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泉岳寺中門隣にマンション計画

鷹取敦

掲載月日:2014年10月12日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 2014年10月12日、TBSの「噂の!東京マガジン」で、泉岳寺の中門のすぐ横に計画されている8階建てのマンション建設の問題が取り上げられました。

◆忠臣蔵!赤穂浪士のねむる泉岳寺隣にマンション計画(噂の東京マガジン)
http://www.tbs.co.jp/uwasa/genba/20141012.html

 東京都港区高輪二丁目にある泉岳寺は、元禄赤穂事件、いわゆる忠臣蔵の浅野長矩(浅野内匠頭)と赤穂浪士が葬られていることで有名で、「浅野長矩墓および赤穂義士墓」は文化財として国によって大正11年3月8日に指定された史跡(史跡名勝記念物)です。


地図中央が泉岳寺中門

◆国指定文化財等データベース
http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/searchlist.asp

 泉岳寺では毎年12月4日には赤穂義士祭が盛大に執り行われます。環境総合研究所は以前、東京都港区にオフィスがあったこともあり、年末には浅野長矩と赤穂義士のお墓参りに行っていました。泉岳寺は国内だけで無く海外からの観光客にも知られています。

◆赤穂義士祭(泉岳寺サイト)
http://www.sengakuji.or.jp/event/akougishisai.html

 第一京浜(国道15号線)から西に150mほど歩くと泉岳寺の「中門」があります。中門のすぐ左隣(南側)に隣接して8階建て、高さ23メートルのマンションが計画されているのが今回、番組で取り上げられた問題です。

 国史跡として指定されているのは、浅野長矩と赤穂義士の墓だけで、この中門は、港区の有形文化財の建物として「登録」されています。「登録」とは「指定」される前の段階で、登録を目指していると、番組中で説明されていました。

◆港区文化財総合目録
http://www.lib.city.minato.tokyo.jp/muse/j/bunkazai/mokuroku.cgi

 この問題に取り組んでいるグループのウェブサイトがあります。下記のサイトのトップに掲載されている写真「泉岳寺中門隣 マンション解体工事現場(現在3階建てが8階建てに!!!)」は、計画建物の図面から合成して地元の方が作成したものとして、番組中でも紹介されていました。

◆国指定史跡・泉岳寺の歴史的文化財を守る会
http://sengakuji-mamoru.jimdo.com/

 中門の横に建設される8階建てのマンションが巨大に見えます。番組では、来年から施行される港区の高さ規制(24m)に先取りして対応し、景観に配慮したものだという事業者の主張を紹介していましたが、隣接する中門に対して相対的に非常に大きな建築物であることから、景観に配慮したと言えるようなものではありません。


出典:「国指定史跡・泉岳寺の歴史的文化財を守る会」サイト

 上記ブログの2段目の写真にもあるように、泉岳寺の中門に「建設反対」の大きな看板が立てられており、泉岳寺自身が強く反対をしていることが分かります。番組でも泉岳寺の方がインタビューされ、建築直前に計画の存在を知らされ、何度か説明会が開かれただけであること、既存建物を取り壊す段階でも、一部破損するなどの被害があったことが紹介されていました。

 法律、条例による景観配慮の規制が不十分であるものの、この地域では3階建てより高いものは建てないことにより景観を守られてきたという経緯がありますが、法律、条例で定められていないため、住民は署名活動を行い、世界中から9000人以上の反対署名を集め、区議会に、事業者が住民が納得するよう説明するよう、区が業者に徹底した指導することを求める請願を提出、採択されています。

 この問題の経緯について、これまでに8月には赤穂の地元紙で、9月には東京新聞で取り上げられていました。記事をみると、法律や条令に反していないとはいえ、区から事業者に対する指導の腰が引け、事業者よりの立場を取っていることが分かります。

 番組内でも、そもそも区が貴重な史跡として保存する意志があるのであれば、有形文化財として「登録」ではなく「指定」しておくべきだったと指摘されていました。行政が景観や貴重な史跡を保護するための法整備(土地利用規制やまちづくり条例、歴史的文化的遺産の保全対策等)を怠っていたことにより、問題が生じた後の対応が難しくなっています。

◆泉岳寺横に8階建て計画、住民が反対(赤穂民報)
http://www.ako-minpo.jp/news/9135.html
2014年8月23日

 赤穂四十七士の墓所があることで知られる国指定史跡・泉岳寺(東京都港区高輪)で中門の真横に8階建てマンションの建設計画が持ち上がり、地元住民らが「歴史的な景観と環境を破壊する暴挙」として反対運動を行っている。

 建設予定地は中門の南側に隣接し、敷地面積約400平方メートル。これまで3階建て民家が建っていた土地を不動産業者が取得し、高さ約23・8メートルの単身者向け共同住宅を建設する計画だという。

 地元住民たちを中心とする「国指定史跡・泉岳寺の文化財を守る会」(西須好輝代表)によると、今年5月、区内に本社を置く不動産業者が区条例に基づき建築計画の告知看板を現地に設置。6月には現建物の解体工事が始まった。

 港区には建築物の高さを規制するルールが今のところ定められていない。来年10月の運用開始へ向けて高度地区指定を検討中だが、区が公表している素案では指定マンションの建設予定地は「24メートル」の高さまで建築可能なエリアに含まれている。しかし、古くから周辺に住む住民らは家屋や店舗を建て替える際、「景観に配慮して3階建てよりも高い建物は建てないようにしてきた」(西須代表)という経緯がある。

 住民らは、業者が7月9日に開いた説明会の2日後、「3階建てへの計画変更を最低限の目標」として守る会を発足。区長・区議会議長へ陳情書を提出した。また、泉岳寺の賛同も得て署名運動をスタート。今月末まで署名を募り、9月に開かれる区議会に向けて請願書とともに提出する予定だ。

 19日には説明会を含めて5回目となる業者側と住民側との協議の場が持たれたが、出席した住民によれば、業者側は設計変更に応じる様子はなく、近日中にも建築確認申請の手続きに入る意向を示したという。

 「泉岳寺を歴史的な文化遺産として守り伝えてきた先人の努力を無にしてはならない」と西須代表。運動の輪を広げようと会のホームページ(http://sengakuji-mamoru.jimdo.com/)でも署名を呼び掛けており、「赤穂のみなさんにも力添えをいただければありがたい」と話している。

掲載紙面(PDF):
2014年8月23日(2100号) 1面 (8,451,695byte)
http://www.ako-minpo.jp/data/d00091/f9125_0.pdf#page=1


◆泉岳寺隣にマンション 反対住民の請願採択(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20140920/CK2014092002000119.html
2014年9月20日

 赤穂浪士(あこうろうし)の墓でも知られる泉岳寺(せんがくじ)(港区高輪)の真横に計画されたマンション建設で、景観を損ねると主張して反対する周辺住民と寺が提出した請願が十九日、港区議会の建設常任委員会で全会一致で採択された。審議の過程では、寺などが「建設反対」の看板を掲げた後、区側から業者の意見を伝えられ、いったん降ろした経緯も明らかになった。
(鈴木久美子)

 七月に明らかになった八階建てマンションの計画。周辺住民は、一帯の住宅が三階建てで、寺の風情にもそぐわないとして「国指定史跡・泉岳寺の歴史的文化財を守る会」をつくり、計画変更を求める署名活動などをしてきた。

 請願は、計画が泉岳寺の歴史的な価値をおとしめると訴えた上で、周辺住民が納得する説明をするよう業者に対して「徹底した指導」を区側に求める内容。住民への説明会は九月までに数回、建築主である区内の不動産業者が開いた。業者側が今後、住民個別に行うと主張し、住民側は住民全体を対象にした開催を求めてきた。

 「建設反対」の看板をめぐる動きについては、泉岳寺の牟田賢明(むたけんみょう)主事が委員会で明らかにした。牟田氏によると、寺が会と相談して八月七日朝に寺の中門に看板を掲げた。同じ日の夕方、区の野口孝彦建築課長らの訪問を受け「業者側が怒って話し合いをしないと言っている」などと言われて、いったん降ろしたという。

 これに対し、野口課長は「『降ろしなさい』とは言っていない」と答弁したが、業者の意向を寺に伝えたことは認めた。区議からは「看板は当然の意思表示で、違法でもない」「住民にとっては圧力と感じる」と区の対応への批判が相次いだ。