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3月11日に行われた「震災がれきの広域処理を考えるシンポジウム」に参加しました。以下、簡単ではありますが感想を含めリポートをしたいと思います。 講演の題名はプログラムからの引用です。 @永倉冬史氏:災害廃棄物の分別のアスベストなどの有害物質からの問題点について 被災地でのアスベスト調査における数十枚の写真を解説付きで見ることによって、どのような建材にアスベストが使われており、いかにアスベスト建材が瓦礫に多く含まれているかが一目瞭然であった。 自分も含め、被災地の多くの方もそうであると思うが、素人は一般的にアスベストが含まれている建材について何も知らないので、注意すべきとの認識すら無いのが被災地の方々の現状である。 そこで、アスベスト建材がある箇所のマッピング調査や、住民・ボランティア等に対するマスクのつけ方講習を永倉氏の「中皮種・じん肺・アスベストセンター」は行ってきたとのことである。 今後現地の行政も協力し、アスベストの危険性について調査と周知を徹底していって欲しい。アスベストも放射線と同様に発ガンの閾値が無く、できるだけ曝露を避けなければいけないとの言葉が印象的だった。 A池田こみち氏:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について そもそも瓦礫の広域処理は本当に必要なのか?代替案の検討がなされた上での最善の方法だったのか?広域処理をして本当に安全であるのか?その根拠や調査法は妥当か?意思決定プロセスは正常に機能しているのか?などの諸問題を一つ一つデータをもとに説明。 その結果、被災地の住民意識としては瓦礫の広域処理は必ずしも喫緊のテーマではないにも関わらず、科学的な安全性の検証が何らなされないまま結論ありきで広域処理がすすめられてきた状況が明らかになった。 更に驚くことに環境省は広域処理を全国的にすすめるべく、H23、H24年度で計数十億単位での広告費を計上しているとのこと。国の借金1000兆抱え、消費税増税論議の最中に、何の直接的支援でもない単なる広告だけに莫大な税金を投入するとは国民を馬鹿にするにもほどが ある! 瓦礫の広域処理に限っても問題点が多くあるが、焼却主義等の国のこれまでの政策や、意思決定プロセスの不在など大枠の根本的問題も改善していかなくてはいけない問題であると強く感じた。 B奈須りえ氏:財政・地方自治制度・民主主義の論点から 東京都での瓦礫受け入れの背景にある、制度的・経済的問題点をわかりやすく説明された。瓦礫受け入れを決めた際に全く住民に対する情報提供が無かったことから、主権在民及び民主主義の形骸化を指摘。 東京都の女川町瓦礫受け入れにおいては当事者である女川町と23区不在で合意がなされたという驚きの事実もあった。 また、実際の瓦礫の処理費用を過去の震災時の瓦礫の処理費用と比較し、コスト高であることが明らかになった。広域処理の安全性はもとより、こういった経済性つまり私たちの税金がどこでどのように使われているかということをつぶさに知ることは極めて重要であると思った。 C小島延夫氏:広域処理、放射性廃棄物をめぐる法的問題 これだけの原発大国である日本において、放射性廃棄物についての法制度が全く無かったということがまず第一の問題であったと指摘。更に、これまで放射性廃棄物と指定してきた基準100Bq/kgよりもはるかに高い8000Bq/kgを通常処理の基準にしたことは果たして安全と言えるのか、疑問を投げかけた。 また、福島や宮城、茨城県において住民の健康調査に対する事実上の禁止があることを問題視された。 放射性廃棄物に対して法規制が無いことは、今回原発事故が起きたことで明瞭に顕在化した問題であるが、これは原発事故が起きなかったとしても原発を稼動していれば放射性廃棄物はどんどんたまっていくわけで、いずれは直面せざるを得ない問題であったと思う。 しかし今回の事故を受けて十分な議論もなされないまま応急措置的な法制度が作られるのは避けなければいけないと危機感を持った。 ●全体を通しての感想 各講演者の一言一言がすべて議論すべき論点となっているような、内容の濃いシンポジウムであった。あまりに論点が多く大きく、1回聞いただけではその全てを列挙するには難しいため、私も再度映像を確認しながら論点を丁寧に拾い上げてみたい。後日、独立系メディアE-WAVE TOKYOで放映されるとのことなので、ぜひ一人でも多くの人にご覧いただきた い。 様々な角度・スケールからの論点抽出がなされ、参加した者にとっては大変インプット量の多い実りあるシンポジウムであった。大変有難かったと同時に、それだけ多くの多角的な情報を、今度は自分発で人々に伝えていかなければいけないのだというかなりのプレッシャーを感じている。先日、池田さんがMLに転送(引用)して下さった「福岡に避難した若い母親たちからのメッセージ」を読んで以降、そのなかの「知っているのに沈黙することは罪だろうと思うから」という言葉が鋭く突き刺さっている。 知った者はそれを伝える義務がある。私も出来る限り声をあげて、広域処理をはじめとする諸問題について伝えていき、一人でも多くの人が議論できる土台作りをしていきたい。 |