつものの一貫して永世中立国となっている。以下のブログにあるように、オーストリア憲法にそのことが歴然と明記されている。イラクにも一切派兵していない。隣国にあるドイツの米軍基地から飛び立つジェット戦闘機などが領空侵犯しないよう常時監視していると言う。 青山貞一:ウィーンフィルと永世中立国オーストリア(2004年1月元旦) それにしても、一昨年の元旦ブログにも書いたように、私たちは、世界各国の人々が、毎年年頭にこのウィーンフィルのニューイヤーコンサートを楽しめる世界情勢をつくるよう努力しなければいけない。 非戦と環境を貫けない国には将来はないからだ。 |