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◆柏市の放射能汚染 千葉県柏市は関東地方の中では福島第一原発の事故の影響を受けて、比較的放射線レベルが高い地域として知られている。文部科学省が公表した航空機モニタリングの結果をみると柏市のほぼ全域で空間線量率が0.2〜0.5μSv/hとなっている。 ■文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果について ◆柏市におけるごみ焼却と灰の量 柏市では2つのごみ焼却炉(清掃工場)でごみを焼却している。1つは北部クリーンセンター(平成3年度稼働、柏市船戸山高野531)でもう1つは南部クリーンセンター(平成17年度本格稼働、柏市南増尾56-2)である。 平成21年度の柏市清掃事業概要によると、北部クリーンセンターは51,764t/年のごみを焼却して6,146t/年の焼却灰(埋め立て)、299t/年の焼却灰(資源化)等を排出し、もう一方の南部クリーンセンターは39,988t/年のごみを焼却して139t/年の焼却灰(処分委託)、2,281t/年のスラグ(資源化)、397t/年の溶融固化物(埋め立て)等を排出している。 焼却ごみあたりの排出物(灰等)は焼却炉としては14年古い北部クリーンセンターの方が約1.8倍と多い。 ◆灰処理のために北部クリーンセンターの焼却量を増やす柏市の決定 柏市は2011年10月1日の「広報かしわ」で、8,000ベクレルを超える灰の搬出先が見つからず「ごみの処理が危機的な状況にあります。」と率直に危機的な現状を伝え、「当面の間は、焼却灰を搬出し埋め立て処分が可能となる基準(8,000ベクレル以下)に抑えることができる北部クリーンセンターでの焼却量を増やして対応します。」と告げている。 ■ごみの焼却灰の問題について 広報かしわ 平成23年10月1日号から焼却灰等の放射線量の測定結果をみると、セシウム合計で、北部クリーンセンターは、主灰:295Bq/kg、飛灰固形物:3,420Bq/kg、排ガス:不検出、南部クリーンセンターは、溶融飛灰固形物:33,300Bq/kg、溶融スラグ:338Bq/kg、排ガス:不検出となっている。 ■柏市清掃工場(北部クリーンセンター)から排出された焼却灰の放射能量測定結果(平成23年8月分)年間の排出量比から概算すると、ごみ量あたりの放射線物質の量は南部クリーンセンターの方が10倍多いことになる。柏市が広報で北部クリーンセンターでの焼却量を増やして対応する、と決めた理由はこの違いである。 ◆北部クリーンセンターで消える放射性物質 ところで放射性物質は焼却しても分解、消滅しないにもかかわらず、なぜ14年も古い北部クリーンセンターが新しい南部クリーンセンターよりどうして放射性物質量が少ないのであろうか。 理由の1つとして考えられるのはごみあたりの灰の量の違いである。分母となる灰の量が多ければ濃度は反比例して低くなる。北部クリーンセンターのごみ量あたりの灰の量は南部クリーンセンターの約2倍である。したがってごみに同じだけの放射性物質が含まれている場合に灰中の放射性物質の濃度は北部クリーンセンターでは南部クリーンセンターの約2分の1になることになる。 もしそうであれば、北部では灰の量が多いことで薄まっているというだけで放射性物質の量が変わるわけではないから、北部に持って行って灰の量を増やしてもあまり意味はない。見かけ上の数値が低くなるというだけで、処分しなければならない灰の量が増える。 しかし実際には北部は南部の10分の1の放射性物質濃度である。このうち2分の1は灰の量で説明がつくが残りの5分の1は説明がつかない。 もし、もともとのごみに含まれる放射性物質量の割合が北部と南部で変わらないのであれば、放射性物質量が10分の1しかない北部クリーンセンターは放射性物質は灰に移行せずにどこかに行ってしまっている、ということになる。 北部クリーンセンターも南部クリーンセンターも排ガス中の放射性物質量は「不検出」となっているが、定量下限値が示されていない。実際には検出下限値未満の放射性物質が含まれている可能性がある。北部クリーンセンターの方が南部クリーンセンターより14年も古いことから、排ガス処理の性能は北部クリーンセンターの方が劣っている可能性がある。 ◆北部クリーンセンターでは大気中に放射性物質を排出? つまり、北部クリーンセンターでは南部クリーンセンターよりも煙突から放射性物質をより多く排出している可能性がある。そうでないとすれば、北部クリーンセンターに持ち込まれるごみの方はそもそも含まれる放射性物質濃度が低いかいずれかでないと、説明がつかない。 柏市は広報で「当面の間は、焼却灰を搬出し埋め立て処分が可能となる基準(8,000ベクレル以下)に抑えることができる北部クリーンセンター」と説明していることから、柏市自身はごみに含まれる放射性物質量の違いではなく、焼却炉の特性に起因していると考えているのではないだろうか。もともとごみに含まれる量が違うのであれば、南部から北部に変更しても何も変わらないからである。 文科省の航空機マップをみると北部の方が南部より相対的に汚染レベルがやや高いことからも、ごみに含まれる放射性物質の量が北部の方が5分の1と大幅に少ないとは考えにくい。 放射性物質のレベルが高かった南部クリーンセンターの溶融飛灰固形物(33,300Bq/kg)は、焼却灰、飛灰が灰溶融炉で固化されたものであり、このプロセスで放射性物質が一層濃縮されている可能性がある。しかしもしそれが原因であるならば、北部クリーンセンターに持って行く必要はなく、灰を溶融しなければいいだけなのではないだろうか。 もし北部クリーンセンターに持って行くことで放射性物質が減らせると柏市が考えていることが正しければ、柏市は、当面の灰中の放射性物質量を8,000Bq/kg以下に抑えるため、より古い焼却炉でごみをもやし放射性物質を灰に残さず煙突から大気中に排出することを選択した、ということになるのではないだろうか。 環境中に放射性物質を出さないという点では、むしろ逆効果となっている可能性がある。柏市はその可能性を検討した上で、北部クリーンセンターでの焼却重視の方針を打ち出したのであろうか。 また、既存の清掃工場で放射性物質の付着したがれきを焼却しようという環境省の方針も、安全性の点から再検討が必要であろう。 |