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以前のコラムで指摘したように、第一回災害廃棄物安全評価検討会で、科学的データが何もない国立環境研究所のパワーポイント1枚の資料を根拠に、バグフィルター付き焼却炉で専用施設を整備へ向けた方針が示された。筆者はこの方針についての問題点を指摘した。 ◆鷹取敦:放射性物質汚染の瓦礫を焼却処理する環境省の脆弱な根拠 http://eritokyo.jp/independent/takatori-fnp0001.htm 第一回検討会については下記に議事要旨が公開されている。きわめて簡単なものであり議論の中身は分からない。 ◆災害廃棄物安全評価検討会(第1回) 議事要旨 http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/01-yoshi.pdf 2011年年6月5日に第二回検討会が開催された。国民の安全に関わる重要な問題であるにも関わらず、下記の環境省報道発表資料にあるように、相変わらず非公開である。 ◆環境省報道発表:第二回災害廃棄物安全評価検討会の開催について(お知らせ) http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13837 第二回の検討会では、下記に報道されたように、既存炉で焼却可、とさらに踏み込んだ方針が示されたようである。前回は専用施設の整備への方針だったが、今回は既存炉へとの方針転換である。
第一回の検討会から今回までわずか半月の間に、科学的な検証が実施された様子はない。そうであれば、科学的根拠、検証の行われないまま既存炉での焼却を決めたことになる。 バグフィルタで除去することが出来るのは飛灰等の粒子状物質だけである。活性炭を吹き込んだ場合には活性炭に付着した一部の放射性物質は取り除かれる可能性があるかもしれないが、ガス状物質、極微粒子のヒューム等については、バグフィルタで除去はされないだろう。 個別の焼却炉についてなんら検証することなく、単に量が多くて処理が大変だから既存炉で燃やしてしまえ、とはあまりにも拙速、乱暴な方針である。 既存炉での焼却が始まれば、その地域周辺へ放射性物質が広く拡散されるおそれがある。それが被災地近辺であれば、被災者へのリスクをさらに高めることになるし、他の地域であれば汚染が日本中に広がる、ということになる。住民の健康リスクへの影響や農業や輸出品等の汚染被害だけでなく「風評被害」(実際汚染される可能性がある場合には本来は「風評」とは言えないが)まで、広範な影響が想定される。 周辺への汚染の可能性を監視するために、どこの焼却炉で処理をすることになるのか早期に明らかにし、周辺住民の合意形成、現時点でも空間線量率、土壌中の放射線物質濃度など、焼却開始以前のバックグラウンドを把握する必要がある。 また、以前に指摘したように、既存焼却炉が放射線で汚染されてしまうと、炉のメンテナンスも困難となり、今後この炉から排出される灰も放射線廃棄物として扱い続けることになる可能性があり、かえって濃縮された放射性廃棄物を作り出すことになり、最終処分も困難になるおそれがあるのではないだろうか。 |