|
|
東京二十三区清掃一部事務組合(以下「清掃一組」と表記します)は、7月21日「水銀混入ごみによる複数清掃工場焼却炉の停止について」という報道発表を行った。 http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/topics/oshirase220721.pdf 発表によると、足立清掃工場2号焼却炉、板橋清掃工場2号焼却炉、光が丘清掃工場1号焼却炉及び2号焼却炉、千歳清掃工場焼却炉(4工場、5炉)において、水銀混入ごみの不適正搬入が原因で排ガス中水銀濃度が上昇し、自己規制値等(0.05mg/m3N)を超えたため操作手順に従い焼却炉を停止したという。 これを受けて7月22日朝、新聞、テレビなどが一斉にこれを報じた。 (NHK)水銀で焼却炉停止 http://www.nhk.or.jp/lnews/shutoken/1005863451.html (読売新聞)5焼却炉で水銀検出・産廃不法投棄か http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20100722-OYT8T00124.htm (朝日新聞)都内5焼却炉の排気から水銀 産廃不法投棄の疑いも http://www.asahi.com/national/update/0721/TKY201007200647.html (東京新聞)都内清掃工場の5焼却炉停止 水銀ごみ持ち込まれ http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010072290071845.html (ANN)清掃工場から基準上回る水銀 産廃投棄の疑いも http://news.tv-asahi.co.jp/news/web/html/200721041.html 報道の主な内容は次のとおりである。
清掃一組は、廃プラスチックを「燃やさないごみ」から「燃やすごみ」に変更するにあたり、施設や周辺環境に与える影響を検証すると称して「実証確認試験」なるものを2006年度(平成18年度)から2009年度(平成21年度)にかけて実施した。2010年2月22日に最後の検討委員会を開催し、その報告書が同6月21日に清掃一組のウェブサイトに掲載されている。 筆者ら(環境総合研究所 池田こみち副所長、鷹取敦調査部長)が、「実証確認試験」のデータ等を精査し、実証確認試験の手法そのものの問題に加え、廃プラ焼却に伴う問題点等を下記にとりまとめた。 ■東京二十三区清掃一部事務組合が実施した 「廃プラスチック混合可燃ごみの焼却実証確認」についての評価報告書 http://eforum.jp/waste/ ikedatakatori-tokyo23ku-plasticincineration1012.htm この中でも指摘したように、廃プラ焼却のモデル実施に伴って、可燃ゴミに混入する「金属」、「ガラス」、「石・陶器」等の焼却不適物の混入率が大幅に上昇していることが実証確認試験のデータからも明らかとなっている。以前の混入率はおおむね0.5〜0.8%程度だったのが、1〜2%と倍増している(豊島工場では4.5%)。廃プラが可燃ゴミに加わり分母が増えていることを考えると、焼却不適物の絶対量は2倍よりもさらに大きくなっていると考えられる。廃プラを分別しなくなったことで区民の分別への意識が大きく低下した結果と推察される。 東京新聞の7月6日の記事でもこの点は指摘されている。清掃一組のデータによると「〇四〜〇七年度は0・9%前後だが、〇八年度は1・49%、〇九年度は1・75%と、廃プラスチック焼却開始前のほぼ倍」になっており、渋谷清掃工場の技術係長によると「プラスチックに包まれた針金ハンガーの混入がこの一、二年、増えた実感がある」ということだから、あきらかに焼却不適物の混入は増加している。 ■『可燃』に針金ハンガーなど ごみ分別 ずさん(東京新聞) http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2010070602000085.html 今回の水銀問題の報道では、いかにも事業者が不法、意図的に不適物をごみに混入したことが原因であるかのように報じられている。各社共通の論調であることから、清掃一組がその点を強調したであろうことは想像に難くない。報道発表資料には書かれていないが、記事には警察への届け出、刑事告発の検討にまで触れられている。 清掃一組は、焼却不適物の著しい増加を把握していたにもかかわらず、一切その事実への言及がないのはどういうことだろうか。 廃プラ焼却の本格実施が開始されたのは、2008年〜2009年にかけてだが、この期間はまだ実証確認試験中である。実証確認中に問題が生じれば、廃プラ焼却の計画は頓挫しかねないから、少なくともこの期間はごみを収集する各区も、焼却炉を運営する清掃一組も、当然、不適物の混入には気をつけるものと考えられる。(それにも関わらず倍増しているわけだが。) しかし2010年2月に最後の検討委員会が開催され、6月には報告書がウェブサイトに掲載(5月には取りまとめがほぼ終わっていると思われる)され、収集、焼却の現場も一息ついたのではないだろうか。水銀問題が各工場で一斉に発生したという6月という時期はこれとちょうど符合する。 報道発表、報道では清掃一組は被害者のように書かれているが、原因を作った当事者である可能性が高いのである。 何の根拠もなく民間業者による産廃の混入を疑うのであれば、廃プラ焼却、実証確認試験の実施時期との関係はもっと強く疑われるべきであろうし、報道発表ではその点を背景情報としてしっかり説明するのが清掃一組の務めであろう。 このように不都合な事実に言及しまいという体質を持つ「東京二十三区清掃一部事務組合」によって廃プラ焼却を続けられることは、廃プラ焼却そのものの問題に加えて、区民にとって重大なことである。 報道も単に清掃一組の発表を垂れ流すのではなく、きちんと取材して事実を読者に伝えるのでなければ、読者離れ、視聴者離れが加速するのも当然の帰結である。 |