福島警戒区域のなかの動物の現状 全国動物ネットワーク事務局 鶴田真子美 掲載日:2009年2月23日 |
全国動物ネットワークの皆様、情報共有をお願いしている皆様 お疲れ様でございます。 福島についてですが、警戒区域には、犬、猫、牛を含めた被災動物がまだ多く取り残されています。 行政が把握しているだけで330人の飼い主さんが、未だにみつからない犬猫を探し続けています(保護依頼登録者:1023人、8月末の保護依頼者:330人、by環境省)。 行政が把握していない飼い主さんも当然いらっしゃいます。復興庁から1億弱の予算がついて、環境省・福島県の監督下で、委託業者の自然環境研究センターが9月7日〜10月2日に行った保護活動時にも、すべての飼い主さんに保護活動が周知されたわけではありません。国がそのような調査・保護活動を行っていること自体、まったく知らされていない飼い主さんもあります。 また、猫は第四世代、生き延びた牛は第三世代まで確認されている今、動物愛護の観点だけでなく、住民の安全や環境保全のためにも、早急な繁殖防止策が必要なはずです。 ところが、国による警戒区域の動物たちのTNRや繁殖防止は予定されておりません。避妊去勢の施術は、委託業者の自然環境研究センターが警戒区域から保護して三春の 臨時シェルターに入れた、譲渡対象の動物のみとなっており、今後も警戒区域でのTNR等繁殖防止策を行う予定はありません。(10月22日、環境省への聞き取り) 警戒区域やその周辺のエリアでは、飼い主不明の動物(特に猫)が繁殖しているという事実があります。このことへの対策が講じられていないとはどういうことでしょうか。昨年の事故発生直後にも、すでに予見され問題視されていた繁殖への対策が、後手に回されています。 警戒区域に残された犬猫がいるのは明白であるのに、動物たちへの給餌・給水や動物保護目的の、ボランティアによる公益立ち入りは相変わらず認められていないこと、昨年末の圏内保護活動は国と県が主導だったから成立したのであって現時点で市町村の判断で立ち入り許可は出せないこと、今年の9月7日〜10月2日に行われた委託業者による保護活動(犬1匹、猫131匹保護)の再開は、今年度(3月末日まで)の事業としては予定されていないこと、さらには昨年末の環境省・福島県の管理下での民間法人による保護活動も今年は予定されていないこと、 このような現状をみれば、放射能汚染地区に閉じ込められたまま、厳冬期に餓死・凍死となる多くの(第二世代・第三世代を含めた)被災動物が出てくるだろうことは間違いありません。 放射能に汚染され、人の出入りの制限された地域で生き延びる動物は、動物福祉の観点からも、増やしてはなりません。 給餌をしないで数を減らすという施策は、残念ながらわが国ではまかり通ってきました。 例えば宮島のシカは、無責任に観光のため増やされて、増えすぎたらエサやるなで行政主導で餓死をさせられています。また、一般的に「野良猫にエサをやるな」が声高に主張され、野良猫は衰弱死に追いやられています。餌を与えず数を減らす、という行為は、虐待そのものです。 一方、野良猫に不妊手術を施したうえで、給餌を行い、やさしく数を減らしていく「地域猫」の試みは世界の流れです。我が国でも今回の法改正の付帯決議で「(地域猫は)効果があることに鑑み官民挙げて一層の推進を図ること」と明記されました。 「ペットは連れて行かず置いていけ(一部自治体)」「餌やり禁止」「ペットの持ち出し禁止」... 福島で起きたことは、わが国の従来通りの動物行政の施策と重なります。 この国には、処分のための収容所はあっても、終生飼養など生かすためだけの公的な収容シェルターはありません。(殺処分ゼロをめざす熊本市により試みはなされていますが。) ペットショップやネットで、国際基準から大きくはずれた幼齢の犬猫販売を許しているわが国(2012年の法改正でも多くの国民の要望は裏切られ、8週齢は叶いませんでした。これについては改めて追究します)、その結果、商品として大量に生産→安易な販売→「飼い主が飽きたら遺棄・手術をしないで繁殖・徘徊犬猫は回収→早急で安易な行政処分」という、「命あるものの大量生産・大量消費」を許す、わが国の動物行政のあり方はなかなか変わりません。 警戒区域の動物に対する政府の不作為は、日本の動物行政の縮図です。この命の軽さは何なのか?このようなことが先進国でまかり通っている、という事実が残念でなりません。 日本の動物をめぐる諸問題の後進性は、福島で露呈されました。 福島は全国の縮図といえるのではないでしょうか。 福島、ここから学ばなければ、日本は変わっていきません。 動物だけでない、私たちの人権も、民主主義も関わっています。 すべてつながっているのです。 ************* <警戒区域に取り残された動物たちをどうするか。> 国、県、市町村、東電、国会議員に対し、昨年4月以降、私たちはずっと要望し続けてきました。 今ここで、再度訴えます。 そこに残された命を可能な限り生かすこと。 まず保護して飼い主さんに戻すのが基本。 飼い主さんと動物がともに暮らせる住居の確保と生活の再建へのサポート。 戻せないものは国をあげて譲渡。 譲渡できないものは、飼い主不明の動物も含めて公的シェルターで終生飼養。 どうしても圏内から救い出せないものには、徹底した繁殖防止と1代限りの命の見守 り =給餌・給水。 「同伴避難」、「(期間限定であっても)不妊手術の徹底」、「畜犬登録の徹底」、「マイクロチップ等による個体識別の推進」など、予見しうる緊急災害時に必ず対応できるだけの実効性を備えた動愛法の整備。 さらには、事故原因者の東電・電事連に対し、起こした事故の結果の責任を問い続けること。 ************* 長い文面、いつも申し訳ありません。 j事務局 鶴田 |