鷹取 敦 |
日本では住宅用太陽光発電補助事業により、太陽光発電の普及が一定程度進んだものの、2005年に補助事業が終了し普及が鈍化する一方で、フィードインタリフ(自然エネルギーによって発電した電力を、長期間、電力料金より高い価格で買い取ることを約束する固定価格買い取り制度)の導入により爆発的な普及を実現したドイツに大幅に後れを取ってしまったことはよく知られている。 2009年に助成制度が再開され、さらに日本でもフィードインタリフが2010年の実施を目指して導入される見込みである。 この「日本版フィードインタリフ」については、既に多くの批判が行われている。一番大きな点は、発電した電力を全て(電力料金より高い)「固定価格」で買い取るのではなく、自家消費して余った分だけ「固定価格」で買い取るという点である。つまり屋根の大きさが十分でなく、発電した電力で自家消費分が全てまかなえないか、トントンの場合には、この制度はインセンティブ(誘因)にもならない、ということである。 特に都市部の家屋の場合には屋根の面積や向き等の制約が大きいだろう。仮に余剰電力があったとしても、インセンティブとなるほどの買い取り総額になるか、経済産業省の言うように、本当に「10年で元が取れる」ようになるかはなはだ疑問である。 そもそも「フィードインタリフ」は万能ではない。ドイツは成功した例であるため注目されているが、「フィードインタリフ」を導入しているのはドイツだけではない。そしてその多くは、必ずしもうまく普及には繋がっていないと言われている。「日本版」もうまくいかなかった方の一例となるのではないだろうか。 日本で土壌のダイオキシン環境基準を決める時、既にドイツでは土地利用によって段階的に厳しくなる基準が決められていたにもかかわらず、一番緩い1000ピコグラムだけが定められたことからも、日本では他国の環境政策の本質を学ばず、うわべだけを取り入れて「やったふり」をするのが得意であることが分かる。今回の「日本版フィードインタリフ」も例外ではなかったということだ。 一方、その「成功例」であるドイツの制度も実は問題点が指摘されている。メーカーのコスト削減努力を促すことになっていない、買い取り価格を上げることで、現在の価格でも「元が取れて」しまうため、むしろコスト削減の阻害になっているのではないか、という点である。 これは、筆者が日本の補助事業の初期である1995年に、日本の補助事業について指摘したものと同じ問題意識である。この指摘は、青山氏に最近の論考で引用していただいている黄色字の部分である。 ドイツの制度では、コスト削減を促すために、買い取り価格を少しずつ下げていることになってはいるが、買い取り価格を下げると普及に影響を及ぼすため、実質的には十分に下げることが出来ないでいる。 コスト削減を促す一番の効果的な方法は公正な競争・市場であろう。日本の場合は、青山氏の論考で指摘されているように、事実上海外メーカーの参入が阻害されている。単に太陽光発電のハードウェアだけでなく、周辺機器の系統連携(電力網)への接続のための電力会社による認証から取り付けを行う工務店の系列化に至るまで、非関税障壁が張り巡らされており、霞が関と日本国内のメーカー間のアウンの呼吸(?)で、価格が維持されている可能性がある。 ここに補助事業や「日本版フィードインタリフ」で税金(フィードインタリフは電力料金の値上げで賄われるが私たちの負担には変わりない)を投入しても、普及を促すというよりも、メーカー等の救済という意味あいの方が大きくなってしまうのではないだろうか。 まずは公正な競争を促す条件整備が必要ではないだろうか。 |