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DK内閣佐藤清文
Seibun Satow
2011年11月22日
初出:独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁
森喜朗内閣総理大臣 内閣支持率が8%?オレが何をしたというんだ?
福田康夫官房長官 はい。何もしていません。
社会調査において、調査票をデータ・ファイルに作成する際、NAとDKという入力コードがある。前者は、”No Answer”の略で、無回答を指す。後者は”Don’t Know”の略で、不明を意味する。いずれも欠損値を示すコードである。
2011年11月19日付『朝日新聞』の「記者有論」において、鶴岡正寛記者は現政権を「DK内閣」と命名している。内閣支持率の調査を行うと、「わからない」や「答えられない」といったDKが多いという特徴があるからだ。
9月の内閣発足時の調査では、DKが29%である。これは、現在の電話を用いたRDD方式になった小泉純一郎内閣以降、最高である。しかも、10月には26%、11月も27%と三回連続して25%を上回っている。こうした例は訪問面接調査時代の竹下登内閣にまで遡らないと見当たらない。
支持率に限らず、各種の世論調査の際、現政権はDKが目立つ。11月の調査では、TPPに関する設問が含まれている。参加に賛成が46%、反対は28%、DKが26%である。TPPについての内閣の情報提供が「不十分だ」との回答は8割を超えている。
これだけDKの4分の1超が続けば、内閣支持率が上向くはずもない。現内閣の支持率の下落のペースは、鶴岡記者によると、福田康夫政権よりも急で、麻生太郎政権に近い。
これまでの動向を振り返ると、現首相は日本の人々と向き合い、対話する気がないとしか思えない。現首相は海外メディアに優先的に取材に応じたり、国際舞台で突然公約したりして、日本の世論はそれを報道で事後的に知る状態が続いている。また、国会答弁も無内容で、記者会見もろくに行わない。議論の積み重ねもせず、首相自身の説明がないまま、重要政策が決定されていく。それは往々にして自民党政権への逆コースである。その後、自分に都合のいい場面でのみ発言する。
しばしば現首相について「発信力不足」を指摘する向きもある。むしろ、この人物に欠けているのは真摯に話し合う態度である。人々の話に耳を傾け、心に届く言葉がないから、こうした彼に対して「DK」と応えざるを得ない。
「DK」と呼ばれているくせに、現首相は消費税率のアップを争点に解散を目論んでいると憶測されている。もしそうだとすれば、彼は近代の政治指導の姿勢に関してDK、すなわち無知だと言わざるを得ない。
前近代のコインと近代の紙幣にはいずれも肖像画が使われている場合があるけれども、両者の間にアングルの違いがある。前近代の肖像画が横向きであるのに対して、近代では正面を向いている。
横を向いていては話はできない。目を合わせられないほど高貴な存在だということを意味している。一方、正面を向いているのは、対話をする用意があることを示唆する。この肖像画の人物とそれを見ているわれわれとが対等な立場だということを表わしている。前近代と近代の政治指導者と民衆との関係をこれが端的に物語っている。
一万円札の福沢諭吉は正面を向いている。「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」。近代の政治指導者としてふさわしくない人物に増税を語る資格などないだろう。汝自身を知れ!
〈了〉